ゲッ!アマゾネス!

「後、もう1つ。いい加減この輪っか外せよ!スッゲー頭痛いんだぞ、しかも頭蓋骨割れるんじゃないかと思うぐらいに痛いんだぞ!」



何なんだ、この輪っかは一体?


孫悟空じゃねえっつーの!



【何っ、それだけはならん!お主はその輪を頭にはめたまま生活するのじゃ!】


それだけは無理!とジジイは拒んだ。

急に頭がギリギリと締め付けられるんだぞ!

しかものたうち回る程の痛さだ。



「何でだよ?別にこんなもん必要ないだろ?こんなもんあったら、1日に何度も頭痛に悩まされなきゃならないんだぞ!それでオレがうつ病になったらどうするんだ、おいっ!

徳を積むどころか、命が亡くなる危険性だってあるじゃないか!」



まぁ、これは大袈裟だけど、こんなもん被って、いつまた頭が締め付けられるかと思うと憂鬱になるのは確かだ。



おまけに1人で暴れるように頭押さえて痛がってるんだから、周りから変なヤツ!とか言われて気味悪がられるだろうが(既にそう思われてるけど)



【お主が悪ささえしなけりゃいいだけの事じゃろ!それを外す事だけは認めん!】


何が何でもこの輪っかを外そうという気は無いみたいだな。



「ジジイ!テメーオレに早く徳を積ませなきゃならないんだろ?だったらオレ、一生徳なんざ積まないで生活しよっと」



【ふん!好きにするがいいわぃ!】



このジジイ、開き直りやがったな…ちょいと強気に攻めすぎたかな…



「ところでもう1つ聞きたいんだけど」



オレは話を変えた。



【何じゃ?】



「以前にもこうやって誰かを中学時代に戻して徳を積んで現代に帰ったヤツはいるのか?」



このジジイはこんな事をしてるんだから、他のやつらもオレみたいにタイムスリップしたって事になるよな?



【…】



ん?何だジジイ、返答に困ってんじゃないのか、もしかしたら?



っ!まさかオレが最初って事か、おいっ!



「ジジイ!テメー、もしかしてこういう事するのオレが初めてってワケじゃねえよな、おい?」



このクソジジイ、仙人でも相当位の低い方だな、しかもあまり仕事が出来そうに無いタイプか、もしかして?



【…いや、その。まぁ、ワシも別の事を担当していたんだが…今回の人事でこういう部署に移ったばかりだからのぅ】



はぁ?人事?



「おい、ジジイ!仙人に人事だ部署だとかなり胡散臭いなぁ!テメーホントに仙人なのか?」



胡散臭さしか醸し出してないジジイが仙人だなんて、ウソくせー!証拠はあるのか、ホントに。


【何を言うかっ!ワシのこの格好を見れば解るだろう!どっからどう見ても仙人じゃないかっ!】



…チョーウソくせぇ!



「大体、仙人ってのは何だ?人間なのか、それとも神の様な存在なのか?いかにもヒゲ伸ばして仙人っぽく見せ掛けたインチキヤローだろ、なぁ!」



このヒゲ、いかにも付けヒゲっぽいしな。



しかし、ホント亀仙人にクリソツだな、あれ観て真似ただけじゃねえのか?


するとジジイが反論した。


【無礼者が!仙人とは 、中国の道教において、仙境にて暮らし、仙術をあやつり、不老不死を得た人を指すのじゃ!道教の不滅の真理である、道を体現した人、即ち仙人という事じゃ!解ったかな?】



不老不死?仙術?変な宗教の連中じゃないだろうな?



「そんな高尚なヤツのクセに上の者に頼まれた、とか人事がって、仙人てのは会社組織なのか!どうもテメーの言ってる事は矛盾というか、引っ掛かる部分が多いな」



【…ん、じゃから仙人にも色々な種類があるという事じゃ。解ったかな?】



………………よくわからねえ…



「まぁ、何でもいいや。とにかくジジイ!オレに1日でも早く徳を積ませたかったら、テメーも協力しろよ!そうじゃないと、上のお偉いさんに怒られるぞ~っ、じゃ、そういうワケでオレは教室に戻るから」



【この、中学2年生の分際で仙人をおちょくるとは…】


またまた青筋を立てて顔を真っ赤にしている…ゆでダコみたいだな、このジジイはw


「何言ってんだ、身体は中2、頭は41才だぜ、オレは」



【何コナンみたいな事をぬかしおって】



ジジイ!仙人がコナン知ってんのかよ!


かなり突っ込みどころが多いな。



あぁ、いつまでもトイレでこんな事言い合ってる場合じゃない!


早く教室に戻ろう。



「じゃ、オレは教室に戻るから。何かあったら助けろよ、ジジイ」



【…クソっ、何であんな男を中2に戻さにゃならんのじゃ!ワシャ反対したのに、上の連中ときたら…はぁ、ワシも何だかバカバカしくなってきたのぅ~、とりあえずここは様子見にしておくかの】



そしていつものようにボン!と煙と共に仙人は消えた。



「ありゃ、次の授業って英語だっけ?」



教室に戻ったオレは、隣に座る恵に3時限目の授業を聞いた。


「えと、うん。英語なんだけど…山本くん宿題やってきた…?」



何っ?宿題?聞いてねぇぞ、おいっ!



オレは英語の教科書とノートを開いた…何も書いてねぇ…



英語の先生って誰だっけ?男?女?


………あれ、他の教科の先生は覚えてるんだが…



英語の先生って誰だっけ?



あぁ~思い出せねえっ!



ま、いっか。思い出せないって事はそれだけ影の薄い先生だって事だろ、うん。



【キーンコーンカーンコーン】



うん、この感じ、この感じ!あぁ、オレ中学生だぁって実感してる!



思春期バンザーイ!青春バンザーイ!


ギャハハハハハ!



【ガラガラ】



教室の扉が開いた、どんな先生だっけ?



「Stand Up!」



ん?この声…



「ゲッ!巨乳!」



目の前にはガタイの良い、ロケットのようなはち切れんばかりのブラウスが盛り上がり、ドーンと突き出た巨乳がオレの顔の前にある。



「Mr.ヤマモト、 What’s happened?(どうかしたの?)」




この巨乳っ!そうだ、思い出した!


英語教師の名は山本美咲(やまもとみさき)、通称アマゾネス!



オレの伯父さんの娘、従姉じゃん!



…あぁ、すっかり忘れてた…



そういや従姉がこの学校の英語教師だったなんて…



しかも宿題があるなんて聞いてないよ、おい!



何故、身内が中学の英語教師をしていたのに思いっきり忘れていたのか…?



それはオレはこの従姉が大っ嫌いだからだ!



…まぁ、それだけ嫌いだと一番印象に残るんだが…


とにかくオレの中では忘れたい人物だ、このアマゾネスは!

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