職員室に来なさいっ!

オレ、確かこの娘とはよく話たんだよな~…



どういうワケか彼女も他の連中とはあまり会話をしないんだけど、オレにはよく話をした…



なんつうか、波長が合うというヤツ?



勉強も出来て、水泳部では背泳ぎで都大会にも出場した程で、文武両道、才色兼備?合ってるかどうかは解らんけど、そんな人物だ。



ただ、なんつーか、ややコミュ障というのかな、ボソボソと喋るし、あまり人と会話をしたのを見た記憶が無い。



顔もこのクラスの中では断トツに可愛かった、うん!



美少女?そんな感じだった。


黒のショートボブのヘアスタイルなんだが、目は大きく少しつり上がって、シャープな輪郭。



芸能人で言うと誰に似てる?って言われると困るが、顔のパーツはかなり良い。



しかし、入学当初からショートボブというか、オカッパ頭で、前髪はきれいに眉毛にかかるぐらいに切り揃えて、オレたちはよく


【デザイアー】と呼んでいたw



(デザイアーを知らない人は中森明菜で検索してくれ)



黒髪なんだが、自然の黒というよりは、カラーリングしたような真っ黒な色、それを見たオレか泰彦のどっちかが、



「デザイアーじゃねえか、あの頭w」って言ったのがきっかけだったような…



しかも黙ってると、不機嫌そうな顔に見えるから、知らず知らずのうちに話し掛けなくなっていった。



別に不機嫌な顔なんじゃなく、目が少しつり上がってキリッとしてるから、無表情でも怒ってんじゃねえの?ってな感じで近寄らなかった…確か記憶ではそうだったはず。



そうか、オレはこの時、恵の隣だったのか…



何だか色んな事がゴッチャになってよく思い出せん!



しかも席が超アリーナってのが…



「はい、じゃあ今度こそホントに授業始めますよ!」



…ようやく授業が始まるのか…



あ、そうだ教科書を出さないと。


オレは机の中に手を突っ込み、国語の教科書を出した。



…あれ、先生黒板に何か書こうとしてるけど、チョーク持ったまま固まってるぞ?



「あぁっ!」


オレは思わず声を上げた!

そうだ、すっかり忘れてた…



さっき黒板に【金澤龍也VS山本智、敗者坊主頭デスマッチ】って書いたのすっかり忘れてた!



「これ書いたのは誰ですか…?何なの敗者坊主頭って?」



誰ですか?って言いながらオレの事を険しい顔つきで見てませんか?…しかも、わなわなと手が震えてるし。



「あれ、金澤くんは?金澤くん!今日休みじゃないわよね?何処にいるの?」



「あ"ぁっ!」


またもや声を上げてしまった。

やべっ、龍也大の字で倒れたまま誰も起こしてねえよっ!



「何なの、さっきからああっ!って?山本くん、これ書いたの貴方でしょ?それと金澤くん!何処へ行ったの?いないの!」



誰か起こしてやれよ、アイツずっと床でぶっ倒れたまんまじゃん!

先生が後ろの方へ行き、龍也が大の字でのびている目の前で仁王立ちしている。


「ちょっと金澤くん!何でそんな後ろで寝てるのっ!」



龍也が床で寝ていると勘違いしてるのか、先生は龍也の所まで行き、出席簿で頭をパンパンと叩いて起こした。



「金澤くん!起きなさいっ!何だってそんな床で寝ているの?早く起きて席に着きなさいっ!」



耳元でキンキンと大きい声を出したせいか、龍也はようやく意識を取り戻した。



「…ん?何だ、何でオレこんなとこで寝てんだ?」



龍也には何が起こったのか全く分からない、気づいたら床に倒れているからだ。



「金澤くん…何でそんなとこで寝てたのかしら?しかもおでこに落書きなんかして…」


もう、先生授業をする気が失せたんだろうかな。


『プッ、クスクスクス』



『おでこに肉だってよw』



『キン肉マンかよ、アイツは』



「…何だこれ?誰だ!オレのおでこにこんな事書いたヤツはっ!」


手鏡で自分の額を見て、龍也は大声で叫んだ。


『ギャハハハハハ』



皆、大爆笑してやがるw



オレなんざ龍也に指差してゲラゲラ笑ってやった、ザマーミロ、バカが!



ウワハハハハハハハハハ!



「もう!…何なのあなたたちは!窓ガラスが割れてるわ、落書きするわ、金澤くんは寝て、おでこに落書きしてるわで…そんなに先生の授業を受けたくないのですかっ!」



あちゃ~、完全に怒らせちゃった…



先生はすぐさま黒板にさっきオレが書いた文字を消し、【自習】と大きく書いた。



「金澤くん、山本くん!今から職員室に来なさいっ!それと加藤くんっ!あなたも来なさいっ!」



職員室に呼び出しかよ…オレ中2になってるけど、実際は41才だぞ?



まさかこの年で職員室に呼び出しって…



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