41才の中学2年生

1990年？中学２年生じゃないか！

「智～、早く起きなさい！ったく、夜遅くまでゲームなんてやってるから起きれないんだから、たまには勉強したらどうなの？」

…ん？何だ今の声？聞き覚えのある声だ。

おまけにこの部屋は？…テレビの前にファミコンが置いてある。何々、一体どこだ、ここは？

【ガチャっ】とドアが開き、見覚えのある顔が部屋に入ってきた。

「智っ！早く起きなさい！」

…オフクロ？まだ頭がぼんやりしていたが、一気に目が覚めた。

それにしても、オフクロ随分若くなったような…

オレは改めてベッドから起きて部屋の隅々まで見渡した。

ここ、実家じゃん！しかもオレの部屋だ！

えっと、確か亀仙人みたいなジジイが駅のホームにいて…

「ほら、早く起きなさい！また遅くまでゲームなんてやってるから起きれないのよっ！」

間違いない、オフクロだ。しかも若返っている…

「…あっ、母ちゃん！…あれ？何か若くなってないか？」

何だが分からないが、オレは実家の部屋で寝ていたみたいだ。

「アンタ朝から何変な夢見てたの？いいから着替えてさっさとご飯食べなさい！」

全くギャーギャーとうるせえな、相変わらず。

…でも何でオレ今実家にいるんだ？

さっきまで駅のホームにいたはずなんだが…

よくわかんねえけど、起きて着替えよう、オレは出勤する為にスーツを探したが見当たらない。

変わりに学ランが壁に掛かっていた。

「…何で学ランなんだよ。スーツは？」

何が何だがさっぱり分からん！

「何なんだ一体？オレはどうなっちゃってんの？」

頭を抱えしばし呆然とするが、ここはどう見ても実家の部屋だ。

しかもかなり前の部屋の模様だ。

ファミコンだなんて、中学の頃よくやってたが、何故テレビの前にあるのか？

【フォッフォッフォッフォ、だから言ったろう。お前は中２に戻ったと】

ゲッ！さっき駅のホームにいたジジイだ！

「あっ、テメーはあの駅にいたジジイじゃねえか！おいっ！何なんだ一体？何でオレは実家にいるんだよ！」

またあのジジイが目の前に現れやがった…

しかも空中浮遊している…

こりゃ夢なのか？

【頭の悪いヤツだのう、さっきから中２に戻ったと言ってるだろうに。ほれ、鏡をよく見てみるがいい】

「鏡？」

オレは部屋にある等身大を移す鏡の前に立った。

…へっ？これがオレ？何でこんな子供になってんの？

【ようやく解ったみたいじゃな。よいか、今日からお前は中学2年生になったのじゃ】

確かに中２の頃の容姿に戻っている。

「はぁ、中２？何で今さら中２に戻らなきゃなんねえんだよ、このくそジジイ！早く元の世界に戻せバカヤロー！」

すると隣からまた聞き覚えのある声がした。

「うるっさいわね、さっきから何１人でギャーギャー喚いてるのよ～」

あれ？もしかして…姉貴？

しかも何でセーラー服着てんだ？

「…あの、姉ちゃんだよね？」

姉貴には違いないが、何故セーラー服を着ているんだ？

「はっ？アンタ何意味解んない事言ってんのよ。まだ寝惚けてるの？」

オレが中２で姉貴がJK？

「…おい、ジジイ。何しやがった？どうやったら元に戻るんだよ！早く元に戻せっ！おい、ジジイ！どこ行った？」

あの仙人みたいなジジイさっきまでいたのにいつの間にか消えていた。

頭がパニックのまま、オレは部屋を出て、居間に向かった。

「こら、サトシ！テメーまた夜遅くまでゲームやってやがったな、このバカタレが！」

えっ、もしかしてオヤジ？

「…あっ、オヤジ！えっ、何でオヤジ生きてるの？死んだはずじゃなかったのか？」

居間には母ちゃんとオヤジ、姉貴がテーブルを囲んで飯を食っている…

オヤジは５年前、ガンで亡くなったはずだ…でも何で生きてるの？

「この、バカタレが！何が生きてるだ、勝手に殺すな、このドアホ！」

【パチーン】

いきなり頭をひっぱたかれた！

「痛ってぇ！何しやがんだ、このオヤジ！」

…ん？オヤジも何故か若くなってるぞ。

【フォッフォッフォッフォ！全く鈍いヤツじゃの。お前は中２の頃に戻ったと何べん言えば解るのじゃ、ったく】

ジジイがまた現れ、テーブルの上で浮いている。

「あ、ジジイ、テメー早く戻せ、会社に遅刻するじゃねえか！」

【ボコッ】今度はグーでオヤジに殴られた！

「親に向かってジジイだのテメーとか言うんじゃねえ、このバカもんが！」

えっ、オヤジ見えないのか？このジジイを？

「痛って～、オヤジに言ってんじゃねぇよ、そこにいる亀仙人みたいなジジイいるだろ！」

オレは頬を押さえながら、テーブルの上に座ってる仙人を指した。

「は？」

オフクロはポカーンとしている。

「どこに？」

オヤジは不思議そうな顔をして、テーブルを見ている。

「まだ寝惚けてんじゃないの、アンタ」

いかにも人を馬鹿にした目でオレを見る姉貴

ウソっ！見えないの？皆の目の前にいるじゃん！

しかもテーブルに座ってんだよ？

皆が食ってる飯の上に座ってる…あれ？

オレは目をこすった。

で、もう一度テーブルをよく見た。

…いない。

消えた？あのジジイ消えるのか？

何なんだヤツは人間じゃないのか？

「いいからさっさとご飯食べちゃいなさい！」

全く何が起こってんだ？とにかくオフクロに言われるがまま、飯を食った。

もしかしてここ？異次元てヤツでオレは転生したのか？

いや、待て。タイムスリップしたって事？

ふとオレは壁に掛けてあるカレンダーを見た。

【1990年6月20日】

1990年？てことは27年前？

待てよ、27年前だと…41だったから、41‐27=14…

14…って中２じゃねえか！

おい、こりゃどうなってんだ！

「やい、ジジイ！オレを中２に戻しやがったのか？出てこい、このくそジジイ！」

【バキッ、ドカッ】今度は蹴りまで食らった！

「さっきから親に向かって何だ、その口の聞き方はっ！お前なんて飯なんか食うな！出てけっ！」

顔を真っ赤にしてオヤジは激怒していた。

…痛ってぇよ、蹴りまで入れる事ねえだろ！

でも待てよ…って事は1990年にタイムスリップしたって事になるんだよな？

ヤバい、ヒジョーにヤバい状況だ！

早く元の世界に戻らなければ！

あのジジイ、どこ行きやがったんだったく！