第22話「影を追え」
ネコ化はすごいMPを消費する能力であるが、嗅覚に特化すれば抑えられるのではないかと思い試したところ、鼻だけネコ化は可能なようである。消費MPは5で済み10分間は有効だということが分かった。
「こっちのほうにゃ……」
おばあちゃん状態のロアンヌが指し示すまま、ルマンドのにおいのする方へ向かっているが、とにかく足が遅い。なんだかイライラしてくる。
「もう少し早く歩けないか?」
「そんにゃこと言っても、節々が痛いにゃ。これ以上速く歩いたらたぶんどこかおかしくなるにゃ」
なんて敵の能力は恐ろしい……うら若き乙女だったロアンヌをこんな姿に変えてしまうとは。
倒して元に戻るといいんだが、もしこのままだったら、悪いが俺はこいつらを置いて旅に出るぞ。それにしてもルマンドのにおいがあるということは、まだ生きてるということか。これが幸なのか不幸なのか。
俺たちは明かりでこうこうと照らされてる大通りではなく、薄暗い裏路地を進んでいく。ネコ化の後遺症で夜でも物が見えやすくなったというロアンヌの後をついていく。夜目が利くとは助かる。今後隠密活動する場合はロアにぜひ進んでやってもらいたい。
「この先は、ホームレスの集まる公園だにゃ。どうもここにいるっぽいけど、老人のにおいが多すぎて、正確にどこらへんにいるかはよくわからないにゃ」
ロアが指し示す通り、先には公園があるらしく、その入り口に俺たちは立っている。周囲に街灯らしきものはなく暗かったが、テントのようなものが複数並んでるのがわかった。
芝生が広がる中、その上を四、五十のテントが規則なく乱立している。ホームレスたちの寝床になっているのであろう。
テントの外で寝ている人間もいる。
海沿いの通りにはうろついてる老人がたくさんいたが、ここには住み着いてる老人がたくさんいるのか、市の方で何とかできないのか、オギルビーの街は金あるはずなんだがな。
「もしかするとこのテントの中に、老化させたモンスターがいる可能性もあるのか」
「……たぶんそうにゃ、そいつのにおいもかすかにするにゃ。なんかでもこの匂い嗅いだ気がするんだにゃあ……。気のせいかにゃあ……」
「はっきり場所分からないのか……」
さすがにこの状態じゃ、手の打ちようがない。テントを片っ端から確認していくのもめんどくさいし、それもやむを得ないかもしれないが。
「正直ここで匂い嗅ぐの持つらいにゃ、ここにいる人たちみんな風呂とかに入ってないから凄いきついにおいするにゃ、若き乙女の私に対してひどい仕打ちにゃ」
そうはいってもお前の見た目は完全に猫耳ババアなんだよな。それくらい我慢しろと思ってしまうぞ。
「ロアは敵のこと覚えてるのか」
「うーん、じじいだったのは確かだったけども、はっきり顔とか見れなかったにゃ、じじいのくせに素早い動きをされたもんで、気づいたらタッチされて老化されたにゃ。」
「タッチされただけでアウトなのか?」
「そうにゃ、ロアはタッチされて、みるみるうちに老化していって、そして気を失ったにゃ」
タッチされただけでアウトなのか、気絶したり理由はわからないが、とにかく触られないように戦わなきゃいけないのか。まあ、しかし素早い動きをするなら、このテント村から敵をあぶりだす方法は思いついたぜ。
「ロア、エコロケーションする魔力は残ってるか?」
「残ってるけど、エコロケーションじゃあ中に誰がいるかまではわからないにゃ」
「いや、なかにいるやつじゃない。外に出てくやつを調べてほしいんだ」
そう今から、全員をテントの外にあぶりだしてやる。
「スモーク」
おれはスモークを使い煙を放ち始める。そして、テントの周りを歩き回りながら、スモークをはなち続ける。
そろそろ、いいか。
っどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっん!!
という大きな音を、爆音のスキルであたりに響かせた。
「砲撃だ―、オギルビー警察によるホームレス掃討作戦がはじまったぞー!」
俺はとんでもない嘘情報を大声で叫んだ。
そう、この状態になればみんなテントから出ていくしかないはず、そして最も機敏に素早く逃げ出す奴が、探している老化のモンスターに違いない。
「今だエコロケーションを使え」と、隣にいるロアを見ると、先ほどの爆音のせいで悶絶していた。しまった、猫耳のせいであいつの聴覚は鋭かったんだ、あらかじめ作戦を説明すべきだった……。しかたない、俺のMPは使いたくないのだが。
「エコロケーション」
スキルを発動させると、一面の煙景色の中、ゆっくりとテントからはい出てくる青い影がほとんどの中、10m先位で、周囲とは全く違うスピードで飛び出る影を発見した。
あれだ、間違いない。老人のスピードじゃない。
いまだ悶絶しているロアをその場において、俺は煙の中その青い影を追いかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます