第14話「対決ジャイアントコウモリ」

 無事に洞窟につながる穴を掘ることができた。

 穴さえ開いてしまえば対峙せずとも、倒すことができる。俺は、ルミィが穴をあける作戦を立ててから、ずっとあることを考えていた。

 ここで俺のステータスを確認しよう。

 

 LV 1

 HP 35

 MP 30

 攻撃力 25(装備後)

 守備力 45↑(装備後)

 素早さ 50↓

 魅力  5

 職業:花火技師

 スキル:スモーク、ダッシュ、、ドリル、フレイム

 装備:鉄の剣

    鉄の胸当て


 そう爆音という技を俺は持っているのだ。特別に大きい爆裂音を出す爆竹を、俺は無数に放つことができるのだ。相手がエコロケーションを使うことができるくらい耳がいいのであれば、この大音量で相手の耳をダメにさせられるのではないかというわけだ。

 うまくいけば失神させられるかもしれない。そうなれば勝ったようなものだ。

 俺は、ルミィに耳をふさがせた。俺自身は専用の耳栓を持っているので、耳をふさがなくても大丈夫。


「いくぜ爆音BUCK-TICK!!」


 ドガッッガッガッガッガッガッガッガッガッガ――!

 

 俺が爆竹を投下すると、洞窟の外にも響き渡るほどの大きな音が起きた。俺自身これほどの量の爆竹を同時に放ったことはない、もしこれを街で行ったら、寝たきりの老人ですら起き上がるくらいの衝撃を与えただろう。間違いなくうちの花火工場は風評で炎上してしまう。


「……すごい音ですね、外にいて、耳をふさいでこれじゃあ、中にいる生き物はひとたまりもないんじゃないでしょうか」

 ルミィはまだ耳を防いでいる。


「今のうちに、下に降りよう。もし気絶してればしめたものだ。」

 ルミーに結び付けていたロープを外し、俺に結び付けた。そして、ロープをルミィに握らせた。


「今回は俺だけで大丈夫だ、ルミィは上で待っててくれ。」

「で、でももしアルフさんやられてしまったら、私どうすれば?」

「……そ、その時は、可能な限りくらくら茸を集めてから後追い自殺してくれ。」

「……わかりました、気をつけて下さい」

 自殺をお願いして、承諾されてしまうという不思議なやり取りが成立した。なんだかもう俺らの中で死という概念が、えらい適当なものになってしまってるな。もし女神の呪いがなくなった時、やはり俺らの無限復活の能力もなくなるのだろうか、そうなった場合の今後の生き方が心配だ。あとでブルボンに聞いてみよう。


「よし行ってくるぜ」

 俺はゆっくりと、洞窟の中へと降りていった。

 正直言うと相当ビビりながら降りている、もし全く爆竹効果が全くなかったら、降りてる俺の位置はジャイアントコウモリに対して丸わかりである。いつ襲われるかわかったもんじゃない。

 しかし心配は杞憂だったようで、無事に洞窟の地面へと足をつけることができた。俺はロープを外して、ランプに火をともした。

 

 暗がりが俺の周囲だけぽぉっと照らされた。何とか、洞窟の壁面の方まで見通すとこができる。すると、五歩くらい先に何か大きな物体が横たわっているのが見えた。

 でかい、人間くらいの大きさがある。こんな大きいコウモリが俺たちを襲っていたのか! おそるおそる俺はコウモリに対して近づいていく、起き上らないでくれよと祈りながら……。

 

 まてよ、もし近づいていったとしても、俺のレベルでこの敵に対してダメージを与えることができるだろうか。ドリルさえ使えば何とかなると思うが……。

 念のために保険をかけておくとするか。


 そうして気づかれることなく、横たわるコウモリのそばに立つことができた。目前にこいつの顔面がある。あとは、ドリルを顔に向かって突き立てるだけでよい、ファイヤーヘアーの時のように躊躇なくドリルを突き立てればいい。

 覚悟を決めろ。


「ドリル!」

 スキル名を呼ぶと、俺の右手がドリルに変わる。ちゅーんという音が洞窟内に響いて思わず俺の体がびくとなった。反射的にコウモリを確認したが、よかったどうやら目覚めてはいない。

 

 よし、くらえ! おれのドリル!

 俺は勢いよくコウモリの頭にドリルを突き立てた。

 ドリドリッド……

「みゃーっ!!」

「!?」

 ドリルが頭を削る途中で、ジャイアントコウモリは悲鳴を上げて、がばっと羽を広げる、バットががばっと起きあがって羽ばたいた。その羽を開く反応によって、あっけなく俺の体は弾き飛ばされる。


「くっ――」

 たった、あれだけの攻撃にもかかわらず被ダメージは25! あと10で絶命するところだったぜ、すでに瀕死状態とは相変わらずLV1は過酷だ……。

 そしてジャイアントコウモリは宙を舞い、その姿を闇へまぎれさせた。これではどこから攻撃を仕掛けてくるかわからない。

 逃げたということはないだろう。闇から俺を攻撃する機会をうかがってるのに違いない。


 鼓動が高鳴るを感じる、死ぬのには慣れたとはいえ、闇の中で敵を待つという心境は穏やかではない、体中に満ちる恐怖。手に持つランプの明かり程度ではコウモリの位置を把握するには不十分過ぎる。


 ふっと背中から風を感じる、振り返った瞬間、俺の首もとをジャイアントコウモリがかみつこうとしていた。まだかみつかれてはいなかった、ほんとうにその寸前で、気づくことができた。 

 よって一瞬だけ、呪文を唱える余裕ができた。


「フレイム!」

 この威力のない魔法をかろうじて、ジャイアントコウモリにぶちあてることができた。そしてほぼ同時に首もとをかみつかれた。


 ――気が付けば何度目かわからない白い空間、女神の間で目を覚ました。



 

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