第13話「抜け道」

 さっそく洞窟内に入っていこうとする俺をルミィは引き留めた。

「あの馬鹿正直に洞窟の中に入っていかなくてもいいと思うんです」

 と不思議な事をいう。

「……そんなこと言っても入らないことには、何もできないだろう」

 ビビる気持ちはわかるが、何回死んだってこちらはいいのだから、今更ビビったってしょうがないだろう。


「あの、わたし海女をやってるので、見えない場所でも空間把握するのは結構得意なんです。なので、洞窟内で大体あのジャイアントコウモリがどこにいるかわかったつもりです」

「俺もあそこまでの道順と、洞窟内の大体の構造はわかったつもりだけど……。だからと言って中に入らないとしょうがなくないか?」

 一体何をルミィは言ってるのだろうか。

「……ですから、入り口から中に入るんじゃなくて、地上から直接、最奥地へ攻めませんか」

 地上からだと?

 一体、何を言ってるのだろう。4回目の戦いの時にルミィはひそかに隠し通路でも発見したのだろうか。


「何か道を見つけたのか?」

「いえ、道はないんですけど。無ければ作ればいいんじゃないかと思うんです。この洞窟はそんな地下にあるわけじゃないんで、いけば洞窟内にたどり着けるんじゃないかと思うんですけど」

 ――ドリルで掘る!!

 そうかそんな手があったか。洞窟の最奥がどこかわかってるのであれば、わざわざ入り口から入っていかなくても上から穴をあけて侵入すればいいのか。そうすれば、運だよりじゃなくノーダメージでボスまでたどり着けるわけだ。


「ルミィ、素晴らしいアイデアだ。君はなんて聡明なんだ」

「少しでも楽をしたいと思ったら思いつきました。」

 ルミィは、ニコッと知的な笑いを浮かべた。


「しかし、その作戦には欠点がある……。そのまま掘っていくと洞窟に落下することになって、そのダメージで死にかけないから、まずはロープを買いに行こうか」

 ということでいったん街に戻ってロープを買いに行くことにしたのだった。


 そして再び漆黒の洞窟の前に戻ってきたさっそく俺たちは、ルミィが推定する洞窟の最奥の真上だと思われる地上面に向かっていった。

 

「――この辺だと思うのですけど」

「じゃあ、ルミィから掘っていったほうがいいか?ルミィの両足ドリルなら、一回の魔法で身体一つ分通ることができるからな」

 俺では片手しかできないので、自分の体が通るまでにすごい時間がかかる。それに装備効果でルミィはドリル魔法を10回使うことができる。大して、俺は6回しか使うことができない。しかも片手で範囲も狭い……。

 えらい無能じゃないか俺……なんだ同じレベル1なのにひどい差だ。


 きっと俺は初期ステータスが低くて、レベルの後半の伸びがいいタイプの戦士に違いない。

 ――あっ、レベル上がらないんだった……。


「たぶん私の魔力を使い切った場合、4m近くほれると思います。この間の経験だと大体一回のドリルで50cmって感じなので」

 この間は上にファイヤーヘアーがいたために逃げ出すことができなかったのだが、今回は障害がないから生き埋めの心配もないな。

「よしじゃあ頼んだ」

 そういってルミィの体にしっかりロープを括りつけ、俺はそれをしっかり握った。


 そしてルミィは地面をドリドリッと掘り始めた。慣れたもので、ルミィの両足はすいすいと地面に吸い込まれていった。勢いよく掘った土が外に飛び出していく。このまま俺の出番なく、目標地点まで貫通して欲しいものである。


 まあしかし、この作業に慣れるっていうのもすごいな。土の中に潜って行ってるわけだから、変な虫とかもいるだろうに、よく女子なのにそんなことやるよ。俺なら嫌だな、とひどいことを考えてたのは内緒である。


 やがて3m掘ったくらいで声が聞こえてきた。

「アルフさん、たぶんもう一掘り位だと思います。なんかしたからかすかに風を感じるので」

 ずいぶん浅かったな……こんなすぐ下に空洞があるんじゃ、この辺はいつ地表が陥没してもおかしくないな。あとでファウラーの役所に報告しておこう。


「うまい位に穴だけあけて、上に戻ってこれないか」

「大丈夫だと思います、少し慎重に行きます」

 ドリドリッっと再び音が聞こえてきた。たしかに少し速度をゆっくりしにしたようだ。

「貫通しました!」

 その瞬間、盛っていたロープがぐっと下に引きずり込まれそうになったので、慌てて力を加えて、それを止めた。そしてゆっくりと、ルミィの体を上へ上へと引き上げていった。

 さて、この間のリベンジと行きますか。


【――魔王復活まで、あと351日――】

 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る