第12話「闇での戦い」

 漆黒の洞窟に挑み続けて、すでに4回全滅した。


 条件が悪すぎる。一回目はランプの光の届かない闇からスライム状の敵にルミィが襲われて、それを助けに行ったおれも他のスライムに襲われて、あえなく二人とも殺された。ほぼ見えない状態での遭敵だったので、なすすべがなかった。


 二回目も同じように、ルミィがスライムに襲われたのだが、今回は俺は心を鬼にしてルミィを無視して、洞窟内をダッシュで駆けまわった。そうして、なんとかくらくら茸を3本ゲットしてから、複数のコウモリみたいな敵に襲われて絶命した。


 予想通り、死んでも手に入れたアイテムはそのままのようなので、くらくら茸3本は無事換金されて900Gへと変わった。


 3回目は俺がコウモリに襲われて命を落としたが、今度はルミィが心を鬼にして俺を無視して、できる限りのダッシュで洞窟内を走り回り、なんと五本のくらくら茸を手に入れることに成功したらしい。

 つまり1500Gの収入である。

 そのお金で俺は鉄の胸当てを手に入れて多少の防御力アップに成功した。


 そして3回死んでもなお、ザコにやられた俺たちはいまだ持って、スキルゼーレをもつようなボス級の敵に会えずにいた。いかんせん暗闇のために、スモークをたくことによって、逃げるという以前の手段があまり効果を発揮しなかったのだ。


 それでも4回目には、俺の防御力が上がったことが功を奏して、スライムを何とか炎の魔法を駆使して撃退することに成功した。

 そして慎重に進んだこともあり、凶暴なコウモリ達に関しては運よく出会わずに済んだ。そうして漆黒の洞窟の最奥にたどり着くことに成功した。正直ラッキー以外の何物でもなかった。


 しかしそこで出会った巨大なコウモリ(おそらくはスキルゼーレを持ってるであろう)に、なすすべもなくやられてしまった。

 ランプをつけていてはこちらの位置が丸わかりだというわけで、ランプを消して敵に挑んだが、結局光があってもなくてもこちらの位置はまるわかりだったらしく、ルミィは巨大なコウモリの羽に身体を切られ死んだ。

 おれも相手の位置が把握できないまま、気づけば首もとにかみつかれて、HPを吸われ絶命したのだった。

 4回目も結局いつもの白い空間に送られて、女神に馬鹿にされながら、そしてまた漆黒の洞窟の目の前へと戻された。



「どうしましょうか……。」

「ああ、レベル1っていうのは思った以上につらいな。っていうかあいつジャイアントコウモリのところにたどり着くまででも精いっぱいなのに、そのボスまで強いときたもんだ。こちらは暗闇のせいで敵の位置を把握できず、向こうは明かりなしでもこちらを把握できるとか、これはもう攻略不可能なんじゃないか?」

 相変わらずあのくそ女神はこちらを茶化すばかりでヒントをくれないし…‥。 


「しかも飛んでるせいで、前みたいに地中に引きずり込む作戦も使えませんしね。」

 ああ、地上の敵であれば、ファイヤーヘアーの時のように、ある程度防御力の高い敵でも、引きずり込んで窒息、あるいは動きを止めてドリルで貫くによって対処できそうなのだが、空を飛ぶ相手に対しては使えない手だ。


「ましてや暗闇っていう条件が、さらに不利にしてる。どうする、いったんここはあきらめたほうがいいんじゃないか。いっそ、きのこ集めに専念したほうがいいのかもしれない。」

 茸の収入は美味しいので、デスルーラを駆使してお金集めに走るのも手かもしれない、大体、あのでかいコウモリを倒したところで、得られるスキルゼーレなんて大したもんじゃないだろう。


「……なんで、あっちは私たちの位置がわかるんでしょうか?」

 俺の提案には答えず、ルミィは疑問をぶつけてきた。


「そりゃあ、コウモリだからじゃないのか?……聞いた話だけどエコロケーションって言って、あいつらは音を発生させてその反響で獲物の位置を調べてると聞いたことがある。」

 それゆえに闇でも正確に獲物を捕らえるのだという。


「それって、すごい耳がいいっていうことでしょうか?」

「あぁ、そういうことだろうな……。」

 

 ――ん?まてよ、耳がいいだって……。耳がいい、耳がいい。

 ――なるほど、なんとかなるかもしれない。


「ルミィ、もう一度だけ挑んでみようか?」


【――魔王復活まであと352日――】


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