第11話「買い物こそRPG」

 ところで、さっそくフレイムの効果を試したのだが、結果は期待はずれ以外の何物でもなかった。ファイヤーヘアーは、俺たちを燃やし尽くすような炎を出していたにもかかわらず、俺たちの炎はその場で多少、燃え上がる程度だった。ランプの炎をぶん投げるのと大して変わらないだろう。

 これは攻撃魔法が魔力に依存してるためであり、LV1のおれたちにとっては、正直攻撃手段としては全く期待できないといえる。


 そういう実験をしたうえで、装備品を求めに来た。お金に関しては、ファイヤーヘアーを倒した功績で、親方を通じてファウラー市から1000ゴールドもらうことができたので、割と充実の装備がそろえられるのだ。(薬草が一つ10Gくらい。)


「やっぱ、まずは防具ですよね」

 そういうルミィに連れられて町で唯一の防具品ショップを訪れた。


 皮の胸当て 150G

 皮のよろい 200G 

 銅の胸当て 400G

 銅のよろい 600G

 鉄の胸当て 1000G

 鉄のよろい 1400G

 魔導士の服 800G

 耐熱服   800G

 

「微妙に高い……、いままで縁がなくて初めて来たけど、買えるものほとんどないな」

「それにそもそも、鉄の鎧とかたぶん装備したら私動けないと思います。」

 そうだな、それに俺らは防御力どうのこうのよりも、まずは攻撃を食らわないことの方が大切なのだ。俺だって鉄のよろいなんて装備したら、逃げるスピードが遅くなるに違いない。

 魔導士の服っていうのが気になるな……。


「魔導士の服っていうのは何か特殊効果はあるのか?」

 私は目の前で不愛想に私たちの買い物を眺めてる店員に尋ねた。彼はさっきから特に何の商品の説明するわけでもなく、こちらを見てるだけだった。

 店員はめんどくさそうに答えた。

「ええと、その服は使用MPを20%おさえる効果があります。」

 おおっ、悪くないな。ドリルの消費ポイントが4で済むってことか。

 ルミィの服を新しくできる上に、そんな効果もつくとはな。それに防御力も15もあるし、これでいいじゃないか。

 何がいいって、少しだけ胸元が開いてるんだよ、ちらっとルミィの谷間が眺められるなんてこんな最高な服はない。作ったやつはわかってるな……。

 

「じゃあ、これを下さ……。」

「待ってください、アルフさんこれ買ったら、もう他の武器とか買えませんよ」

「いいよいいよ、俺の服なんか耐火服のままでいいし、武器もどうせドリルだよりだろう」

「えっ、でも私にこんなお金使っていただくわけには……」

「いいからいいから」

「お客さんどうするんですか?」

 しびれを切らした店員が聞いてきた。


「これ買います」

「お買い上げありがとうございまーす」

 半ば強引に、谷間が見える服を買うことになった。

 冒険についてくる少しだけの楽しみ、プライスレス!

 ルミィはしぶしぶと商品を受け取った。


「あーあ、残り200Gで何を買うんですかもう……」

 困った顔をしながら、ルミィはドレスルームへと向かった。もう別になんも買わなくてもいい。どうせ武器なんて買ったところで攻撃力は知れてる。



「はいいらっしゃい」

 一応ということで道具屋にも来てみた。武器屋ものぞいたのだが、買えるものがなかったのであきらめた。道具屋のおっさんは少し愛想がよい。


 薬草   10G

 上級薬草 30G

 特上薬草 100G

 毒消し草 20G

 万能薬  100G

 幻惑薬  500G

 ダーツ   20G

 目つぶし草 30G

 携帯オイル 20G

 

「やっぱり薬草はあったほうがいいでしょうか?」

「うーーん、正直くらったら死んじゃうからな。いらないっちゃいらないんだよな。」

「じゃあ毒消し草は?」

「念のために2個くらいか。というか、次の目的が漆黒の洞窟だからランプ用の携帯オイルが大量にいるな。どれだけ中に潜るかわからないからな。」

 大体携帯オイル一個で、2時間ほどランプはともすことができる。そんなに長く洞窟の中に潜る気はないけど、どれくらいになるかわからない。


「なるほど、じゃあオイル5個に、毒消し2個って感じですか。合計で140Gですね。」

 まあそんなとこか、それにしても1000Gっていうのは俺の給料の半月分なんだが、あっという間になくなるな、もう残り60Gしかない。冒険するのも楽じゃない。

 というか今後の資金調達も考えないとな、この辺の街をうろちょろしてる分には構わないが、いずれ遠くに行くと思ったら、食料品や馬車などの調達も必須になっていく。結局は金とも戦わなきゃいけない。


 そんな風な憂鬱そうな顔を見て、何かを察したのかルミィは道具屋の店員に質問を始めた。

「あの、なにか買取で高いものとかってありますか。」

「そうだなぁ、この辺だったら漆黒の洞窟に生えてるくらくら茸っていうきのこは、幻惑薬の材料だから1本300Gで買い取ってるよ。幻惑薬はいろんな人が愛用してるからね」

 おおまさに漆黒の洞窟に向かう俺たちにとっては好都合だ。それにしても幻惑薬の使い過ぎでやばくなってる奴が多いって聞くけど、堂々と取り扱ってていいもんかなあ。


「アルフさん、なんか後ろめたい気持ちはありますが仕方ありませんね。」

「……ああ、漆黒の洞窟で、スキルゼーレついでにくらくら茸を手に入れて来よう。」

 そう、仮にスキルゼーレをもつ奴を倒せなかったとしても、くらくら茸だけは手に入れるとしよう。レベルの上がらない分金だけは何とかしなければ……。


「お客さんたち、まさか漆黒の洞窟に行くつもりかい。大丈夫かい、くらくら茸を取りに行って死んだってやつは、ざらにいるんだぜ」

 店員のおじさんは心配そうに尋ねてきた。


「大丈夫です、必ず帰ってこれますから」

 そう死ぬことない俺たちは、絶対にくらくら茸を持ち帰ってくることができるのだ。



【ルマンドは魔導士の服を手に入れた。魔王の復活まであと356日】


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