第8話「対決ファイヤーヘアー」
【魔王の復活まで残り359日、再び深夜の見回り中】
「いたな……。」
例の放火モンスターを案の定、親方の屋敷の周辺で発見した、今度は声をかけたりはせずに遠くから見つめている。俺は隣のルミィに目で合図をする、こくりとルミィはうなずいて、作戦の準備に移った。
放火モンスターの見た目は人型である。しかし明らかに人と違うのは、髪の毛がこうこうと輝いているところである。そしてそれは輝いてるのではなく、髪の毛の代わりに炎が生えてるんだということがわかった。
そんな明らかに炎をはやしていたら、こっそり放火なんてできないだろうが、そもそもこっそり行う気もないだろう。あの火力である、見つかった場合は相手を焼き殺せばいいだけだ、この間俺達がやられたように。
話を聞く限り、ここ2,3日で路上の焼死体が何人か出てると聞いていた。不幸にも
そして俺はおとりだ。危険を覚悟でやつの前に姿を現さなければいけない。不幸にも偶然出会ってしまった風に装う必要がある。俺はわざとファイヤーヘアーの目に留まるようなところに身体を乗り出す。
あっ、あんなとこに今にも火を出そうとしてるモンスターがいるぞー!
「!?」
というくさい演技をした、俺は驚いたようなふりをして、その場からダッシュで逃げるそぶりを見せる。そぶりというか、気づかれた瞬間実際に走って逃げだした。なんだか戦うたびに走って逃げてばかりだ。
案の定敵は俺に向かって炎の弾を投げつけてきた。
走って逃げる俺の背中を、炎がぐんぐん迫ってくる。
よしギリギリ射程外だ、こちらに届く前に炎は消えた。
そして、今度はファイヤーヘアーはこちらに向かって走りだした、追いかけながらもおれにたいして炎の玉を放つ。
おれはゆっくりと走りながら、ファイヤーヘアーから逃げていく。ゆっくり走ってるのはある場所にファイヤーヘアーを誘導したいからだ。そして、そこは俺とファイヤーヘアーをまっすぐ結んだ線上にある。
まだだ、もう少しひきつけなければならない。
せまる炎の玉――。
やがて、炎の玉が俺の体をかすめていった。さっきと違って炎は俺に届いた、この間と同じように炎の玉は俺にダメージを与えた。
「あつっ!!」
――しかし被ダメージは30だ、よしぎりぎり生き残った!!
今回俺は奴の炎の攻撃に備えて、花火の作業場においてあった耐火服に着替えていた。めったに役に立つことはないが、念のために昔親方が買っておいたものである。基本的に作業場では火が絡むような事故が起きない上に、装着するとひどく体を動かしにくくなるため、耐火服を使っている仲間はいなかった。
しかしそれを買っておいてあることを覚えていてよかった、まさかこんな形で今回役に立つとは。
それでも、もし直撃していれば俺の命はなかっただろう。
そして、痛みがおれをおそうと同時にファイヤーヘアーは俺が誘導したかった地面のちょうど真上に来たのだった。
「ルミィ―――――――!!」
痛みをごまかすかのように俺は、ルミィ―の名前を思い切り大声で呼んだ。
瞬間、ファイヤーヘアーの両足ががっちり土の中からつかまれた。
そしてそのまま、ファイヤーヘアーは一気に地中に引きずり込まれていく。
地中にファイヤーヘアーを引きずり込んでいるのは、もちろんルミィことルマンドである。ルミィはずっと地中に潜み、ファイヤーヘアーが頭上に来るのを待っていた、彼女の職業は海女で得意技は潜水だ。最高で5分まで息を止めることが可能だという。
とはいえ、5分以内におれはファイヤーヘアーをその地点まで正確に連れてこなければならなかった。うまく行かない可能性もかなりあったが、失敗しても何度でも繰り返せばいいだけだ、幸いにも一発で場所への誘導は成功した。
そして、両手で敵の足をつかみながら、ルミィは両足をドリルに変えてどんどんどん地中を進んでいく。ファイヤーヘアーはなすすべなく、すでに膝くらいまでが地中に埋まった。必死に炎を放つも、残念ながら地中のルミィに炎は届かない。
地中のルミィの様子はわからないが、ファイヤーヘアーは、腰、胸元、とどんどん地中に沈められていった。そして、あとは地中に顔を出すだけという場面で、ぴたっとその動きが止まった。
「ルミィ!!」
俺は叫びながら、頭部だけを地中から出しているファイヤーヘアーの元へと向かう。まだルミィが地中に潜ってからは5分経ってないはずだが、何らかのトラブルがあったか、思ったより息が続かなかったか、いずれにせよ無事ではない。
予定外である、本来は地中で窒息させる予定だったが、こうなれば俺がとどめを刺すしかない。
「この間のリベンジさせてもらうぜ。」
そう言って俺は、頭部だけを地上に露出させてるファイヤヘヤーの顔面に向かって、ドリルを突き刺した。
ドリドリドリグォリグォリグォリギョリギョリ!!
「ぐぁわぁぁぁっつ!」
ファイヤーヘアーの悲鳴。
生きている肉を削るいやな感触が、俺の手に残る。
何せこんな明確に生き物の命を奪ったことなど今までに一度だってない、すごく
迷いを捨てて、俺は敵の肉を削る覚悟を決めた。レベル1の俺の剣ではファイヤーヘアー顔を貫ける自信がなかった、確実に殺すためにドリルを使うことにしたのだ。
返り血や、相手の頭部を構成する肉で俺の体は真っ赤に染まった。
正直言うと茫然としていた……。
いや、茫然としてる場合じゃない。早く、ルミィを助けないと!!
と思った瞬間、周りの景色が一面が真っ白の見覚えのある空間に切り替わった。
「女神の間!?」
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