第5話「一人目の仲間」
ドリドリドリッ!
5カ所、6カ所あけきった!ちょうどMPも使い切った。しかし問題がある、やや小さいのではないだろうか? 確かに穴は開いたのだが、少なくとも俺の肩幅はこの隙間を通すことができない。
そこは女性であるし、なんとかなることを祈ったのだが。
「だめです、通りません……。」
あきらめたような、かぼそい声が穴の向こうから聞こえる。彼女の顔も確認できた。そして、彼女の背後に迫る炎も確認できた、たいして時間はない。しかし、俺のおれのMPはもうない。
「あ、あきらめるな!今何とかする」
とは言ったもののどうするか、剣で削るにしても間に合わないだろう。
そう思っていたら、頭の中に声が聞こえてきた。あのくそ女神だ。
『その女だよ、探してた新しい仲間は。僕の恩恵を受ける5人の戦士の一人だ。どうする?せっかく出会ったのにすぐ死んじゃうね。まあ。でも心配しなくても君も死んで全滅すれば、またこの地点からスタートできるしさ。死んじゃっても大丈夫だと思うよ。』
このくそ女神は本当にかつて世界を救ったのだろうか?ひどいことを言いやがる、まったく人の命をなんだと思ってるのか。
でも、多少予感してたものの、目の前の女性が戦士のうちの一人だったとは。なおさら死なすわけにはいかない。
たしか、
「おい、壁の向こうの人!俺を信じてやってほしいことがある。」
俺は穴に向かって叫んだ。
「は、はいなんでしょうか。」
か細い声が返ってくる。
「『ドリル』と叫んでみてくれ。」
変なことを言ってるようにしか思われないだろうが、とにかく残された手はこれしかない。
「ド、ドリル! きゃあっ、な、なんですかこれ?」
ブーーーッと音が聞こえる、よしどうやら彼女の右手もドリルになったようだな。
「よし、それを壁にあてろ、削れー!」
「あ、はい、うわあ、両手が変な感じーっ!」
ドドリッドドリッドドリッドドリッ!
あっという間に、彼女のドリルの両手は俺のところまで貫通してきた。俺よりもはるかに早く、そして範囲が広かった。
そして、彼女はそのまま両手で作った穴に肩を入れて、こちらにはい出てきた。
――彼女が通ってきた穴の向こうでは、炎が暴れまくっている姿が見て取れた。
「た、たすかったな、紙一重だった。」
俺はほっとして、煤にまみれてところどころが、黒くなってしまってる彼女を見て声をかける。
「ええ、ほんとうになんとお礼を言ったらいいか。それにしてもなんですかこれ?一瞬両手がドリルになってしまったのですが……。」
彼女の両手は、今はもとの白い手に戻ってしまっていたが、俺も確かに彼女の両手がドリルになっているのを見た。そう俺と違って彼女の場合は両手がドリル化したのである。
「説明するのは難しいのだが……、まあまずは無事を喜ぼう。女の子も無事だ、すでに救急隊に引き渡して、治療をしてもらっている。君は大丈夫か。」
「ええ、少し煙を吸ってしまったくらいで、やけどもありません。反射的に女の子を助けに館に飛び込みましたけど、逃げ道が全くなくて死ぬかと思いました。本当助かりました」
そうやっていって、彼女は素敵な笑顔を見せながら深々と頭を下げた。金髪の長い髪がところどころ、ちりちりになっているのを見ると、本当にギリギリだったんだとわかる。
すると突然、景色が何もない真っ白な空間に切り替わった。目の前には助けた少女、そして俺の左側には、例の女神ブルボンがいた。そうここは女神の間である。
「やあ、初めまして僕は封印の女神ブルボンだ。出会えたことに感謝するよ。君の名はなんだい?」
ブルボンは俺の時と全く同じ挨拶を彼女にした。
「あ、あ、えっと私はルマンドです。その女神様なんですか。ここは一体その……?」
無理もないが目の前の金髪の少女ルマンドは大変困惑している様子だった。ルマンドを改めてみると普通の子よりも肩幅が少し広く、身長も高い。なにかスポーツでもやっているのだろうか、服装的には戦士といった感じではないが。
「ルマンドか……。君は魔王の復活を阻止するための5人の戦士の一人に選ばれた。
だから、これから、このアルフォートとともに旅に出てもらう。」
きりっとした顔つきで、ブルボンはルマンドにそう宣言した。ルマンドは何を言われてるのかさっぱりわからないようだった。無理もない俺もさっぱりわからなかった。
そして俺の時と全く同じ説明をしばらく続けて、ようやくルマンドは事態を理解したらしかった。何はともあれ、俺の旅に仲間が加わったのだ。いや、女神の呪いを受けた仲間が一人増えてしまったという方が正しいだろうか。
【ルマンドが仲間に加わった!】
名前:ルマンド
性別:女
年齢:18
スリーサイズ:非公表(アルフォートの推定で 76 60 80)
LV.1
HP:20
MP:40
攻撃力:2(非装備)
防御力:10(装備後)
素早さ:30
魅力 :25
職業: 海女(潜水士)
スキル:潜水、遠泳
装備 :素手
カジュアルな服(一部焼けた)
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