第12話 おかえり

日が沈む前に干していた洗濯物を取り込みにいく、タオルは半乾きだったがパンツは乾燥しきっていた。

 夕方には戻るかと思っていた先ぱいは未だ戻らない、夕食は先にとるか?とリタちゃんに尋ねられた。もう少し待ってからにしようと結論し、とりあえずパンツを履く。

 待ち時間で検証の結果や考察を交えたレポートを仕上げる。明日のこともあるので、あまり手間取りたくはないのだ。

 

 結局、夕食は二人で先にとることになった。食事を終え一時間ほど経った頃合いで先ぱいがやっと帰ってきた、体感で二十一時前といったところだろう。

 リタちゃんはそそくさと出迎えに向かったようだが、俺はそこまでする必要もないと食堂で湯を沸かす。

 先ぱいはにこにこしながら食堂に入ってくる、余程楽しいことでもあったのだろう。ライブで観る石器時代、うむ確かに面白そうだ。


「ご機嫌ですねー、何か良いことでもありましたか?」

 三人分のお茶を淹れながら尋ねる。


「定例の観察と、あと少し手を加えてきたの」

 観察はわかるよ、でも手を加えたとは何じゃらほい?


「フッフッフー、聞きたい?」

 是非聞けと催促されている模様、ここは大人のおっさんの対応をしよう。

「いいえ、別に」

「そーお、じゃあって聞きなさいよ!なんなのよ、もう!」

 頬を膨らませる可愛い仕草をしながら、ベタなツッコミをくれた。

 右手を差し出しどうぞと先を促す。これぞ、おっさんの対応だ。


「聞いて驚け! 獣耳の人間たちを創ってきたわよ」

 は? 何言ってんだこのおっぱい。それにしても、神様自由すぎるだろ! 遺伝子弄りまくりか? マッドなのか…。

「獣耳ってバニーガールみたいなの?」

 敢えて少しボケてやる。

「そういえば、兎耳を忘れていたわ。私としたことがなんてこと…」

 しまった藪を突いてしまったようだ、何やらブツブツ独り言をほざき始めた。


「そういえばあなた、急に横柄な言葉遣いになってない?」

 あぁ今頃気づいたのか先ぱい。

「もう猫被るのに疲れたし、そこそこ慣れた気もするし大丈夫かなっと。これからは地でいくよ」

 先ぱいの相手するのに敬語使うとか、アホらしくなったんだよね。そのままでは伝えないけどさ。

「ふ~ん」と怒るかと思われたが楽しそうに笑う先ぱい。こいつ、ツンデレか?弄りたくなるな。


「んで、獣耳人間がどうしたの?」

 ここは素直に聞いてあげよう、ご褒美だ。

「野山駆け回ってる一部の人間たちを、獣耳に置き換えたのよ。彼らは狩りが得意だから、新たな進化を獲られると思うのよね」

 ニッと笑う、笑顔は相変わらず可愛らしいな先ぱい。


「そういうのって、俺に出来るようになるの?てか、やらないとイケナイものなの?」

「ゆくゆくは出来るようになると思うけど、強制じゃないわよ。こういう言い方をすると可哀そうなんだけど、所詮は偽りの世界だしねぇ。あくまでも、私の研究ってところね」

 急に真顔に無表情になるなよ、怖いから。

「ふ~ん、そうなんだ。ああこれ、今日のレポート読んでおいて」

 先程仕上げたレポートを渡す。

「なにこれ。あぁそういうこと、わかったわ」

 

「じゃあ俺は、明日に備えて休むわ。あぁそれと、おかえり」

 一言付け足し食堂を立ち去った。

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