第11話 少女の居ぬ間にパンツの洗濯
俺は今、中庭は井戸の前に居る。しかも素っ裸、所謂ふるティンだ。
そして独り寂しくパンツを洗っている、勿論手揉み洗いだ。
熱湯入りの桶とタオルを持ってきてくれたリタちゃんに礼をし、最初は部屋で独り寂しく拭き拭きしていたのだ。だが、再び服を着る段になってみると、汚れたパンツを再び履くのは気持ち悪い。一度裏返して履いてみたのだが、どうにも気持ち悪いのだ。
そこでこうして井戸端にしゃがみ込みパンツを洗っている。しかしあれだな、他人にはとても見せられない姿だな。
今俺の背中には、想像を絶する哀愁が漂っていることだろう。
洗い終わったパンツとタオルはよく絞り井戸の屋根の上に置く、石ころを数個軽く洗って重石にした。どちらにしろ乾くまでパンツはお預けだ。
さてどうしよう、全裸のままダッシュで部屋まで行くか? もしリタちゃんに発見されたら、変質者まっしぐらなので却下。
迷いに迷った後シャツを着た、次いでパンツを履かずにズボンを履く。ファスナーに色々挟みそうで怖いが、しっかりと押し込む。う~む、ポジが悪いが我慢だ。
裏口から食堂の中に入り周囲を確認する、ちゃんと服着てるし疚しいところなんて無いのだがコソコソしちゃう。パンツ履いてないだけで、こんな気持ちになるんだな……。
食堂から廊下に出たところで、リタちゃんに遭遇した。危なかったストリーキングをやってたら見つかっていたことだろう。
「井戸のところに洗濯物ほしてあるから」と伝え、部屋に早足で戻って来た。
あぁやり遂げたぜ! 達成感が凄まじい。
部屋に戻ってやることといえばアレしかない。ベッドに寝転がり分離する。体を一瞥、うん、おっさんだね。
そして俺自身を見る、なんで精神体というか霊体というかなのに、何故服着てるのだろう? 首を傾げる。ズボンを軽く捲るとパンツを履いている! しかもお気に入りのトランクスだった。
これはどういうことだ? イメージが具現化していると考えるのが無難なところだろうか。
先ぱいの話の重点が『残滓』とやらにあるのは確かだから、動力源として『残滓』が作用していると仮定する。現状で服を着ているという事態は、無意識下でその動力が作用しているということになるのだろう。
無意識に関してはどうしようもない。しかし逆に、上手く意識することが出来れば、動力を行使することは可能なのではないのか? 腕を動かしたり、首を巡らせたり、振り返ったりすることは出来ている。
本来は無意識下で簡略化されてる事象もひっくるめて意識し動かせば、この体でも同じように動けるのではないだろうか。難しそうだが…。
腕を組み熟考する。
先ぱいは、何の神なのかを先に明らかにするべきだと考えているようだが、俺は別のアプローチをしても良いのではないだろうか? 完全に否定するのではなく、平行してやっていくという手もあるだろう。
まずは、少しでも移動距離を伸ばしたいな。現状だと肉体から約三メートル以上離れられないし、フヨフヨ浮いているだけで簡単な動作くらいしか出来ない。自在に動けるようになりた!
『じざいにうごけるようになりたい!』
なんだ?俺の思考が声となって木霊した。どういうことだ、俺の思考が『残滓』化した? 何が??
折角やる気になったのに、また疑問に襲われる。あークッソ!
先ぱいは確かこう謂ったはずだ。
『それは祈りや願いの残滓。人の思いの搾りかす』と、ならば『自在に動けるようになりたい!』という俺の言葉は願いの残滓?これは先ぱいに聞いてみるしかないな。
あ~早く帰ってこないかなっと先ぱい。
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