第3話 どこ?ここ

 とんでもないおっぱいに連れられてどこへ行くのか尋ねようとすると、いきなり抱き寄せられた。

 おっぱいで窒息しちゃうよ!? しかし傍目から見たら、若いおっぱいに包まれる草臥れたオッサンってヤバいな捕まっちゃうね。

 と思ったのも束の間、見たことのない建物の中に移動していた。

 おっぱいは抱いていた俺を開放し、ジッと見つめてきた。薄茶色の瞳に健康的な褐色の肌、燃えるような赤い髪、歳の頃は二十七、八くらい。

 美人に見つめられるってのは、悪くない悪くはないんだけど居心地が悪い、俺が何か言うのを待っている様子だ。


「……お、お邪魔します?」

「はい、いらっしゃい」

 上手く当たりを引けたようだ、変なこと口走しらなくて良かった。


「あ! おかえりなさいませっ」

 ちょっ一人増えた。部屋の扉は開きっ放しだったようで、小学生くらいの少女がやってきた。

「ただいま、お客様を連れてきたわ。この娘はリタ、あと二人居るのだけどまた後でね」

「リタと申します、いらっしゃいませお客様」

 俺は何を言うでもなく軽く会釈をした、おっぱいの隣に佇む少女はにっこりと笑みで返してくれた。

 そのリタちゃんはというと、割烹着なんか着てるけど白い肌に金髪なんだよ。うん、凄い違和感。

 でもまぁおっぱいは普通の少女だった、後二人居るらしいからどうなることやら。

 あまり見つめていてロリコン扱いされても困るので目を逸らし、逸らした先の窓の外の景色を見る。

 リタちゃんはというとおっぱいと少し話をしていたようだが、直ぐにどこかに行ってしまった。



「おっぱ……じゃなくて、あのここはどこなんですか?」

 危うくおっぱい呼びしちゃうところだったわ、アブネー。

「ここは私の屋敷よ」

 大きいおっぱいをこれでもかと張りながら言われましてもねぇ、はち切れちゃうよ。

「いや、そうじゃなくて、ほらあの窓の外の景色がですね、なんと言いますか非常に長閑で……」

 そう!どうみても日本じゃない、いや全国津々浦々見回った訳じゃないけど、この景色はたぶんチガウ。

 だって、さっき俺の家の前で夕方だったのにどうみても朝方なの。それに変な生き物がお庭をウロウロしてるの!

 羊じゃねぇや、毛が無いからたぶん山羊。山羊だとは思う、思うんだけど俺の知ってるのとちょっと違う。足が多いの!お腹の辺りに足が生えてる?

 子供の頃見た理科室にあったホルマリン漬けの奇形仔豚は確か足が八本あったけどさ、歩き回ってるんだよ。てか、マジでどこだよココ!? しかも察しの悪いおっぱいのせいで話が進まないし。


「あぁそっち、私の自慢の世界よ。すごいでしょー?」

 自慢気に、おっぱいが答える。俺は顔を引き攣らせながら苦笑するのが精一杯。

 勘弁してくれよ。もう何なんだよ、さっきから昼からか。

 オッサン脳に痛烈な一撃が叩き込まれ続けている、オッサン脳はそんなに柔軟ではないので事態を上手く呑み込めません。リバースしそうです。


「すみません、ちょっと横にならせてください。オネガイシマス」

 部屋にあった複数人掛けのソファにゴロンと転がり休ませてもらう。

「今、お茶の用意をさせているから、しばらくゆっくりなさい。私は奥に居るから、またあとでね」

 おっぱいは気を使ってくれたのか静かに部屋を出ていった。


 俺は頭を抱え目を瞑り、少しでも現実逃避を図ることにした。

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