第3話 決意

数分前、コンビニにて。


足から生えた柘榴の牛のせいで、勇作の鎖が無ければすぐにでも引き摺り回され、そのまま殺されるだろう。しかしこのまま鎖に繋がれたままなら、強くなっていく牛のパワーに、私の体は弾け飛ぶだろう。

生き残る為には、自分の柘榴で牛を殴る必要がある。


私は昔から、正義感は強いほうだった…と思う。周囲からそう言われると言うだけだから、確実な根拠はない。

いつだって自分の正しいと思う道を進んできた。今回だってそうだ。助かる為なら外を見る必要なんて無かったのに、自分からこうなる事を選んだんだ。


なら、せめて格好くらいつけさせて欲しいものだ。


足の関節は外れる寸前だ。そうやって筋繊維まで千切れていって、終いには出血多量で死ぬだろう。でも、生きなければならない。生きて、この状況を何とかしなければならない。誰に言われたか分からない、ただの責任感である。エゴでもある。でも、無茶でも自分が「正しい」と思うからこそ、気合いが入るのだ。

きっとこれからも、只の自分のエゴに操られる。それは、きっと辛いだろう。苦しいだろう。

でもこの状況を乗り越えれば私は成長出来る。何となくだけれども、そう思う。




「コノ試練、乗リ越エマスカ?」


マントと外套に身を包んだ、言わば中世の旅人のような、その女の人は続けて言った。


「コレハ希望ヲ探ス旅 長ク苦シイ旅

貴女ハソレヲ 乗リ超エマスカ?」


答えはとうに決まっていた。生きて、この奇妙な「非日常」をもとの平和な「日常」へと変える!

「えぇ、もちろん!」


「ソノ答エヲ 待ッテイマシタ

私ノ名ハ エクスペクト・ザ・ワールド希望の未来へ

コレカラ ヨロシク願イシマス」


「希望の、未来」

どうやら今は、希望とは言えないらしい。なら絶望か、と言われてもそうとも言いきれない。…と思う。きっと未だ、絶望や希望とか言い切れない、スタートの段階なんだろう。ここから旅は始まるのだろう。このETWは私を成長させる鍵なのだろう。


考え尽くせない程に考えた。


「急ごう」




…今に至る。




「沢山の被害者が出てしまいました それに、私、人を…」

「人を殺す奴は、それなりの〈覚悟〉をしてきた奴らだ それは、僕らも同じだ」

「でも…」

「僕自身、これが正しかったのかは分からない 分からないけど自分なりに考えて、その結果がこれだ 後悔はしない 後戻りも出来ないし、する気もない 進み続けよう」

「「希望へ」」


マンションの屋上へ登り周囲の様子を確認した。

そして、驚愕した。壁が周りを囲っている。首都を囲んでいる。この位置から外が見えないので、相当な高さだ。

そしてもうひとつ。国会議事堂、皇居のそれぞれがあった場所に、それはそれは奇妙な屋敷が建っていた。遠目から見てもそれが人工物でないことがわかった。なにか、本能で感じ取ることが出来た。

「唯さん、あれ」

「あれが、今回の件に関わっているのは明白ですね」


いったい、日本はどうしてしまったのだろう。どうなるのだろう。きっと勇作もそう思っているだろう。しかし目的は変わらない。希望を掴む。この手で。不安なんて押し殺して、輝ける未来に辿り着いて見せる。


「しっかしこれからどうしたもんかなぁ」


とりあえず、私と勇作は国会議事堂の方へ向かい進むことにした。



次回「抗う者」




おまけ

コスプレ

コードネーム 金充(かねみつ)

柘榴名 「イマジナリ・パワー」


自らが思い描いた最強を形にする能力

柘榴自体は、本人が手に持つトランシーバーである。途中の解説を挟むとすると、


「イマジナリ・パワー 飛べ」→イマジナリ・パワーに思いが通じる→具現化したコスプレに、ジェットが生える


とこんな感じである。

従ってコスプレはその具現化したものなので本体でなく、かねみつにダメージは通らなかった。



闘牛士

コードネーム 慢心(まんしん)

柘榴名「レッドブル」

布が柘榴本体である。

布をみた相手の足から牛を生やす。その牛は慢心が見ている範囲の、任意に決めた地点を目指して走る。そして、その馬力はどんどん強くなり、最終的に牛だけになって到達することもしばしば。牛を柘榴(生えた本人の)で攻撃すると消える。


桜庭勇作(さくらば ゆうさく)

柘榴名「ワンダーフール」

鎖に縛られた、奴隷の様な見た目をしている。全身に絡まる5本の鎖を自在に操ることが出来る。用途は自由でパイプやフェンスに巻き付けたり、縛ったりすることも出来る。

実際に殴って括りつけて〈固定〉することも出来る。実際に殴って〈固定〉した場合、鎖を手放しても〈固定〉は続く。


優菜唯「ゆうな ゆい」

柘榴名「エクスペクト・ザ・ワールド」

触った対象を小さくすることが出来る。







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