第4話 抗う者 ①

 私と勇作は国会議事堂の方へ向かって歩く。

 辛うじてスマホのネットを介さない機能は使えるので、時計を見てみると今までの出来事は、1時間とそこらしか経っていない事が分かった。

街の様子は異様であった。昨日までの喧騒はどこへ消えたのやら。屋内にまだ人がいるのか、明かりは消えていた。きっと中に誰かいると悟られないためであろう、しかしこの真昼間に電気が消えている方がおかしい。中にまだ人がいることが分かった。



 勇作は黙っていた。きっと人を殺めたことに対することに対する感情と、向き合っているのだろう。


かくゆう私はどうだろう。


「唯さん」

「はい?」

「あのビル、不思議な感じというか、違和感というか…伝わるかな…」

上手く言葉が出てこないが、私にもその違和は分かった。こう、不思議なのだ。何か引っかかる。

「高さだ」

勇作が口に出してわかった。あの高さだと日が登れば向かいの建物には日が当たらない。日照権やらなんやら引っかかるはずだ。

「金持ちは凄いなぁ」 勇作が呟く。

「やっぱりマンション経営とか儲かるんでしょうか」

「収入も安定してそうだしね」

なんて会話をしながら歩いていた。



「柘榴です

体がピクリともうごきません」

奇襲だ。体が動かせない。今は喋るのが精一杯だ。

勇作が動いている様子を見るに、拘束されるのは一人までらしい。

「攻撃を受けたのは唯さんか

って堂々と正面から出てきやがった 敵のお出ましだ」

そして、ビルの方から金髪のサングラスの男が出てくる。

「私たちはあなたがたに危害を与えるつもりはありません! どうか攻撃をおやめになって頂けませんか?」


「…いまこの状況で外をのうのうと歩いている人間が普通なわけはないと思ったが、まさか柘榴のことについて知っているとは」

「で、攻撃は解いてくれるのですか?」

「とかないね 君たちはいずれ脅威になる

それが分かっていて見逃す阿呆がいるかい?」

「ワンダーフール!括りつけろ!」

ワンダーフールが殴り掛かる。


ため息を一つ、男がこぼす。

「ハングリーアングリー!!」

男の背後から2,3mはあろうか、かなり大きなサイズの柘榴が出てくる。下顎から上のない骸の頭をもつ巨人の様な柘榴。そして殴り返す。そして、その馬鹿力でワンダーフールを吹き飛ばす。本体である勇作も吹き飛ぶ。

「勇作さん!」


「超パワー系だな… 防御したのにほぼダメージが流せなかった 正面からは無理だなあれは」

「ワンダーフール!」鎖を投げて縛る作戦か、しかし鎖は外れ、少し奥へ。

「衝撃でまともに投げられないみたいだな」

「ワンダーフール!鎖を全部!」

一つも掠りもしなかった。が、やっと分かった。

「自作の狩場を作ったか」

ハングリーアングリーと呼ばれる柘榴の周りには勇作の全ての鎖が張り巡らされている。

「来るがいい」

「あぁ、行かせてもらう!伝え!」

鎖と鎖を器用に伝い、立体的に攻撃に移る。

完全に背後をとり、殴り掛かる。

ハングリーアングリーはそれを片手でいなそうとする。

瞬間、ワンダーフールの体が浮き上がる!みると鎖の配置が変わっている、移動の間に鎖のレールを組み替えたらしい。

「貰った」

「そうはさせません。なんせ最強のメイドですから。」

声と同時にワンダーフールの動きが止まる。

私の動きの束縛が解ける。

「勇作さん!

ETW!!ワンダーフールを狙って!」

柘榴の効果でワンダーフールの体が縮む。間一髪ハングリーアングリーの攻撃は躱せた。しかし、事態は悪化した。

ビルの2階から桃色の髪のメイド服の女が降りて来る。

「二人の柘榴使い…」

きっとあのメイドの方が束縛。なら、あっちの男は?

「お前は私のメイドではないだろう」

「いやメイドですから。正真正銘最強のかや様のメイドです。」

「うーんこの」

「あの、かや様。メイドとして一言申し上げたいのですが、宜しいでしょうか。」

「どうぞ」

「本当に彼らは悪役ではないと思います。

仲間かどうかは別ですが。というかこの場合、一方的に仕掛けた我々が悪役なのでは?」

「むぅ、やっぱりなぁ

いや、そうだと思ってはいたぞ?9割9分そうだとは思っていたが、うん。残り1分が怖いではないか」

「やはりかや様は流石でございます。自分の臆病を見事に手柄っぽく言い換えました。尊敬です。」


呆気にとられる私と勇作を横目に何やら楽しそうに話をする二人。

悪役とか言っていたが、あれはどういう意味なのだろう。話から察すれば、きっとあの人達は悪い人では無いのだろう。

警戒を怠らず、睨みつけたままの勇作の代わりに、私が声をかける。

「あの…」

「はい?」メイド?が答える。

「あなたがたはいったい?」

「それは私が答えよう 」かや様と呼ばれる男がメイド?を遮り答える。

「単刀直入にいう 私たちは抗う者レジスタンスというものだ 反政府軍と呼ぶべきか」

「レジスタンス…」





「中二病が隠しきれてません。かや様。」

「いい加減口を慎んでくれないか奈々」




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