第2話 柘榴

 このテロが始まって、まだ5分ほどしか経っていないとはいえ、何故警察は来ないのか?

 あのコスプレは何なのか?

 この牛や鎖人間は何なのか?

 さらにこの勇作は何者なのか?

 色々と考えが巡るが、一つに考えを絞る。

「先ずは生き延びなきゃね」

 勇作はそういうと鎖人間で遠くのレジを殴る。

「俺と唯さんを〈固定〉しろッ!」

 すると私の体と勇作の体が後ろに引っ張られ、レジに張り付く形になる。

「あのー…」

「聞きたいことは沢山あると思う でもちょっと我慢して聞いてほしい」

「?」

「唯さん、こいつや牛が見えるかい?」

 といって鎖人間を出すと、おもむろにその鎖人間が殴りかかってきた。思わず手で防ぐ構えを見せると、

「やっぱり見えるんだね」

「???」

「こいつらは柘榴ざくろといってね」

 キョトンとする私に構わず話し続ける。

「説明してる時間はないから、単刀直入にいうとね 柘榴は、柘榴を持つ人間にしか見えない」

「私そんなの出せません!」

「…じゃああのコスプレはではないんだね」

「多分そうだと思います すいません曖昧で」

「まあ牛が唯さんにも生えたことを考えれば、推測は出来るんだけどね」


「…あのコスプレは柘榴の一つなんですか?」

「あぁきっと あんな、まさにに書いたようなマシンガンで人が殺せると思うかい?」

「…」

 「まぁこれで唯さんの柘榴でないことはわかった うん これだけでも嬉しい進歩だ 改めてよろしくね、唯さん」

「あ、えぇはい!

 にしても、これからどうするんですか? あのコスプレにどうやって立ち向かうんですか?」

「あいつ自体は実際なんとかなる ただ問題は…」



「唯さんにも分かる?」

「引っ張る力、強くなってますね…」

「あぁ、このままじゃ下半身全部持ってかれる」

 息を呑む。やるかやられるか。そういう次元の話をしているのだと、今、もう一度実感した。

 時間はない。


「まずこの牛をなんとかしなきゃ、な!!!」

 勇作がワンダーフールで殴りかかる。

「モッ!!!」

 苦しそうな声を出し足から生えた牛は消えていった。

「オラァ!!!」

 私も負けじと殴る。

 しかし、すりぬける。

「ワンダーフールッ!!!」

「モッ!!!」

 しかし、消えない!

「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!

 吹き飛べッ!!!!!!」

 ワンダーフールが渾身の連打を叩き込む。

「消えないッ!!」

 本人の柘榴でしか消せないのだろうか。だとしたら、

「最高にまずい」

「ほ、本当に限られた人間しか助かりません!」

「唯さん 自分のことより先に他人を思いやるのは素晴らしいことだ でも、今は自分のことを最優先に考えてくれ

 この牛の性質上、僕ができるのはせいぜい、唯さんを固定する事くらいだ」

 私の柘榴…。出さなければ確実にここで死ぬ。

「唯さん 柘榴を発現させるためにはが必要なんだ でも、難しいことじゃない」

「きっと唯さんは、もう、持ってるはずだから」

 いうと勇作はコンビニの外へ歩いていく。

「まぁ唯さんが発現させる前に、僕が倒しちゃうかもしれないけどね ははっ」

「気をつけて…」

「うん!」

 そして、コンビニのドアの鎖をとき、向かう。

「まずはあの、ウェスタン気取りの野郎からだな まったく時代錯誤にも程があるっつーの」

「Ggggggggggggggg!!!!!!」

「悪いが、ここは通させてもらう ワンダーフール! マンションの壁に鎖を括りつけろ!」

「アーイ」

「引っ張れ!」

 ジャラララララララ!と豪快な音を立てて勇作が飛んでいく。まるで何処ぞの蜘蛛人間のように器用に鎖を使って登っていく。


「イマジナリ・パワー 本体ではなく鎖の接着点を狙うのだ」


「鎖ノ接着点ヲ狙ウ様ニ狙撃セヨ」


「Gggg…」

「ぐっこいつ厄介な

 ワンダーフール!中へ入れ!」

「アーイ」

 パリーンと小気味よいおとを立てて勇作がなかへ入っていく。


「イマジナリ・パワー 飛べ」


「ラジャー ジェット機構ヲ追加シマス

3.2.1.

レディー!」


「Ggggggggggg」

 な、何だあれは。コスプレの背から、ジェット機のような噴出口が出てきている!まさか、空も飛べるのか!

「Gggggggggggg!!!」

 これは絶対にあの赤い布のところまでたどり着かせない気だ…。勇作さんは大丈夫だろうか。…いや、いまは自分の心配だ。おそらく、優作さんは間に合わない。私が柘榴を発現させなければ私は死ぬだろう。

 私が見る限り、一回に出せる鎖の本数は4~5本だ。きっと一本私に使っているし戦いにくくなっているに違いない。

「なんとかしなきゃ…」


「あーつまんね 早く終わらせてくれよー

 俺のレッドブルの最大馬力が出る時間になっちゃうだるろぉ!」

「うるさいなぁ お前自分が危険なの分かって言ってる?」

「いやー誰が来てもこのは絶対見るでしょ? その時点で俺の勝ちだから」

「慢心は良くないぞ」

「慢心と自信は違うんだよなぁ キャリアが違うよキャリアが」

「はぁ…

 イマジナリ・パワー 気は抜くなよ 虎は蝿1匹すら全力で叩き潰すらしいからな エンジン全開だ

 どうした、イマジナリ・パワー?」


「強化不能 強化不能 無理ヤリ武装ヲ追加スルノハ危険 何モ出来ナイ」


 鎖で雁字搦めにされたイマジナリ・パワーと相対する勇作。

「どんなに武装を固めても、動けなけりゃ、意味無いよなぁ~~

 絞めだ!おおおおおおおおおお!!!!吹き飛べッ!!!」


「Ggggggggg!!!!!!」


「マジかこいつ…」

 まるで効いていない。コスプレをここに括りつけておけば戦闘不能同然だ。先に進むこと自体はできる。

しかし残りの鎖は1本。1本で残りの一人も相手するのは

「無理だ…」


「いや、行こう 唯さんが待ってる筈だ

 勇気だなんだほざいた僕が先に諦める訳にはいかないな」


 階を進める。屋上に着くには後もう少しだろう。


「もうそろそろここにつく頃かな」

「早く来いよなー「来てやったぞ」

「レッドブルッ!!!」(背後からッ!ワイヤーみたいにまた登って来たのかッ!)

「惜しかったな~~?奇襲までは良かったぜぇ~~?でもよぉ~詰めが甘いんだ詰めが

 自分の身を守る手段も何も無しに来たのか~?捨て身の特攻は勇気じゃねぇ!無謀って言うんだよ!分かったか???」

「じゃ 落ちろ」

レッドブルの能力で、勇作の足に牛が生えていた。そしてその牛の目標は、ここから数十メートル下の地面へ向かっている。


「あぁ、確かに身を守る手段は考えてない。

 お前らを確実に殺す手段しか考えてきて無かったしなぁ! ワンダーフール!2人を捕まえろ!」

ジャラジャラジャラ!

落下を初めている勇作の最後の攻撃である。

この残った一つの鎖で出来ること…それは自分諸共二人の柘榴使いを殺す事だった。

しっかり鎖は二人を捕らえ、3人全員が、屋上から投げたされた。しかし

「無謀…だね 無策ともいうのかな」

「頭を使わねぇと、考えとは言えねえなぁ?

 レッドブルッ!」

 闘牛士は無口な男の方を向く。無口な男の足から牛が出てくる。今までよりも大きく、そしてそれは壁にめり込んだ!

「どうやって俺たちを殺すんだ」

「どうやって俺らを殺すんだぁ~???」


「こうやって、よ

 ッ!!!」

「レッドブルッ!」

「遅いッ!!

 私の攻撃は、既に完了したッ!!」

 勇作以外の二人の体が、みるみる縮んでいく。引っかかっていた体も、直ぐに壁、更には鎖からも外れ落ちて行く。

「地獄に堕ちろ 外道

 っと勇作さん危ない!」

「ありがとう唯さん 助けに行こうと思ったら助けられてたよ 情けないなぁ」

「いえ、勇作さんが居ないとそもそも私ここに来れてないですから うふふ」

 笑みがこぼれる。安堵もあるが、何かこう、勇作さんに感謝を述べられると素直に嬉しいという感じがして、堪えられなくなった。

 





 次回は回想から初めて、それから少し進めやうと思います。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る