第17話炎
「これは・・・僕がやったのか・・・?」
改めて見渡すとひどい惨状である、一人は肋骨が折れもがき苦しみ、もう一人は体に亀裂が走り泣きわめいている。残る三人もこれを見て戦意を喪失、足がガタガタと震えている。そして隣の家は炎がすべてを燃やし尽くさんと淡々と侵食している。
「・・・感傷に浸っている場合ではない・・・か」
自分のやったことすらろくに確認できずカズトは炎の中に躊躇なく入り込んだ。
・・・熱い、この身を包まんとする炎は私の生きるまでの罪なのだろうか、この肉を焼き血を焼き骨を焼こうとする。業火の最中ムルナは大人しく縮こまっているのをやめた、青年たちの声が聞こえなくなったからではない。(というより燃えているところを避けるのに必死で外の声はあまり聞こえていない)単純に「生きたい」と思ったからだ、そのために炎と黒煙迫る部屋から抜け出すことにした。
・・・必死になって玄関の扉に歩き出そうとする・・・しかし煙を多く吸ったのか足が言うことを聞かない、その場で倒れてしまった。魔法を使おうとも思ったしかし、この体調では魔力など練れるはずもない。
・・・這いずり、低い姿勢でずりずりと動く、ふと先ほどまで居たところを見るともう、そこに居場所などなかった。
気付くと、足元が熱い。ムルナは絶望した。
私がこの町に住んだのは34の時だ、ムルナは魔力を含めて普通に作るより、奇麗にした花を売っていた、港町に咲く花の評判はとてもよく誰もが大切な物のため、大切な人のために花を買った。
その時に出会った夫と結婚し二人で愛し合い生きた、子供を作りとても幸せだった。
いつからだろう、「魔獣使い」と言われ始めたのは。愛する者も先に旅立たれ、子供でさえも自分を見限った。その時から辛くてしょうがなかった。つらくて重い2年だった、ひたすらに我慢する二年だった。
熱い、熱い、熱い。・・・
・・・ふと何か自分を呼ぶ声が聞こえた、久しく自分の名前「ムルナ」と呼んでいる。
「おとおさん・・・?」
以下、おまけの尺稼ぎストーリー保管。「魔力量」
「そういやアスキル、結局カズトの才能は魔力量だけだったの?」
アミスが問いかける、それはカズトが旅に出て3日後のまだまだ名残惜しい頃の話だ。
そういえばアミスはカズトがまだ魔力を引き出し切れていない頃にしかレクチャーしていなかったことをアスキルは思い出す。そして答えを出した。
「・・・いえ」
少し目を伏せ彼がいたころを思い出しつつ彼女は語る。
「カズトは魔術師としてのセンスは優秀よ、・・・ただ突き抜けているというわけではないわ」
「へ?そーなん?」
疑問そうにアミスが言った。
「カズトのセンスはせいぜい私達程度と同格ね、でも彼はとても努力家だわ」
少し自分の弟子に自信を持った風に話す。
「並み程度の魔力量で修行を始めると大体は20分が限界、魔力の回復に6時間はかかるわ、だから結局一日に魔術の練習ができるのは努力家でも80分程度なの」
あ、なるほど。とアミスは思った。
「カズトは魔力がとても多い、それつまり魔力を修行に使える時間がとても多い・・・ということ?」
そうね、と一言置き、話しを続ける
「具体的に言うと彼は3日は魔力出しっぱなしでも動けるはずよ」
「すごっ!」
魔力を三日間使い続けるという所業はアミスという賢者の一人でも不可能なのだ、そもそも地の魔力とはひどい話だが、殆ど才能によるものが大きく伸ばすことはなかなか難しいものなのである。
「ただ・・・」
「ただ?」
「移動中も魔術の練習をするだろうから3日間、旅しながら魔力を使い続けるとなると・・・途中で倒れてしまわないか心配ねぇ・・・」
あきれて物も言えない顔でこの話を聞いた彼女は答えた。
「カズトが旅に出るときにその話すればよかったんじゃ・・・」
おかげでカズトが芋虫を食べる羽目になったのは言うまでもない。
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