第13話合成獣

妖精の国「バヤン」。僕が今いる小さな国「トルン」からは海を渡り4日ほど歩かなければならない、この時代から推察するに航海はきっと命がけなんだろうなぁとか思ったりすると震えが。


一度死線はくぐったとはいえまたか・・・とりあえず船酔いヤバそ・・・

みたいなことを考えているが、まだ僕は海すら見えない場所を歩いている。ていうか今、山と山の間を抜けているところだ、先生たちに磁石と地図をもらって読みかたも教えてもらったがやっぱり不安だ。「山の中って幽霊出やすいんだってな・・・」

この世界では本当に魂というものが魔力として具現化するようで、つまり、死ぬ前に強く恨みを持ったものは死ぬ前の「思い」が魔力となって動き出すらしいああ怖い怖い


この時代の船に乗るのが怖いからって別のことを考えてみたら山の幽霊のことを考えてまた怖くなるそして別のことを考えようとこの山の脇を抜けた先の船のことを考える 船→山→船→・・・の無限ループに陥ってしまった。


何か別のことを考えよう、そういえば、アスキル先生のパンツを盗んだはいいがどうやって犯人を特定したのかよく解らなかっ・・・と脳を切り替えようとしたその刹那


ガサッ!


と草むらから犬のような見た目の獣に遭遇した。そして僕は叫ぶ


「キャアアア!ビックリしたー!!」


て、ただの獣かよ・・・ほーれワンちゃんと言いながら冷静になった僕は距離を詰めていく、アスキル先生のうちで動物の扱いは学んだんだ、ちょうどいい、モフろう。犬モドキは少し警戒して上半身しか草むらから体を出していない後7歩でそいつに手が届くとき僕は違和感に気付いた


気付いた時にはもう攻防が始まっていた

犬モドキの草むらの隣から巨大なミミズみたいな尻尾が僕を襲う!


避けれない!僕は叩き飛ばされた、僕の腕がミシミシと悲鳴を上げている。


「魔力を腕に宿して体を守ったが・・・不意打ちかy・・・」


そんなことを言っている暇もなかった、尻尾が僕をめがけて直進してくる!

「このっ!」


二度目は何とか見切った、体は少しかすめたが、ギリギリで杖でいなした。

「先生からもらった杖がいきなり汚れてしまった事と自分の油断に少しムカつく。


3回目の尻尾が来たが次は大丈夫だ、早いが目は追いつく!カウンターで、杖に魔力を宿して尻尾を思いっきりぶっ叩く!


ミミズのような尻尾が音を立てて破裂する、先ほどの獣が尻尾を失った痛みで血を出しながら転げまわってるのを見る。


「こいつはただの獣の類ではないな」上半身のほうは僕が先生の元で暮らしていた時懐いた動物の種類に似ているが、下半身は毛をむしった鳥の様な形をしている、もちろん先ほどの尻尾も知っている限りではこの種にはついていない、おそらく合成獣キメラか、人に作られ捨てられ、野生化、かわいそうではあるが、君が僕の町に現れると危険なので殺させてもらう。


・・・出だしから最悪だ、胸糞悪い殺しをしてしまった。できる限り手厚く葬っておいたがやはり殺しは、避けたい物だ。


ぶつぶつと言っているとようやく山道を抜けた、さてこれから2日は歩かなくちゃなぁ・・・


ふと、先ほどの戦闘を思い出す、何気にあれがココにきて初めての戦い・・・命の奪い合いだったのか・・・


僕は悲しく、そうつぶやいた。





・・・これでよしっと


文鳥の小さな足にこれまた小さい手紙をつける、手紙の内容はもちろん町のやや離れた山道で合成獣キメラが出たという内容だ、早速お前を使うことになるとはなぁと文鳥を撫で繰り回す、かわいい。「じゃあ先生によろしくな」と小さな声で僕はつぶやき文鳥はバタタッと小さい音を立て空へ消えていった。


先生達がいるなら魔獣たちが寄り付かない護符の作り方も知っているだろうしこれで僕の町は安全だな、近くの村や町にも警戒するように手紙を送っておこう、この国トルンは大なり小なり魔法使いが多い国だおそらく対策はできるだろう。


文鳥が飛んで行ったあとに僕も飛んで先生の所へ帰りたくなるイメージに襲われる、がそれだけだ。まだ僕の中には炎が渦巻いている、奴を倒すまでは絶対に帰らない。そう心に誓っている、僕は誰が通ったのかも分からない暗く険しい山道をためらいなく突き進んだ。


そして1日半ほど歩いたところだろうか、もうそろそろで港の町「エーキス」に着く、というところで僕はまたまた合成獣に襲われていた、しかも今度は3匹。


「このあたりは魔獣が多いな・・・魔獣に襲われた話は何回か町のおじいちゃんから聞いた時はあるが3匹も、同時に、しかも合成獣に襲われるのは流石に聞いたことがない。

これはどこかにとても悪質な魔術工房があるな・・・


「工房」

魔法使い、賢者の秘密基地みたいなものだ、使う人によってさまざまな研究が行われている、昔は動物や魔獣、果てまで言えば人や竜も「研究対象」にしているものもいたという。その過程、生き物を命を実験にして扱うという神に反した「研究」の成果で生まれたのが合成獣ということだ。


「確か、命を扱う工房は今はもう禁止されていると聞いていたが・・・君たちはなんなの?」

・・・と敵に問いかけたところでしびれを切らしたヤツらが襲いいかかる!


僕は足に肉体強化魔法を掛け、なんとか避ける。目がこの前戦った時より冴えている、しかし前の敵なら一回避ければ攻撃できる猶予があったが今回は3匹、攻撃する余裕はあるのか?と考えたところで2匹が同時に襲ってきた。二匹は剃刀よりも切れる爪を振りかざす、僕はそれをなんとか側転で回避するがすると次のもう一匹が・・・って攻撃魔法を使う暇がない!・・・ええい魔力開放!・・・と辺り一帯を僕の魔力で覆いつくす、魔獣たちはその魔力を匂い、空気で感じ少したじろぐ


「魔力、具現化!」と僕は魔力に「重さ」をつけ敵の動きを鈍らせる。魔獣たちが、動物のような声でキャンキャンと鳴く、さらに魔力の密度を高め、魔力にどんどんと重みをつける、ギシギシと魔獣たちの骨が鳴っているのが聞こえる、そして悲しい、慈愛を求める瞳でこちらを見ている。


「恨んでくれていい、人間が君たちを自分の都合で作り出し、そして人間の都合で君たちは死ぬ。せめて、死んだ後の君らが少しでも幸せになるようにしか僕は祈ってあげられない」


僕にはそれしか言えなかった。






・・・大変だ、もうそろそろ町に着くというのに体力が・・・最近、魔力をバカみたいな使い方しちまったもんな・・・基本的に魔法とは魔力を「圧縮」させて使うものであってさっきみたいなただの「出しっぱなし」で使うものではない。いくら魔力があってもそんな風に使っていたらすぐなくなるよなぁ・・・

「確かにあなたの魔法量は膨大です、でも、あなたが外に出ても油断できる程の強さは無いでしょう」

というアスキル先生の言葉が胸に響いたところで空腹で倒れる。


やばい、腹減った・・・


しかし僕はラッキーだったのかもしれない、なんと目の前にデカい芋虫を襲うアリが数匹・・・

・・・うおおおおおお!!これを食わないと僕は死んでしまうのか!?マジで!?マジで行くのか!?


・・・芋虫は苦しそうにうねうねと蠢いている・・・



結果は想像にお任せしよう。






とりあえず僕は港町エーキスに着いた。


早速僕はご飯を食べて一言


「は~やっぱ芋虫よりおいしい!!」





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