第10話石と紙。
「カズト、今日は町に行こう」
先生が言う、喋るときに顔が近いのは今更気にする必要はない。
町。珍しいな先生が人のいる場所に自分から行こうとするなんて、卵でも切らしてたっけ?
「いいですけど何するんですか?」
「カズトの魔術属性を見る」
「はぁ~!?町で魔術属性なんて見れるんですかぁ!?」
魔術属性とは、
書いて名の通りだが自分の使う魔術、「魔法」の適性である。属性にはいろいろあって基本的にその人の性格や生まれついての天運など、まあ早い話属性は色々あってそれは人によって決まるというだけの話だ、解りきっている話をあえて説明すると意外と苦戦するものだ。でも、僕もこの世界にきて今日まで先生達にはあまり語ってもらえなかったのでこのようなあいまいな説明で申し訳ない。
「言って・・・なかったっけ?」
間髪入れず
「言ってないです」
「・・・そっかぁ」
間髪入れず
「そっかじゃない」
何にせよ今日でようやく今までの魔法の授業の日々が実を結ぶ時が来たのだ、いい結果が出たら今日のご飯はアスキル先生の好きな春巻きにしよう、酒もだ。・・・と先生に言ったらとても喜んでいた。
先生に言わせてみれば私やほかの賢者たちが教えたのだからある程度の基準は満たしていて当然という考えらしい。むむむ・・・結構期待されいてる
「少し緊張するな・・・」
と思いつつ心は踊っていた、ウッキウキで準備しているとわずか半時間ほどでお互いの準備は整った、・・・が僕のほうが時間がかかってしまった。
「相変わらず先生は準備早いですね、女の人って出かける時、準備長いイメージあるんですけど」
ほとんど当たり前、しょうがないことを話すと先生は
「へー、私は女じゃないと?」
「そうはいってないですよ!」
後でカギと財布と髪の手入れしかやることがない。と先生は笑い、話した。
町に行くとき僕は馬車・・・とは言えないものに初めて乗った、「馬」車と言えないのは、通常馬が大きい荷車を運ぶものだがこの、馬車モドキ・・・といえばいいのか?は馬ではなく「地竜」と呼ばれる魔獣に荷車をひかせる、名前こそ竜とついているがこの世界の人から見るとこのサイズの地竜は大きい地を這う鳥の様なものらしい地竜車とでも呼べばいいのか?と独り言を言っていると先生は「竜車」というのよ、と笑って教えてくれた。
竜車の中で先生は竜を使う乗り物についても教えてくれた、どうやら空を飛ぶものもあれば、岩を砕くために使われるものもあるらしい。竜と言うのは元々とても強い魔獣で過去は戦争によく悪用され人をたくさん殺した、が彼らは人間たちが交配させ今や人間がいないと絶滅してしまう種もいる。笑って教えてくれる先生だったが少し感慨深く「あなたがちょっと前に話してくれたカイコみたいな存在に竜はなってしまうのかもね。」と寂しそうに話した。
「・・・竜は幸せなのかしら?」
少しためて
「解りません」
「生きているだけで幸せ、なんて言えるのはきっと、他の人の物を奪う側になり続けた人だけが言える事なのかもね」
少しためて
「そうですね」
軽く話し込むと僕と先生はいつの間にか町についていた、先生とは気が合うとは思っていたがまさかここまでとは・・・恐ろしい。
「いま私の事怖いとか思ったでしょ?」と耳元でつぶやかれたので
「いい意味でですよ!」と照れながら返した。
「じゃあ僕は早速属性を見に行くので先生はどうします?」
どうせ先生は食べ物を買いにだらだら歩くか、どこかで座って本を読むくらいしかやることがないのはわかっているが一応聞く。
「お腹すいてないしそこらで本でも読んで・・・あ。」
「本忘れた。」
間髪入れず
「カギと財布しか持ってこないからですよ」
なんだかんだで先生もついてくることになった、まあ僕としてはうれしい誤算だ、一番勉強を教えてもらった人にその結果を見てもらう。緊張はするが、こうなると僕は逆に燃えてくるほうだ
少し歩くと目的の場所についた魔術店だ、冒険者やらの肉体的に自信のあるやつらは「ギルド」というところで魔法石を手にかざしてぴかーんとやってどーんで自分の才覚を図るらしいが先生は賢者、総称でいう「魔法使い」僕はその弟子なのでこういった、冒険者とは違う方法でやるらしい。まあ基本は同じく魔法石でどーんでぴかーんらしいが。話を思い出しつつ魔術店に入る
と同時に周りが少しざわつく。
なんだなんだ有名人でも来てるのか?と思いひそひそ話をよく聞こうとする、いや聞こうとしたが邪魔された、しかし僕の知りたい情報は手に入れた。
「アスキル~!久しぶりじゃん!」
とそこそこ可愛いが趣味じゃない僕と同じくらいの年の女の子が大きな声で叫ぶ。
「うるさいなぁ~相変わらず、あ、なんかお腹すいてきた」
マイペースだな先生・・・
「町の英雄が何しに来たのー!」
と大声で女の子が・・・って先生そんな名前で呼ばれてたの!?
先生はお腹すいた早くご飯が食べたいと言いそうな顔で
「うん、昔、はやり病の薬作った、全員は助けられなかったけど・・・」
少し話すと女の子が自分のやったことの様に自信満々で
「すごいんだよ~このあたりの魔術師は全然精製できなかったのに・・・」
先生が謙遜しているのは僕の目にも明らかだった、先生はおそらくこの話で誇ることよりもこの女の子の大きな声で視線が自分たちに向いている事のほうが気になっているのだろう。
「私だけの力じゃなかった、他の賢者さんの協力がなければ・・・」
「その賢者様たちを来てくれるように説得してくれたのはアスキルじゃん!」
「やっぱ私の王子様~!」
は?・・・
「先生、王子様とか言われてますよ」
「ああ、小さいころちょっとね」お互いものすごく冷静にそう言った
話を濁して「今回は魔術属性を見に来た」と先生
「アスキルの魔術属性は「風」じゃないの?」
へー、先生の属性は風だったんだなんかかっこいいなぁ・・・
とこれから判明する僕の魔術属性に結構な期待をしにやける。
「いや、隣の、」
彼女が「王子様」の隣をふいと見る、「カズトです」頭を下げる
ちょっとばつの悪そうに
「ああどうもどうもそっちのほうね、分かったわ」
などとものすごくドライ。男の俺にはこれっぽっちも興味ないのか・・・ガチだな、こいつ。
女の子はゴソゴソとカウンターの奥から
ころりと透明な石と段ボールくらいの厚さの平たい木を置いて確かにこういった。
「じゃあこの石を動かしてみて」
周りはあの村を救った英雄アスキルの初めてとった弟子(後から聞いた)が魔力とその能力を示す魔術属性の記章となかなかに注目度は高い、その中で僕はこう言った。
「は?、石とか魔力でどうやって動かすの?冗談言うんじゃないよ(笑)」
シーンと周りは静かになった。
女の子を見る、まるで時間が固まったかのように絶句している。
僕はすぐ隣の先生を見る、信じられないくらいビックリしていたその先生の顔は初めて見たなぁ・・・
「は?」
「僕が間違ってるの?」
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