第9話先生

光っている唯々眩しい、目をつぶる、そうしたらまっくらだ。


真っ暗の中この一日に起きたすべてのことを思い出す、滝本のこと。妖精のこと。そして今僕の身に起こるこの身を包み込む光のこと・・・きれいな光だ。しかし次には滝本の死、妖精の最後の言葉がきれいな思い出を汚す、いや侵食する。


「殺す」


暗い暗い闇底から誰かが吠えている、「苦しい」「痛い」だとか「憎む」「許さない」


気付くのが少し遅れたが理解したこれは恨みの言葉だ、この人物は誰かを恨んでいる。・・・のか?


その声を聴いているうちに脇腹あたりが痛くなってきた、この人物のつまらない恨み言を聞いている内にほんの少し限り同情しまい吐き気を催してしまったのか、と自己分析。


その声はどんどん近くなってくる、何かがおかしいと気づいた刹那吐き気は強まり痛みも強まる。

と、共に憎悪、憎悪憎悪・・・僕は誰かを恨んでいる?その次に痛み痛み痛み。僕はつぶやく


痛い


痛い


許さない


殺してやる


痛みは強くなるばかり。


涙も流れてきた。


いたい


いたい



暗闇の中ようやく気付いた、コイツは自分だ。


目を開ける・・・その目は憎しみに包まれていた。




「アーリア」

そう呼ばれるこの世界は様々な人と動物と魔物と魔獣が生きる世界、昔は人族と魔物の激しい異物感戦争が何度も何度も行われていたらしいが現在は沈静化してとても長いらしい。しかし差別貧困はいまだ終わることはなく、長い間膨れ上がったその怒りはやがて爆発するのではないかという不安は人々の心の中に深く食い込んでいた。




「ここには慣れた?」

と真っ黒の長い髪とメガネが特徴的なやや長身な女性が僕に向かって優しく微笑む。


「ええ、慣れましたよ、6ヶ月もいますからね、もう「ここ」には」

僕は、そう言って嵐の後、家の周りに落ちていた大量の枝を持ち上げながら言葉を返した。


「ここ」というのは、この背の高い女性 僕の師匠にあたる人の、道外れのやや大きめの、木で出来た小屋の事だ。僕はもう、先ほど言ったとうりだが半年もお世話になっている。


僕はこの世界の中で4番目に小さいとされる国、「トルン」の森中に居た、そこで相転移魔法の莫大な、見つけてくれた人たちの話によれば「過去類を見ない強力な魔力反応」を察知して重い腰を上げ探索に来た人たち”賢者”に見つかったというわけだ。


「いつまでもいてくれていいよ、君の話は、興味深い」


賢者というものは主に探求心が人並み以上の物に職業適性があるらしく、みんな、それで異世界から来た僕のことに興味津々だ、ちなみにどれくらい興味津々かというと僕が見つかった後、今後の扱いについて「トルン」中の賢者達が会議しあったところ、ごく少数一派に研究のために僕の体をバラバラにして調べてはどうか?という意見が出た位興味津々だ。ああ恐ろしい。


しかし僕がこうして生きて、様々な魔法のエキスパートから勉強を教えてもらえるのもまた賢者のおかげ、そして僕が見つかった時に初めて、僕の身を心配してくれたこの人「アスキル」という女賢者にお世話になっている。僕みたいな、なにもない身分がこんな何不自由ない生活を送っているのはこの異世界から来たというめちゃくちゃ怪しい人物の身柄を魔術の実験体にするでもなく、奴隷として扱うわけでもなく、それどころか親身になってやさしく僕を引き受けてくれたアスキル 「先生」 のおかげとしか言えない。


・・・が、半月に一回はケガした森の動物拾ってきてしばらく僕に世話させるのはどうかと思う。おかげで僕は動物を助ける姿を見たこの辺りの森の動物達に好かれてしまった。まあ全然OKなのだが、モフモフしてるし。猫みたいなのもいるし。


とりあえず今日の雑用は終わった、あとは・・・今日の教えてくれる人は・・・先生だったな、と思い出す。そして


「それでは今日も話してくれ」と先生が一言。


「え~?どうしよっかな~?」と今日の雑用、洗濯物の多さでちょっと不機嫌になった僕に遊ばれる。


「生意気、じゃあ今日は授業・・・しなくていいの?」と返される


僕は特に気の利いた返事もできそうにもないので謝り、話す


「日本ではカイコといわれる虫が養殖されていて、人の手から離れると自分だけでは生きていけないんです」


「・・・詳しく話してくれ」と15分程昔ネットで見た知識を語り先生は興味深くうんうんと頷く


・・・こうして先生は授業を始める前に僕に地球、日本のことについての知識を聞く。先生はどうにも等価交換という概念が好きらしい。自分が教える魔法の知識と僕が持っている異世界の情報との等価交換。きっと他の世界では国家錬金術師になっていたのではないだろうか?


「国家錬金術師?それはなんだ?」


・・・どうやら口に出てしまっていたらしい、そろそろ授業を始めてしまいたいので、荒っぽく


「漫画ですよ漫画!」


「まんが?ああ、前話してくれた大衆向けの絵本か!どういったまんがなんだ?私みたいなのが出るのか?」


あ~もう!

「はいはいはい終わり!今日の分は話しました!今度は次の授業の前に話します、今度は先生の番!」


・・・しぶしぶと先生と、僕、カズトは「魔法」の授業を始めた。

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