第8話そして、異世界へ。
大きな大きなカミナリを発生させた張本人とは思えない風袋でエスキテルはつったっている。と、不意にキョロキョロと首を回し状況をある程度確認したのか、
「何か大きい光が見えたと思ってきてみれば、私の部下たちが武器すら持たない小僧と小妖精程度に手こず・・・いや敗北するとは。中々に感無量である」
と一言。首をコキコキと慣らし面倒臭そうに言った。だが彼は少年、カズトの顔を見て少し違和感を感じた、そしてこう心に問う。私は生まれ持っての支配者だ,その支配者が少年に眠る微かな精神力 いう成れば「心の力」に気付いてしまった、「こいつは何かを成し遂げてしまいそうな空気がある」と。
思った刹那、手に持つ槍を少年に向かって投合していた。彼の投げた槍は霊鳥の鳴き声を引き裂いたかのような音をたたてガズトの心臓めがけ真っ直ぐに突き進む。しかしカズトには見えないし聞こえない,それどころか自分はエスキテルの一挙手一投足を全てこの目にとどめた気でいる程「反応」できていない。打ちはなったその矢は何も邪魔が入らなければ間違いなくカズトの心臓を貫きつつ 中心から四肢は裂けていたのではないだろうか、そう”邪魔”さえ入らなければ_____
「させないプリね___!」
一言、妖精の手に光が走りカズトのまえに光の壁ができると
メキシャッ!と光の壁に亀裂が走り同時に槍が突き刺さる己の心臓の目の前にそのような事が起ったのだ、ガズトはとても驚き足が軽くすくむ。
「な、にが起った・・・・!アイツがいきなり動いて・・・?」
「話している暇はないプリ!下がるプリ!」
突き刺さった槍から電気が流れ壁を完全に破壊するが、そこに息をつかせない連撃が待っていた
先ほどまでより大きな光の壁を大妖精は具現化させる、しかしその巨大な壁すら破壊するほどもの槍が突き刺さる。大妖精がこの戦いの終わりと勝者を予期した瞬間叫ぶ。
「早く進め!カズト!ここはもう持たんプリ!」
カズトは感じる、大妖精はここで死ぬつもりだと、自分にすべてを託して、未来を託して今、死に場所を見つけたのだと。カズトは解ったうえで何も言わず・・・いや、言えず空間転移魔法の発動場所に足を進める。
「すまん!」
置き言葉を残しながら。
・・・しかしエスキテルは逃がさない、なぜ自分がこの少年を、少年程度を止めるために力を、魔法を使わなければならないのか、それが解らないまま、しかし大妖精が命を捨てて守る其れを破壊するという判断を英断だと確信する。が、守りに入った妖精族、しかも「大妖精」ともなると攻略するには骨が折れる、さて、この少年を止めるためには何をすればいいのか?
思いついた答えは悲しいが図らずとも先ほど死亡した自分の部下、半端者たちと同じ手段だった。
「小僧ォ!!これ以上進むならこの小娘の死体を爆破するっ!!」
と寝ている滝本を指さしそういった。
「聞くなぷり!!カズト!!」
妖精が大きい声で願いともいえる、いや懇願ともいえる悲痛な声で叫ぶ。
カズトの中には滝本がいた、滝本がすべてだった、生きる理由がそれだった。たとえ妖精が心を尽くしても・・・カズトの足は止まった。
「・・・すまないっ・・・!!僕は・・・無理だっ・・・!!それだけはっ!」
妖精は優しく素に戻った声でこう言った。
「いやカズト、お前には酷な話だったプリ。ここから先僕にはどうなるかはわからない、しかし僕には見える。アーリアに行く君の姿が・・・」
大妖精の「壁」が破壊され槍が大妖精の小さい体に直撃する。
妖精は遺体すら残さず、綺麗にこの世から消えた。
「ぐっ・・・くぅ・・・」
僕は自分がしてしまった行動と結果に愕然とする。
そして、エスキテルは冷静に、僕に興味を失ったかのように、僕の前に立ち
「ふう、もうよいぞ、小僧。ここで、この小娘と共に死ね。」
荒れた雷が僕の体を軽く撫でる、撫でた、たったそれだけなのに体中に痛みが走る。
「私の雷は痛いか、だが時期に痛みも消える」
僕は自分の不甲斐なさと、滝本に関する怒りと絶望、妖精の死。複数の交わった怒りと憎悪の目でソイツを睨みつける。そして宣言する。
「僕は!貴様を殺しすべてを奪い返す男だっ!何度倒れても何度死ぬほどの痛みを背負ってもどんなに苦しいことがあっても!」
「お前を絶望の淵へ叩き落すっ!!」
「私を前によく言った、だが、死ね。」
電流が僕の心臓まで迫ったその瞬間。
僕の足の下に魔法陣が浮かび上がる。
僕の胸を突き刺す予定だった雷がはじかれる。と、ともに奴の顔が歪む。
それはエスキテルが先一刻ほど前にみた魔法陣と同じであった。
「・・・空間転移魔法・・・っ!!・・・おのれぇ「またも」かスキルスの血ィ!」
エスキテルは叫ぶ。それもそうだろう、自分の天下を別つ最大の栄光を無下にした氏族がまたも自分の益にならないことをしでかしたのだ。
エスキテルが叫び雷を乱雑に発生させる、僕は自分を守ってくれた、おそらくは「番人」という恩人の顔も見ずその場から,いやその世界から「消えた」。
心の中に滝本の最後の笑顔を留めながら・・・
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