第10話

小森の帰り道。暗く、人通りの少ない道を歩いていく。

私は、いつもの自動販売機で、温かいココアを買う。

よく振り、開けて、飲む。

「……はぁ」

この温かさが、体を駆けていく。

ベンチが近くにある。そこでひと休み。

「…………何だかなぁ……」

今日も思い返す。今日を思い返す。

自分の人生が、なにより大切であると。そう、思えるようになるために、自分の意識から変えていく。それは、どんなに難しいことなんだろう。

そう思っていたあの日の答え。

森高くんと、見つけることが出来た。

人との接し方を変える。それも一つの変え方。でも違う。もっと簡単で、それでも気づきにくいこと。

「気持ちをしっかり……かぁ」

それにしても、あんな人だったなんて思わなかったなぁ。普段、一人で静かに過ごしてるんだと。

「……どうなるかなぁ」

飲み終わったココアのボトルをゴミ箱へ捨てる。

「さぁ、帰ろう」


「ただいま~」

廊下から足音がする。

「お帰り~、今日もお疲れ様」

母親、四染がエプロンで手を拭きながらやって来た。

「うん」

「今日も、学校は楽しかった?」

「……うん」

「よかったわ……。最近、いじめがあるかなぁ、って思ってたところなの」

前から怪しまれたのかな。いじめを受け続けて、それでも心配をかけさせないために黙っていたのが……、逆に疑われたのかも……。親は、ちょっとの変化も気にする。そうなら、いや、そうであるから聞いてくる。親はすごいなぁ……。

「どうしたの固まって。具合が悪いの?」

感動してたら、固まってしまった。

「ううん、何でもない!」

「そう。ならよかった」

階段を上る娘をみて、

「何か……あったのかしら」

娘の変化を喜ぶ母の姿があったのだった。


今日のご飯はなんだろう。

「今日はハンバーグにしたわ。パパが来るまでに支度しましょう」

「うん、ママ!」

私は、この家庭が好き。弟とか妹がほしいとか思うときがあるけど、やっぱり、この家族と一緒にいるのがとても楽しい。

「ただいま~!」

スーツを着た父親が帰って来た。

「お帰り!」

「おう。おっ!美味しそうじゃないか、ハンバーグ」

「パパ、早く支度して。ね、食べよう?」

「おうおう、了解よ」


「さっ、食べようかね」

「戴きます」

挨拶をし、皆ハンバーグを食べる。

「うん、美味しい」

「ああ、美味い」

二人の良い評価に、

「ふふ、ありがとう。味噌汁もあるからね?」

父親は話題を投げる。

「なあ、四霜。今日は、やけに元気じゃないか?何かあったか?」

「ううん。なんでもないよ、うふふ」

思わず笑みがこぼれる。あの人は支えてくれる。

「なんだなんだ?怪しいなぁ、教えてほしいなぁ、パパに」

「ふふ、秘密」

「なぁ、秘密。気になるなぁ?よる眠れないかもだなぁ」


私一人じゃどうにもならなかった。

「よかった」

思い返す。湯船に深く浸かりながら。

どうやって、なくすんだろう?


「なくす方法、なくす方法……。っていうかは、遠ざける。いつまでかは分からないが……、やるか」

森高は、あれらを思い出す。

意識は、水のなか……のような不思議な空間。

久しぶりか?

泡から覗く、あれら――いじめグループの行動。

なかなか都合のいい時に起こった、これに森高は喜んだ。

夜遊びか……。阿保な……。

髪の長い女子が財布を覗く。おそらく、金がないのだろう。

すると、隣の女子が何か話している。でも、表情が悪い。何か思い付いたようだ、金を増やす方法だろう。

それに賛成する者は全て。

なかなか襲わなかったが、いじめすぎることを考えてのことか……?

「頭、キレすきだろ?」

そうして、彼らは別々の行動をし、自分の意識は泡より戻る。

ふぅぅ。

案はある。明日が勝負か?早めに言わないとな。



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