第9話

 森高くんの話によると。

 ひとつ。人との関係が悪くなったときに起こる喧嘩。でもこれは、人がいるならよく起こることなんだそう。

 ふたつ。人の集団から無視されたりするもの。これは、世間からすればいじめに当てはまるもので、他にもあると言う。いい意味か悪い意味かはともかく、目立つ人が評価され、目立たない人は評価はされない、というのも、これに当てはまると考えてるんだそう。

 みっつ。インターネットとかにその人の誹謗中傷。犯罪。

 よっつ。暴力などの外傷ができるいじめ。これも犯罪。

 三と四は、今時は陰湿化、見えにくくなっている。

 その内、私の場合は、二と四に近いそう。

 いじめって、自分に起こるなんて思ってもなかった。だってそうでしょう。テレビに報道されたり、ドラマの話題にされたりで自分もいつ、起こるまでわからない。

 でも、なった。狙われた。初めて、死んでしまった人達の気持ちがわかったかもしれない。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。あの時は、死んで楽になろう、それのことしか頭に無かった。あの時、彼が来てくれなかったら。私は運がよかったかもしれない。

 これは喜ぶべきなの?

 死んでしまった人達には運がなかった。

 それは失礼?

 だから、私も死ぬべき?

 今の私は、気づけない。わからない。理解も整理も出来ない。

 救われていいのかな?


「……の、……あ、の……?」

 誰かが呼ぶ。

「……あぁ……。」

 目を開ける。

「……は……っ」

「……よくわかるよ。受けてない分際で」

 どういうこと?なんの話だろう?

「そっち……。いじめを受けていなくなった人たちを思っていたよね?」

 そうだ……。いじめについての話を聞いていたら、気が遠くなって、夢をみた。確かに思った。なんでわかったんだろう?

「なんとなく」

 そして、忠告。

「人を想う気持ちはいいものだと思う。だけど、他人の命と自分の命は決して同一ではない。他人が殺された、だから自分も、は頭の悪い人間がすることだと思うよ。その不幸を学び、今の人達はよりよい、そして長く、幸福を感じながら、時に辛く、助け合いながら生きる。これを大事にしないと、ね。気持ちはしっかり」

 私はなんて……。命を投げようなんて……。

「……ありがとう。お陰で気がつけた。もう、諦めない」

 安心したよ。そう、安心感のある顔の森高くん。

「そう。死ぬのは、自分の人生で悔いが無くなったとき。あ、でも、それが理想ってだけだから……何か年寄りっぽい上に偉そうだなぁ」

 発言を省みて、気づく。彼はもう、知っているのかも。

「いいと思う。私は……好きよ。そういうところ……」

「ははっ、まあまあ、うん」

 普通にあしらわれてしまった。冗談を、といった感じにされちゃった。

「すぅぅ……、……はぁぁ……」

 何だか、肩の荷が軽くなった、気がする。

 気づいてくれるのが、こんなにも気持ちがよくて、何かがスッキリとするのだろう。

 でも、

「そう。やっぱり、こっちよりとても頭がいいなぁ。尊敬するのはこっちの方。あっ、そうじゃなくて。察しの通り、人々が気づけるかどうか、それはわからない。察しの悪いのもいれば、よいのもいる。悪いがほとんどだけど」

「うん。よくわかったよ」

 日は沈んでいる。暗くなってしまった。

「そろそろ、帰ろうか」

「うん……。じゃあ、また明日ね」

 手を振って、互いに別れるのだった。



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