第8話

 放課後、小森を待つ。

 彼女は森高を見つけると、やって来た。

「お待たせ」

「うん、じゃあ、上に行こうか」


「聞きたいことがあるんだ」

「何?」

「そっちはあれらに何されてるか。そっちなりにどう思う?」

 いじめは理由があるかないか。自分からしてそうでないかそうであるか。聞くまでもないと思う。あの飛び降りようとしたところを見たのだから。ただ、それだからと鵜呑みにはしない。本人がいじめられていると思うなら、改めて聴く。

「うん……。私は、弱く見えてると、思う。あの人たちは、クラスの中でもだから、ああしてくるんだと……」

「うん。ああしてくるとは、つまりは、いじめ?」

「……うん。私は、やっぱりいじめられてる。だから死にたくなった」

「うん」

 それはそうだろう。死にたくなるほどのいじめを本人は受けた。自分だったら?

「でも、振りかえって考えた。よくよく考えて考えて、森高くんに言われたあの時から。あの時、死なずに済んだの。私は、いじめを受けたくない。他の人にも受けてほしくない。だから……」

「うん」

「助…けてね…。お願い、します……」

「よかったよかった。わかったし了解したよ。鵜呑みは良くないからね。勝手に助けることも」

「……うん」

 森高は立ち上がる。

「じゃあ、突然だけど、根本的解決やそっちの心構えに関わるかも?しれないいじめについて話してみようか。聞く気も興味もないと思うけど」

「いいや、私は話したい」と、うなずいて同意する。

「じゃあ、持論なんだけど、今そっちが受けてるやつはどんな類なのかと言うことだけど、何だと思う?」

 質問に対して、顎に手を当て考えると動作をする。

「んー……。私は……」

 考えている最中、森高は何かに気づいたように、はっとなる。

「どう、したの?」

「ごめんよ。あのー、ね。そっち自身を振り返らせる。これって、遠回しに分かれって言ってるみたいで……。こっちの質問が悪かったなーってよ」

 小森は手を振って、それを否定するように、

「いや、いいよ全然。私はいつも、こうだから。むしろ、自分を見直す、チャンスだと……思う、から」

 森高は困って腰に手をやり、

「いや、本当に、悪い…と、思ったから。なら改めて、種類をこっちが言うから」

「うん」

 咳払いをひとつし、

「いじめの種類って、三、四つ位なんだって。で、あのー、ひとつには、集団なら起こり得る軋轢。要は喧嘩やら仲が悪くなるとかによって起こるもの」

「うん」

「二つ目には、仲間外れにするとか、集団のいつもの通じあいによるもの。脱線するけど多分、いじめじゃないものもあると思うよ、これは」

「例えば?」

「うん。真面目に生活している優等生……は、勉強面では素晴らしいので、どうかはよくわからないとして。態度がよく、先生に対して敬語を使い下手によくまわり、よく言うことを聞き、真面目に生きている、勉強は普通、運動も普通の静かな真面目君がいたとする」

「かなり、真面目なんだね」

 森高は頷いて応える。話は続き、

「その真面目君のクラスには、六人のよくしゃべる男の集団とか、女のひともいるとする。その集団は、先生とよく話し、敬語は緩く、タメ口でもははは、と笑って注意されず、文句を言っても忘れ物をしても言われず、授業中こそこそ話したり、違うことをしたりするものたち」

 そして、森高は座り、

「急だけど、この前者と後者。どちらが教師からの評価が高いか。わかる?」

「……ぅーん、あっ……!」

 目を開けて、

「わかった!後者のうるさいグループ、よね?」

「その心は?」

 そう、普通なら前者。とある真面目君に決まっているが、わかりきったことは質問しない。ね?自分が最も聞きたいのは答えの理由。これにこそ意味がある。いじめには原因がある。つまらない理由もあると思う。何か嫌だから(?)とか、私より優れてるとかとか。ああ、後は衝動も。なにかなければいじめにはならない。長々となったけれども、さっきの質問が無関係とは言えない。

「何故なら、前者は暗い。反対に後者はうるさいって表現しちゃったけど、言い直したら《明るい》》ってことかなって。今の世の中は対人を重視してると思うから。社会はそうだけど、教師は基本的に明るい人を主に見ているし、明るいから馴れ馴れしくても怒らない。怒ることを忘れているかなぁって」

 うんうんと、森高は感服したように、頭をたてに降り続けた。

「そのとおり。社会も人間も、真に必要な人材に目を向けていないだろう。評価はされない。よくわかったね」

 当然かのような顔をして、

「だって、いじめの話だよね?」

「んまぁ、そうだけどね。二択を当ててほしいんじゃなくて、理由が聞きたかった」

「ああ……」

「じゃあ、他にもあるんだけど」





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