第4話

「痛い痛いっ……やっぱり痛てぇっ!……はぁ」

 助かった、自分は。大事なのは身を投げた彼女だ。

「大丈夫ですか?…ッ!」

 制服がビリビリに破けてる。ちょっと肌が見えて焦ったぁ。

 いやいや、「大丈夫ですか?」

「うっ……」

「良かった……。はぁあ……」

 気が抜けて上を見れば、屋上から不機嫌な顔がある。

 追ってこないといいが……。

 ようやく、彼女は起きた。

「大丈夫で……」

「どうしてッ!ねえ、どうして助けたのっ!」肩を掴み激しく揺らしながら問おてくる。

「いやぁ、どうしてって言われても……」

 助けたかった訳じゃない。体が勝手に動いたんだ。


 自分はあの時戻ろうとした。だが戻らなかった。彼女が脚を外に出した瞬間に、全力を越える全力で走っていた。気づけば自分も落ちていた。あの時ばかりは流石に死んだなとか思ったくらい。それでも生き残ろうとしたら、たまたま木があって、それが()クッションの役割をしてくれたおかげで、今に至ると。


 そう、言いたいが……。マンガじゃあるまいし、が信用されないだろうからなぁ。そうこう考えているときに、彼女からとんでもない言葉をきいた。

「あんたが……あんたが、助けるから……私……死ねなかったじゃない……」

 泣きながら、そう言った時、森高は果てのない憤りを感じた。

 泣いている女子を責めるほど加虐な趣味はない。ただ放ってはおけない。放ってはおけなくなった。

「私は……必要とされてないから……」

 森高は、舌打ちをした。

「必要とされなかったら死ぬのか?そんなわけないだろ!」

 突然の強気の口調に驚く彼女。しかし森高は彼女の口出しを勢いで制し、勢いによって出来た説得力ごり押しで話す。

「死ぬぐらいつらいのか?なら死なない生き方にしろよ!死ぬしかないなら、それは人生の見直しをしろという合図だろっ!簡単に死ぬなよっ……!」

「……わかってる……」

「ぇ?」

 小声なんでわからなかった。

「わかってるわよ……!でも、世間は甘くないの。それでも……死なずに楽しく……過ごしたい…!」

 森高はため息をついた。つらい時のため息じゃない。単に嬉しかった。

「やっと、言いましたね。その希望は自分が何とかします!」

 その言葉を聞いたら、彼女は大粒の涙を流した。彼女の苦しみが涙を見ればわかるほどに。

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