第3話 異常気象の巻

「昨晩、学校に二人組の男が侵入しようとしたようだ。二人が置いていった荷物にはバナナの皮が大量に入っていて、悪戯目的だと思われる。みんな、気をつけてほしい。」

朝のホームルームで先生がそう言った途端、クラスはざわめいた。犯人は榎田と椎名なので、二人はドキドキである。普段は冷静な顔の榎田は顔がやや青かったし、普段はうるさい椎名もその日はおとなしくしていた。


結局、バナナの皮作戦も失敗してしまった。不審者が学校に侵入しようとしただけでは休校にはならないらしい。二人はこの作戦を実行するのには懲りてしまったので、また別の作戦を考えることにした。休校への執着はものすごいのである。


「これより第三回秘密会議を始める。」

恒例になった空き教室でまたしても放課後、二人は話し合いを始めた。

「まずは前回の作戦についての反省からだ。」

榎田は言った。

「あの作戦はリスクの割に成功率が低すぎた。」

「それな。」

椎名も同意した。

「休校にするためには何があとはできるんだろうな?」


そこで二人は休校になる時のパターンを考えてみることにした。そうしてあがったのが、大雪・台風だった。

「さすがに台風を巻きおこすのには無理があるんじゃないか?」

椎名は見た目によらず現実主義者だったようだ。

「それじゃあ、雪にするか?」

そう言って榎田はニヤリと笑った。


榎田の作戦はもはや雪ではなかった。

・・・消火器の中の粉を撒き散らすというものである。

「ちょっと前にニュースで見なかったかい?」

榎田は言った。

「消火器の中身が外に出たことによって、都市が雪が降ったようになっていただろう。あれは滑ったりしない点で雪より安全だし、学校にとっては大迷惑だ。僕たちの作戦にはうってつけだろ?」

「確かにな。」

こうして、二人は「大雪」をおこす作戦を実行に移すことにしたのである。


夜に学校に侵入するのには懲りたので、今度は二人で早朝の学校に侵入することにした。今回は、学校の警備システムを徹底的に調べたので、すんなりと中に入ることができた。


「よし、やるぞ。」

「おう。」


二人は消火器に手をかけた。作戦の成功を間近に、二人はかつてない高揚感を覚えていた。

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