第2話 バナナの皮の巻

「椎名参上!!おはよう、榎田!!」

学校を一週間も欠席したとは思えない元気で椎名は榎田に話しかけた。

「椎名くんは病みあがりなのではないのかい?」

「もう、ばっちり元気よ。」

そう、椎名はインフルエンザにかかって出席停止を食らっていたのだ。

「あとでノート、写させてくれ。」

「はい、これノートのコピー。」

「サンキュー!」

「いや、君のインフルエンザは半分僕のせいだから。」

榎田がそう言うのも無理はない。前回のバイオテロのために行った病院で椎名は菌をもらってきてしまったのである。

「でも、病院にマスクをせずに行くとは椎名くんも迂闊だったね。」

「そういえばおまえはマスクしてたもんな。」

「三枚重ねでね。」

「・・それ、暑くね?」

「だって、病気になるのはイヤなんだもん。」

「けっ。」


結論から言おう。休校大作戦は失敗に終わった。成果としては椎名がインフルエンザにかかっただけである。二人は苦労した甲斐が全くもってなかった。


「これより第二回秘密会議を始める。」

そんなわけで、二人はまた放課後の空き教室に集合して会議を始めた。前回にもまして大真面目な顔をしている。

「まずは、前回の反省からだ。」

榎田は言った。

「この前は窓を開けて換気する可能性を考えていなかった。それに、菌という見えなくて不確実なものを用いてしまった。」

さらに榎田は続ける。

「じゃあ、今回は物質的なもので休校を狙うしかないな。」


「はあ⁉︎バナナ⁉︎」

「いい案だと思わないか?」

椎名があげたアイディアは凄まじいものだった。校舎中にバナナの皮を撒く、というものだった。

「俺、インフルエンザになって一週間家に篭りっきりだっただろ?あれって熱が下がっても何日か学校行けないじゃん。その間、暇で暇でさ。マンガをよんでたわけ。」

「それで、そのマンガにバナナが出てきた、と。」

「そう。バナナの皮で滑って転ぶんだよ。」

「そう上手くはいかないと思うけどね。」

「だから、1つじゃなくてたくさん撒くんだよ。」

椎名の考えはぶっ飛んでいた。さらに椎名は続ける。

「たくさん撒いたらさ、掃除だけでも授業は潰れるだろ。それに、誰の悪戯かわからなかったら学校側としても危険視して休校になるんじゃないか?」

「あり得る。」

そこで納得してしまうのが、榎田である。

「それでは、休校大作戦第2弾、いきますか。」


まずは二人はバナナの皮の用意から始めることにした。これが案外大変なのである。

最初は二人で大量のバナナを食べて皮を用意しようとした。しかし、二人で合わせて50個バナナを食べたところで限界を感じた。

「これ、無理じゃない?」

「だな。」

ということで、二人はどこかからバナナの皮を入手する方法を考えた。そして、結論。

「学校給食のゴミを持って来ればいいんじゃない?」


高校生ともなると給食はでない。だから、二人は小学校か中学校に侵入して、バナナの皮を入手することに決めた。無論、学校に許可を取るのは困難なので生ゴミを漁るしかないのだが。

二人はなんとかして給食にバナナがでる小学校を発見した。そして、バナナがでる日、そろそろと小学校に侵入してバナナの皮をゲットすることに成功したのである。側から見たら大馬鹿だ。


次に学校にバナナの皮をばら撒くというミッションが待ち構えている。二人は夜にばら撒くことに決めた。二人は大量のバナナの皮をもって夜の校舎に潜入しようとした。


しかしここで大問題が発生した。

びー、びー。びー、びー。

「あー、やばいな。」

「おい榎田、これ、なんの音だよ?」

「うん?アラームの音っていうのかな。」

「アラーム?」

「門を飛び越えて不法侵入しようとしたからだね。やってしまったなぁ。警備員、くるよ。」

「おい、やばいだろ。逃げるぞ。」

そう、学校の警備について二人は失念していたのである。

「おい、君たち、なにやってるんだ。」

不意にライトで照らされた。警備員のおじさんがやってきたのだ。

「おい、逃げるぞ。」

「おう。」

「こら、待ちなさい!」

二人は間一髪のところ逃げ出した。慌てて逃げたので、バナナの皮はおいてきてしまった。


こうして、二人の新たなる計画は失敗に終わったのである。

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