あの御方
◆(三人称)
しかし、一時間が
パトリックがその男を見た。相手の名前を知らなかったものの、二、三度屋敷内で見かけたため、
しかし、男からただならぬ視線を感じ、念のため、そばのロイに確認を行った。『
「二十代なかば男性、
知らない人物を見かけるたびに行っていたので、ロイは
しかし、部屋に足を
男――マイケルの体に乗り移ったサイコは、近くのイスを持ち上げた。そして、ギョッとしたパトリックに向かって、思いきり投げつけた。
軽い
「おとなしくしていたら命だけは
サイコは
「あなたが
パトリックの
「さて、ヒプノティスト。何か、
「……申し開き?」
「
意味がわからず、パトリックは
この力の
ただし、能力の使用中は、
「何もないの?」
「言っている意味がわかりません」
「それなら殺すしかないけど、それでもいい?」
パトリックは
「熱い! 熱い!」
まさしく焼けるような痛みから、サイコは床でのたうち回った。
「逃げましょう!」
それを
「……ロイは
「違います。
目を丸くしながら尋ねたパトリックに対し、ロイはしたり顔で答えた。
この使用方法はとっさのひらめきでなく、以前から気づいていた。ただ、ウォルターなどから
「人間の体って、なんて
よろめきながら立ち上がったサイコは、前かがみのままフラフラと歩き、何とか部屋の戸口まで行った。そこで、ある二人組と
大きな
サイコがコートニーの片腕を
「ねえ、あなた。私の新しい『器』にならない?」
「……えっ?」
コートニーは
「その子から
「ダメよ、この子はもう私の物だから」
そう言ったサイコの姿が、コートニーもろともに消えた。その場にいた全員があっ気にとられるほど、
〈
◇
ただ、まだ争うような声が
「おっ、無事だったか」
「能力者の女はどうしたの?」
「死んだ。……たぶん」
「はっきりしない答えだな」
「
「やっぱり、はっきりしないわね」
「あと三人ぐらい捕まえたが、
戦いは僕らの勝利で終わった。でも、本当に女は死んだのだろうか。あれだけ苦しめられた相手が、ああもあっさり死ぬのはどうも
言いようのない不安がモヤモヤと胸にわだかまった。もう一度、
『ウォルター、助けてください! コートニーが連れ去られました!』
『コートニーが……? 誰に?』
『知らない男です。私の目の前で
『消えた……。それはどこで?』
『あの屋敷です。私達は
〈
『
『いや、あいつはもう死ん……』
言葉が
でも、
『コートニーから連絡が来ました。いったん、切ります』
クレアから「どうしたの?」と声をかけられた。うまく考えがまとまらず、言葉をつまらせていると、スージーから
『崖が見える森の中に連れて行かれたそうです』
崖が見える森と言ったら、あそこしか考えられない。――そうか、
『今から、そこへ向かうから、時間かせぎするように伝えて』
『わかりました』
◆
コートニーは
ウォルターの
当然、コートニーは相手の目的も、どこへ連れて行かれるのかも知らない。ただではすまないことを覚悟していたが、望みがないわけではない。
『ウォルターがすぐにそっちへ行くから、時間をかせいでほしいって』
『わかった』
スージーにはそう返答したが、力で
相手と
『
「『
聞きなれない種族名にデタラメな身長と体重。コートニーは
「あなた、何を言っているの……?」
「……あなたのこと」
「〈
いかなる理由があって、七つも能力を持っているのか。コートニーは読み上げるだけでゾッとした。相手が敵として目の前にいることを考えると、その感情がいっそう強まった。
コートニーはその下の表示へ目を移す。そこには、現在かけられている能力が表示され、それは三つあった。
「『能力:〈
三つ目の表示は『アクセス
七つの能力を持つことは〈外の世界〉でも有名な話。知っていても、当てずっぽうでもおかしくない。しかし、『エーテルの
サイコは
「あなた、どうして能力を……。まさか、『あの
サイコの生みの親である『あの御方』は、
ただ一人『
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