トリックスターの本領
◆(三人称)
フィールドの中央で
彼も男の真の姿を見ることができる一人だったが、あいにくトレイシーと
「対戦相手の左腕、おかしくありませんか?」
「……そうですか?」
男の左腕は完全に骨がくだけ散っていた。そのため、パトリックの目には、まるで
「対戦相手に〈
パトリックはあきらめきれず、コートニーに頼み込んだ。
「おかしなところはありませんか?」
「……ありました。『ゾンビ』と表示されています」
コートニーが表情を
「対戦相手の様子がおかしいです。すぐに助けに入れるよう準備しておいてください」
◇
「さて、本題に入ろう。君は何の目的でこの国にいるんだい?」
「意味がわからない。目的なんてない。ただ、この国にいるだけだ」
「ならば、質問を変えよう。君はこちら側か、それとも、そちら側か。まわりの連中には秘密にしておいてあげるよ」
「意味がわからないって言ってるだろ」
「いつまで話し込んでいるんだ! 二人とも
「こう見えても私はフェアな男だ。
またわけのわからないことを言い出した。耳を貸すべきじゃないか。
男が「今からそれを証明しよう」と言って、ゆっくりとまぶたを閉じる。
「君の視線の先、右手の
男の肩ごしに視線を送ると、若い女が
「信じてもらえたかな?」
目を開けた男が得意げにほくそ笑む。目の前の男はあやつり人形だということか。新しい能力を次から次へと
たとえそうだとしても、この会場にいるのは間違いない。いや、あの若い女が男の仲間ということも考えられるか。
「そういうことだから、試合などと言わずに、思う
男の
「これから始めるのは生ぬるいお遊びではない。本当の殺し合いだ。ああ、そうそう。こいつは壊しちゃってもいいよ」
男がたれ下がった左腕をプラプラと横に振った。
「もう――壊れちゃってるけどね。キヒヒッ」
そして、神経にさわる
そんな底知れない思いがもれ出したのか、
「その気になってきたようだね。では、見せてもらおうじゃないか。エックスオアーのノド元に
男が
男はそれなりに魔法を使いこなせている。ただ、デビッドと
いや、安全
単に、〈
とにかく、相手の
あまりの歯ごたえのなさに
「違う違う。違うぞ、トリックスター。私が求めているのはこんなものではない」
男が起き上がりながら言った。わざと攻撃を受けた様子はなかった。
「さっきも言ったはずだ。私は遊びに来たわけではないと」
どうしても〈
「君は思い違いをしている。私は何だってできるんだ」
男が
すぐに足を
「さあ、見せろ! 君の力を! トリックスターの
目の前で
なかば
すると、再び視界にとらえた男の顔つきが
次に男が見せた行動は
つかみかかってきた男の腕を、身をひるがえしてかわす。しかし、ギリギリで
とっさに男の
地面をころげた
その時、あちこちから
ようやく男の手が引きはがされ、かけ寄ってきたスコットに「大丈夫か?」と肩を貸してもらう。スコットが「また、この
「こいつ『水』の指輪しか持っていないぞ。どうして『火』の魔法を使えたんだ?」
そんな言葉が耳に届き、男の
「どうしました?」
「あいつは
「彼自身がそう言ったのですね?」
「はい。たぶん、あやつっていたやつはこの会場に来ています」
すぐに探し出さなければと思い立った。会場脇の
ふと西門のほうへ
それはアカデミーの研究員や役人によく見られる
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