思いがけない対戦相手
◆(三人称)
ギル――に『
スプーの表情はしぶかった。しかし、それは
「とりあえず、ムキになっていた理由を聞いておこうか?」
スプーはジェネラルと戦う理由をネクロに伝えていなかった。
「私の力がどこまでジェネラルに
スプー達の
「何を張り切っているのかと思ったら、そういうわけか。でも、それはインビジブルがやると言っているんだから、任せておけばいいさ」
「やつは
スプーが鬼の
「わかってるよ。でも、『最初の五人』については話してもいいんだろ? まあ、念のため、先にあやまっておこうかな。やっぱり、直接人間をあやつってる時はカッカするんだ」
ネクロは会場のすみに
◇
いよいよ、試合がせまってきた。
「がんばれよ。僕らの生活が君の肩にかかっているんだぞ」
「負けたら
ロイとクレアにプレッシャーをかけられながら、スコットと一緒にフィールドへ向かう。ふと
「よし、ウォルター。最後のおさらいだ。ジェネラルが見せた『
『氷』は
『風』が優れているのは
「よし、『風』の
スコットの何とも言えない応援に送り出され、消えかけの
「ウォルター、がんばってくださーい!」
スージーの元気な
ほどなくして、人ゴミの中から男がフィールドへ出てきた。ちょうど
ふいに
男とは
男がこちらを見た。間違いない。顔をななめに
周囲を見回す。なぜ、誰も疑問に思わないんだ。どう見ても、あいつはトレイシーじゃない。制服だってボロボロだし、だいいち、あれは〈
「始めてください!」
考えがまとまらないうちに、試合が始まった。この会場にはトレイシーを知っている人間が誰一人としていないのだろうか?
男がいきなり歩き出す。しかし、数歩進んだところで立ち止まり、
男はおどけるように両手をあげてから、
男の
「何か聞きたいことがあるんじゃないか?」
「……あなたはトレイシーじゃない」
「そうだ。私はトレイシー・ダベンポートではない」
男はあっさり認めた。目的は何だ。なぜここに来たんだ。
「しかし、まわりの反応はどうだい? 君と連中との認識は
その点が
「君が正しい。事実、私はトレイシー・ダベンポートではない。けれど、まわりの連中には、私がその男に見えているのさ」
簡単に受け入れられる話ではない。けれど、そうとしか思えない。つまり、この男は他人に成りすませる能力者であり、僕にだけ本当の姿を見せているということか。
「君が正しい。君が正しいんだよ、トリックスター」
「……どうしてそのことを」
思わず
「まわりの連中には秘密だったのかい? この体の真の姿を見きわめられる。君がトリックスターである何よりの
そういえば、あの女もよく似たことを言っていた。それに、この男は
「私はローメーカーの使いでこの国へ来た」
「……ローメーカー?」
「かつての同志の名を忘れてしまったのかい?」
「あなたが何を言っているのかわからない」
自分をふるい立たせるように、言葉に力をこめた。そうしなければ、相手の
「とぼけているわけではないか。ローメーカーも君のことは知らないと答えていたしね。それなら、教えてあげよう。仲間の名を忘れているのも、この〈
「『最初の五人』……?」
「少し昔話をしようじゃないか。その二つは同じ出来事に
男は表情やジェスチャーがイチイチ
「
さて、五人の名をあげよう。ローメーカー、トランスポーター、エクスチェンジャー、あそこにいるヒプノティスト、そして、トリックスターこと君」
話の途中、男がパトリックをチラッと見た。〈
「覚えているかい?」
「覚えていないし、そんなことはありえない」
「どうしてそう断言できる?」
無言をつらぬいた。返答するのもバカらしかった。自分に記憶を失った記憶なんてない。まあ、
「君ら五人は勇敢であり、
だいたい予想はついた。男はもったいぶって
「君だよ、トリックスター」
「しかし、君は最後の最後でしくじった。その結果、君達とエックスオアーは
内容は『全員に関する記憶を世界中の人間から消去する』と『同意を得ないかぎり、お
これまでの出来事との
男はなぜこんな話をするんだ。僕よりも僕のことを知っているような口ぶりが、
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