開かずの間
◇
「時間があるようなら、先に城を見て回りたいな」
「そうです、お城を見学しましょう!」
第一試合が始まるまでに三十分、ジェネラルの試合が始まるのは、さらにそこから三時間。他の人の試合にも興味はあるけど、先にロイとスージーとの約束を済ませることにした。
試合会場の外も人が多い。普段なら絶対に見かけない中高年の夫婦を
それもそのはず、今夜
僕とコートニーのオフィスが入る
「
宮殿は
「入れるんですか?」
「どうなんだろう」
正面の大扉は開いている。大会堂の中をのぞくと、観光客のような
「大きな塔ですねー」
スージーが
「無駄にデカいけど、時計塔じゃないよな。
「学長が言ってましたけど、てっぺん付近の部屋に、
コートニーが「私も聞いたことある」と言った。ロイの顔つきが変わった。
「よし、じゃあ行ってみるか」
「たぶん、入れませんよ。カギがかかっているそうですし」
「カギ開けの
「普通のカギじゃないみたいです。ジェネラルが持っている何とかっていう指輪がキーになっていて、それも神器の一つだそうです」
スージーが「漫画とかゲームの話みたいですね」と感想を述べた。
「ほとんどうろ覚えじゃないか。君は言うほど
「いや、何か関わってはいけない
ロイがあきらめきれない様子で〈止り木〉を見上げる。コートニーが「三階に巫女の
「そこには行ったことあるのか?」
「立入禁止です」
「君の巫女に対する思いはその程度か?」
ロイはそっちにも食いついた。この間の
しだいに興味がわいてきたものの、いたずらに危険な橋を渡るなという思いとせめぎ合っている。
「巫女の居室に
「開かずの間……、いい
ロイが
「でも、ただでさえ人が多い日に、わざわざそんな事をしなくても……」
「だからこそさ。逆に警備が
行くと決めたわけではないけど、
けれど、ここからでは大会堂のある一階部分が巨大すぎて、三階部分の様子が全くうかがえない。
「よし、軽く上がってみよう。二人はここで
「えー、また私が
「でも、ウォルターとカギ開けの
スージーは
「私が残ってれば十分じゃない?」
コートニーの言う通り、スージーが一緒に行けば万事解決だ。けれど、三人で飛ぶとなると、
最終的に、ロイをおぶった上にスージーを抱きかかえるという、見た目は
まずは一階部分の上まで
こちらは北側なので、二階部分にも三階部分にも窓がない。正面の南側に行けばあるだろうけど、そこへ行くほど僕らは
さらに三階部分の上に上がり、〈止り木〉の
「これは
巫女の居室にある
「また、元に戻せなくなったりしませんか?」
「ゲームの当たり判定みたいなのがあって、こういうピッタリとハマっていた物は、向きさえ間違わなければ
五分足らずで取りはずしに成功した。結構穴は深いけど十メートルはない。先に下りても、上の二人は能力の
その先は広さ四畳ほどの
「何なんだ、この場所は。巫女の部屋のすぐ近くだから、
「桶が置いてありますし、トイレですかね」
「見てください。動物の毛みたいなのがたくさん落ちてますよ」
スージーが寝ワラを調べながら言った。自分もそばにしゃがみ込む。ワラに白髪のような毛が大量にからみついている。
「ペットの部屋でしょうか」
打って変わって、
けれど、部屋はだだっ
ロイが「窓には近づかないようにな」と注意した。
「生活感はゼロですけど、全く使われていない感じではないですね」
「ベッドのシーツもキレイですよ」
「これは管理している人間がいるな。
しばらく部屋を見て回ったものの、
もう少し詳しく調べたかったものの、
「もしかして、開かずの間ってここのことですか?」
「愛人がどうのこうのってやつですか?」
「そう。とても愛人の
「内からカギがかかってたし、巫女の部屋とつながっているな」
もう一度、
「お宝はないみたいですね」
「ていうか、これおかしくないか?」
ロイが扉のカンヌキに手をかけながら言った。
「何がですか?」
「ここに誰かを閉じこめるなら、このカンヌキは外にあるべきだ。これじゃあ、ここに閉じこもりたい人間が内からかけるものじゃないか」
ロイの言う通り、このカンヌキは内カギだ。誰かがここに残らないと金庫としても使えない。トイレにしては扉もカンヌキも
この何もない小部屋を、何から守りたいのかわからない。プライバシーだろうか。巫女は
いくら考えても結論が出そうにない。あきらめて小部屋を後にし、それから一時間ほど城内を
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