侵入者の事情
◇
結局、女は発見できずじまい。タイムリミットがせまったので、スージーに『
帰りを待っていると、何とヒューゴが屋敷へ現れた。
「あの野郎が〈侵入者〉について
〈侵入者〉の情報と引きかえに、しばらくデリック・ソーンを
ほどなく、パトリックも屋敷へ帰ってきた。彼が
「まずは、昨晩
空に飛ばされたこと、ナイフの
「空に飛ばされたのなら、どうしてお前はここにいるんだ?」
ヒューゴにツッコまれた。うっかりしていた。
「ウォルターは空を飛べる能力を持っているんです」
「お前と同じわけか。まあ、普通の人間じゃないと思っていたけどな」
パトリックが
「本当に女でしたか?」
「はい。見た目も声も
「確かに女だったぞ。俺も声だけならハッキリと聞いたからな」
「いくつかは、私が知っているトランスポーターの能力と
「あっ、トランスポーターから能力を借りたと言っていましたよ」
「……能力を借りたんですか?」
「はい。女が自分でそう言っていました」
実際、この目で見たわけだから、その話を信用している。たった一つの能力に、あれほど
「トランスポーターってのはどんなやつなんだ?」
「男です。年齢的に私やウォルターとあまり変わらないそうです」
パトリックが首をかしげながら、しばらく
「問題はその女がどういった目的でここへ来たのかと、大量のマスケット銃を誰が使う予定で用意したかですね」
なぜパトリックがそんなことに疑問を抱いたのか、理解できなかった。
「〈侵入者〉が使うためじゃないんですか?」
「連中は基本的に単独行動だろ」
「まだウォルターには話していませんでしたね。いい
◇
「我々はこれまで〈侵入者〉の
侵入先に〈
この国の
「彼らが単独行動なのも能力的制限が
〈外の世界〉への
「そのトランスポーターっていうのが、この国に現れたことはないのか?」
「ありません。彼の〈
そういえば、
「彼らの行動パターンは
武器はマスケット銃か
「トランスポーターと〈侵入者〉は連絡が取れないんですか?」
「はい。約束の
「スージーの能力があったら泣いて喜びそうですね」
〈侵入者〉は
「ちなみに、拘束した三名は全員命を取らずに解放しました。
ただ、ほとぼりが
「そんな状況だから、協力者を作る
「そうとも言えますね」
「でも、女が〈
「そうだな。こっちから〈外の世界〉へ行くことも可能ってことか」
ヒューゴがにわかに色めき立つ。その考えが頭になかったのか、パトリックはしばらく固まった。
「おっしゃる通りです。能力の借り方にもよると思いますが……」
パトリックが驚いたのも無理はない。
「ただ、その女は単独行動だったんですよね?」
「仲間は
「では、まだ何らかの障害があると見るべきではないでしょうか。複数で行動する彼らが発見された例は、いまだかつてありません」
言われてみればそうだ。できることをしない理由はない。それができない理由、もしくはしたくない理由があるはずだ。
◇
「デリック・ソーンはどうなりました?」
「ベレスフォード
「もう〈外の世界〉へ逃げおおせたかもな」
「ベレスフォード卿はなんて言っているんですか?」
「彼が何も言わずにいなくなったので、
「もう屋敷の中は調べたのか?」
「まだです」
「れっきとした
「
いくら言いつくろっても、部屋に
「もう証拠は
「それでどうするんだ。クサいものにフタをして、また見て見ぬフリか?」
「私が最も
「
少なくとも、対抗戦が終わるまではデリック・ソーン個人の
「五年前みたいなことになっても知らないぞ。全部、お前が責任を取れよ」
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