パスタ会議
◇
僕達は共同生活を始めてから、ほぼ毎日
手に入る食材や
始めのうちは、ダイアンから教えられた通りに作るのが
基本的にスープを作る。調味料が少ないので、一緒に
なぜなら、安心して飲める飲み水が少ない上に、エールなどの
現実でも水道水は直接飲まないし、
「そうだ、
夕食の
「アレって何ですか?」
ロイは口でなく〈
「乾燥パスタですか?」
「
一週間以上音沙汰がなかったので忘れかけていた。乾燥の作業が一日がかりらしく、
ロイいわく、保存期間を伸ばすための基本は乾燥・冷凍・
「食べられるんですか?」
「味は保証できないけど、食べられるんじゃないか」
そんなわけで、夕食の時間を利用してゆでてみた。わざわざ乾燥させたものを、すぐにゆでることほど
正確に製造方法を再現しただけあって、乾燥した状態も、ゆで上がった状態も、日頃食べているパスタと
コートニーも「悪くないんじゃない」と同じ感想を
スージーは味がないからか口に入れても
この時代にはまだフォークが存在しないようで、スプーンで食べる物以外は手づかみだ。スージーは数回かみしめてから「スープにひたすとおいしいです」と言った。
「そうか。味付けや食べ方も提案しなければいけないな」
「普通にミートソースとかカルボナーラじゃダメなんですか?」
「簡単に言うが、こっちに来てからトマトを一度も見かけていない。チーズはあっても、
「それなら、ペペロンチーノとかボンゴレとか……」
スージーが
「ペペロンチーノはニンニクと
「オリーブオイルは手に入るの?」
「オリーブオイルじゃなきゃいけないのか?」
「よく知らないけど、パスタって
ロイとコートニーが黙りこくる。自分はオリーブオイルがどんな油なのかすらわからない。スパゲッティを作るだけのことが、こんなに大変なのかと身にしみて感じた。
「たらこスパゲッティはどうですか。あれは
「そういう
スージーの提案はロイの
「たらこって、タラの卵だからたらこなんですよね。ベレスフォード卿がタラの
「そういうばそうだったな……。でも、そうだとすると、仮にたらこが
得意げに
「フォークも必要じゃない?」
「そうだな……。どうしてフォークはないんだろうか」
あるところにはあるのかもしれないけど、フォークは見たことがない。スプーンでは食べられないし、問題は
「ロイ自身が
「いや、僕は乾燥パスタ
それなら、パスタを乾燥させる大がかりな
「とはいえ、生のパスタを作って、それを乾燥させるだけだから、
魔法によって
「確かに面倒くさいですけど……、でも、能力を使えば、基本的に
アシュリーのために何かしたいという気持ちが日に日に大きくなっている。
「
「でも、『忘れやすい人々』の問題があるでしょ」
コートニーが言った。この国には、一週間以上前の記憶を保持できない人達が
「そうか……。製造方法はおろか、調理方法まで忘れ去られたら目も当てられないな。忘れない人達を集めて、レストランを経営したほうがいいだろうか」
乾燥パスタの前に立ちはだかる壁は予想外に大きい。
現実のほうは夏休み中だから、以前より夜ふかしになった。ただ、
二階は就寝時以外はあまり上がらない。四人でも
いざ寝ようと、コートニーがランプに手をかけた時、ふいにロイが言った。
「明日にでも現実のほうで会わないか? 腰をすえてゆっくりと話し合いたいんだ」
「別にかまいませんよ」
「私も特に用事はありません」
夏休み
「その
「ロイとコートニーはアレで忙しいんじゃないですか?」
「受験勉強のことか?」
ここまで
「明日は休みだけど、
「こっちにいる時は受験のことをきれいさっぱり忘れられるし、いい
コートニーが
「僕も同じ気持ちだ。
何か、怖いくらいにやさしい。二人とも、前からこんなだったっけ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます