訪問者
◆(三人称)
男はパトリック
「面会を申し入れた、ギル・プレスコットだ」
使用人に対し、
パトリックは学術関係の人物と広く交流を持ち、
「
スプーが
「申し遅れました。ギル・プレスコットと申します」
「うかがっております」
どこかで会った覚えが――。パトリックが
「
パトリックは
レイヴンズヒルにおいては、自身の〈
「私にも
「先だってのキース・コールマンの一件についてはどうでしょうか? 『樹海の魔女』の
「人をまどわす魔力のような力が、〈樹海〉に働いていることは
「おっしゃる通りです。『樹海の魔女』も旅をすることがあるかもしれませんが」
「話は変わりますが、学長はウォルターという男をご存じですか?」
パトリックの
「ええ……、ウォルターは私の親しい友人です」
スプーが
この男と二人きりでいるのは危険。
幸いにも、スージーの〈
〈
「ええ。実はキース・コールマンの一件で彼と行動を共にしまして」
「そうですか。それで『樹海の魔女』にも興味がお有りでしたか」
疑問は
「学長は、私のことをご存じありませんか?」
そう言い終えたスプーが、
しかし、パトリックはそれに疑問を感じない。なぜなら、彼の目に映るスプーの外見は、始めからギルのものではなく、スプーが『器』とする体の本来の姿だからだ。
それに対するスプーの動揺もない。自身の能力が通用しないのは
「申し訳ありません。以前にお会いしたことがありますか?」
「いえ、こちらが
スプーが立ち上がると、パトリックが
スプーも胸をなで下ろす。場合によっては、パトリックの暗殺も
スプーが屋敷の面する通りから、レイヴン城の東門へ通じる通りに出た。そこで、トレイシーの姿のまま外へ出てきたことに、ようやく気づいた。
自身の
思いつきで来ただけあって、まだウォルターの
「私のことを覚えてるか?」
「はい、覚えてます」
ウォルターが
「確か……、ギル……」
「そうだ。ギル・プレスコットだ」
ウォルターは差し伸べられたスプーの手を
しかし、ギル本来の姿を知らなければ、永遠に
そして、スプーは確信した。ウォルターが
眼前の男の姿が、他人の目にはトレイシーに映っていることも、スプーの胸にきざした
◆
スプーは
さらに、北に
この場所を潜伏先に選んだのは、ひとえに人がいないからだ。
目の前で立ち止まったスプーが、どちらがネクロだったか、と
「ヒプノティストは
「取り止めだ。その必要はないと判断した」
「行く前はあれだけ
「周囲の人間が青に見えているものが、たとえ赤に見えていても、当人が本来の青を知らなければ、
なぜ、あの男が『
「ずいぶんと言い訳をこねくり回したね、キヒヒッ」
ネクロの人を
「ウォルターという男とも会ってきた。案の定、私の能力が通用しなかった」
「やっぱり、あいつは『最初の五人』だったわけだね」
『最初の五人』にはあらゆる能力が通用しない。〈外の世界〉では伝承に残る有名な話であり、ウォルターとパトリックをのぞく残りの三人がそれを
「トリックスターの能力は敵に回ると
「『
ふとスプーがネクロの隣に座る男――
スプーの〈
例えば、現在ネクロが連れている貴族型ゾンビ――キースの死体は『自分に付き従って同じ行動をしろ』と命じられ、ネクロが立ち上がれば立ち上がり、座り込めば座り込む。
「ほぼ目的を達成したけど、これからどうするんだい?」
「予定通りだ。お前には
「私にはきっちり仕事をさせるんだね」
「当たり前だ。お前の能力の話なんだぞ」
レイヴンズヒルを訪れた彼らの一番の目的――それは〈
「それより、わかっているだろうな?」
「何がだい?」
「その姿のまま、あの男の前に出るなよ。連れているゾンビはなおさらだ」
「わかってるよ。
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