第15話スカウトには気を付けろ、時に野獣が潜んでるぞ

 相原さんが訪ねてきて帰った夜、最終決定の家族会議が行われた。

 契約に合意するか決裂するか、妹のやってみたいという意思と母のグラビアへの熱意によって契約を合意することに決まった。

 すぐに相原さんに電話をして契約に合意します、と伝えた。するとちゃんと後日に相原さんは契約書など諸々を持って訪れた。

 父と母は契約書に詳しく目を通して、名前や住所など色々書いて判を押した。

「これで契約成立ですね。今後はよろしくお願いします」

「りつなを頼みました、相原さん」

「ほらほら、りつなもりくとも頭を下げるのよ」

 母は俺と妹にも、頭を下げるよう促す。

「妹をトップグラドルにしてください」

「これからお世話になります……ええと、お、お願いします」

 これで妹のトップグラドル街道が始まったんだ。

 

 そんな祝福気分の最中、契約成立後すぐ相原さんと二人で事務所に向かった妹から電話が入った。

「相原さん捕まった」

 あっけらかん声で告げられた呑み込みがたい事実に、俺は何かの間違いだと疑ってかかる。

「お前、そんなこと本気にするとでも?」

「いやそれがさ、なりすましってやつみたいで。それが発覚して私の見てる中で手錠かけられてた。なんか誘拐罪ってやつらしいよ」

「…………寝ぼけてるのか? それとも俺達をおちょくってるのか?」

 ありえない、なりすましに騙されたなんてよ。

 妹はさぞ不満そうな声で続ける。

「なんで信じてくれないの、兄さんのバカ」

「信じるわけないだろ!」

 俺が声を荒らげたので、何事かと父が様子を見に来た。

「誰と。話してるんだ、りくと。りつななら代わって欲しいんだ、伝えたいことがあってな」

「父さん、りつなが変なこと口走ってるんだけど言ってやってくんない?」

 俺は受話器を差し出す。

 そうか、と事も無げに受け取って耳に当てた。

「りつなか、父さんだ」

 父の両目が驚愕に全開して、途端に表情が暗くなる。

「わかった、しっかり事実を話すんだぞ。ええ、ご家族にも事情聴取がしたいだって……そうか、わかった。母さんとりくとにも伝えとく……それじゃあな」

 通話は終わったらしい。

 父は受話器を置いて、深刻そうに俺を振り向く。

「誘拐罪で相原さんが捕まった、そうだ。詳細はこれから調べていくらしい」

 りつな側の声が上手く聞き取れなかったので、全容はわからないが相原さんが捕まった、ということだけはジワジワ理解できてきた。


 

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