第2話ここまではチュートリアルかな


 えー、皆さんこんにちは。私は今、どこに来ているのかと言いますと、木々が生い茂る樹海っぽい所にいまーす。

 うん。自称女神に飛ばされたわけだが、これから何をすればいいのか全く分からん。この世界はゲームみたいに能力がステータス式なのか。レベルup禁止とかいう呪いをかけられたくらいだからな。

 

 『ステータスオープンと言えば、自分の能力を知ることができるぞ』

 

 後ろから低く野太い声が聞こえた。やばい感じしかない、なんかでっかいのが後ろにいる。

 

 『怯えなくてもよい、襲ったりしないぞ、異世界からの旅人よ。我はヤマツカミ、ここ、東の森の主だ』

 

 ヤマツカミ、と名乗ったそれはとてつもなくデカイ、

 

 「ドラゴンかよ……」

 『異世界の者を見るのは久しぶりだ。お主にはこの世界のことを教えよう、それがオーガン様から与えられた我の役割だからな』

 

 ここ、異世界とかじゃなくてリアルなゲームじゃないのか?完全にチュートリアルだろ、これ。もしそうだとすると俺はまだ死んでない?

 

 『それ以上考えるな、勘のいい餓鬼は嫌いだよ。何も考えず、さっさとステータスを確認しろ』

 

 逆らうと、ろくな事がなさそうなので言われた通りにしよう。

 

 「ステータスオープン!」

 

 

 

 名前:遠山 零(異世界人)

 職業:御用人(Lv.1)

 スキル:高速処理、鑑定

 «オーガンの呪い»レベルup禁止

 

 

 

 「なあ、御用人ってなんだ?」

 『御用人というのは神の雑務を処理する職業だ。選ばれた者しかなれない職業だな。お主、オーガン様に何か頼まれたりしなかったか?』

 

 そういえば、あのババア、この世界の問題を解決するのを手助けしてくれ、とか言ってたな。

 実際は雑務をまる投げかよ、あの女神、ありがたみを全く感じない。歳のせいで腰が重くてうごけないんですかねぇ、そうに違いない。

 異世界転移したのにLv.1、しかも呪いのせいで強くならない。なんの縛りプレイだ?

 

 『お主、御用人なのにステータスが平民と変わらんな。普通はどんな事態にも対処できるように優遇されるのだが……、おい、オーガン様から呪いをかけられるとは、一体何をしたのだ……』

 

 ババアって連呼しました、それだけです。

 あの女神、この世界では一番信仰されている神で、死を司る神だが普段は人々が安心して死ぬことができる世界を作る努力をしているらしい。

 なんだ、いい奴じゃん、ただの腰が重い短気婆さんじゃなかったんだな。

 

 『よしお主、あそこにいる魔物を狩ってみろ。あれは戦闘の練習にはいい相手だ、経験しておけ。そのステータスではすぐに死んでしまうぞ』

 「狩るっていっても武器とか持ってないんだけど素手で勝てるの?」

 『あの魔物はワイルドホエー・イビルイ、通称“わっほい”という』

 

 正式名称と通称のギャップが凄まじいな、めっちゃ弱そうにきこえるぞ。

 

 「どうすれば倒せるんだ?」

 『簡単、ひたすら攻撃するばいい。殴るもよし、蹴るもよし。ただし相手の攻撃には注意しろ、あいつのハサミは厄介だからな』

 

 見た目はカニ、大きさは牛くらいあるが動きは大したことなさそうだ。

 

 「やってみるか」

 

 わっほいの弱点を探そう、カニっぽいし多分硬い。一ヶ所を集中的に攻撃して殻を割ろう。早く終わらせたいから確実にいくぞ、腹が弱そうだがハサミが怖いしここは尻を狙おう。

 後ろに回り込んで開始だ!!

 

 ガシン!!

 

 「見た目よりは硬くないな、ダンボールよりちょっと重ねた位の強度か?この調子で続けよう」

 

 ガシン!!ガシン!!ベコッ……、ゲシッ!メキメキッ………

 

 『やるではないか、思ったより早かったな、見事だ。では倒したわっほいでスープでも作れ、そいつは美味だぞ。今日はもう遅いからな、明日森を抜けるといい』

 

 

 

 わっほいを倒した。魔物の中では一番弱いが美味しく、この世界の人々に(食材として)愛されているようだ。

 名前にホエーと入っているとおり、味は普通のカニよりクリーミーで癖がない。

 

 「ヤマツカミ、君は俺以外の異世界人を知っているのか?異世界のやつを前にも見たことあるみたいなこと言ってただろ」

 『ああ、知っているとも。ほとんどの者が冒険者になって旅をしている。一部は商売を始めたようだな。そのうち会えるだろう』

 「冒険者ってことはギルドとかもあるのか!」

 

 やっと異世界っぽい話になってきたぞ。

 

 『街に行けばある。だが人は二つの職業を持つことはできない、つまりお主は冒険者にはなれないぞ。もうすでに御用人という職業が決定しているからな。』

 

 おいおい、冒険者になれないってことは、

 

 『魔法は少し使えるかもしれないが、冒険者のような攻撃技は使えないし耐久力もない。そもそも呪いでレベルが上がらないのだからはっきり言ってお主はどうしようもない“雑魚”だ』

 

 「はぇー、死亡フラグビンビンじゃないですか。どうすんのこれ」

 『まずは森を抜けて街へ行け。そこでこれからどうするか、じっくり考えるといい。そのうち御用人がどういう職業なのか分かってくるだろう。ファハハハ!!だが少し可哀想だな、我がスキルを一つ付与してやろう』

 

 ヤマツカミが付与してくれたのは『念話』だ。彼はずっと俺とこのスキルを使って話していたらしい。どこで使えるかは分からないが、使えるスキルが増えるのはありがたい。

 あと、俺のステータスは本当に平民と大して変わらないようで、ゴブリン程度ならなんとかなるが、それ以上の魔物になると厳しいようだ。

 明日はヤマツカミの言う通り、森を抜けて街へ行こう。魔物はできるだけ避けて、戦闘になったら死んでしまうから、慎重に。

 

 空は満天の星空……、ではなくどんよりした黒い雲。

 

 「明日はいい日になりそうだ!!」

 

 あ、雷落ちた。

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