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「っ、くそっ」

 雨、止んでない! むしろ、大粒になってる!

 電車を降りて改札を出ると冷たい風が首元を擽った。途端に背筋が冷える。

 完全にミスった。今朝の自分を殴りたい。

 冷たい指先に息を吹きかけた。

「よしっ」

 駅を出たらすぐに商店街がある、そこまで走れば雨は問題ない、アーケードがあるからだ。しかし問題は雨じゃない、寒さは防げないのだ。それならいっそ、店まで出来るだけ不恰好じゃなく早歩きで行くのが懸命。

 走っていたら危ないし、第一恥ずかしいし、小走りで、さも「寒いからって早歩きしてるわけじゃないですよ」といった顔で行かなければ。

 店に行けば暖房がある。ブランケットもある。ホットコーヒーもある。確かちょっと厚手のパーカーが掛けっぱなしになっていたはず。帰りはそれを羽織って帰ろう。

「目指せオアシス」


「っ、はぁ~。生き返る~」

 熱いカップに指先がジンジンする。まだカレンダーは十一月で季節は秋のはずなのに、どうしてこんな冬みたいなことをしないといけないのか。

最近の気候はなんだかおかしい気がする、なんて思ってはたと気付く。カレンダーをじっと見た。バックルームに張り付けてあるカレンダーは商店街の老舗、武田電気から貰った物だ。

「今日、立冬かよ」

 そりゃ寒い筈だ。暦の上では今日から冬なのだから。

「・・・はぁ」

 帰ったらコートを引っ張り出さないと。

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