キタカゼとタイヨウ

カゲトモ

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 あんなに優しかったのに、どうしてあなたは俺を裏切るの。いつもいつも、こうやって俺に辛い思いをさせるんだ。

「なんでこんなに寒いんだよ・・・」

 なぁおい何だこの寒さは。さっきまであんなに暖かで優しい気温だったのに。

 時計を見ると午後三時過ぎ。たった二時間でこんなに気温が変わるだなんて。

 おかしいなぁ、さっきまではカーディガンで丁度良かったのに、もうコートが必要なくらいの寒さじゃないか。

「予報が当たったか」

 原因はこの小雨だろう。最近天気予報が外れまくりだったから、あえて逆の天気予報(我流)をしていたのに。傘だって持ってないし、羽織っているのは毛混でもない綿混のカーディガン。中に着ているのも薄いTシャツだし・・・。

 びゅぅっ、と風が吹いて、パタタ、と水滴が足元に散る。ぶるり、背中に悪寒が走った。

「さむ」

 まだ秋じゃないのか。

 と、こんな所で油を売っているわけにはいかない。仕事の準備だってあるんだから。早く店へ行かないと。

 ちょっとばかしランチに時間を掛けていたのもあり、店へは小走りで向かわなければいけない。一先ず寒さに震える体を奮い立たせて地下鉄へと向かう。

 きっとカフェの空調が良すぎたんだ。カーディガンを羽織ったままで丁度良かった室温だったから。それから一瞬にして小雨の寒さになったから。だから余計に寒く感じたのかも。

 右手で雨を遮りながら地下鉄の小さな口に飛び込む。階段を下ると背中に雨が打たれた。

 何でもこうも地下鉄の出入り口はいつも強い風が吹くのだろう、なんて考えながら改札をくぐる。タイミングドンぴしゃ。入り込んできた電車に飛び乗る。

「・・・ふぅ」

 吐いた息が湿っている気がした。電車の中は先程までとは違っていて、むしろ暑いくらいだ。蒸し暑い、に近いかもしれない。

 学生や主婦が多く、帰宅ラッシュの少し前の電車はそれなりに混んでいて、もちろん暖房が入っているのだろうが、人の熱気がすごい。きっと俺が眼鏡を掛けていたら、この気温差にレンズが曇っただろう。

 でも、暖かい。

 ここから三駅。どうかそれまでに雨が止みますように。

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