291話


 そうして、体育祭当日になった。

 西星高校には朝から生徒の親や一般のお客さんがやってきており、学校の体育祭とは思えない盛り上がりを見せていた。

 昇降口には出店が並び、グランドにはそれぞれの軍の得点板が掲げられ、生徒達はそれぞれの軍の鉢巻とTシャツを着て体育祭の開始を待っている。

 そんな中誠実達三人は自軍の男子生徒を集めてメガホンを取り、何かを話し始めていた。


「あーあー、テストテスト! 聞こえますかぁー!」


 メガホンで話し始めたのは誠実だった、両隣には武司と健が立っており、誠実たちの青軍の男子達は誠実に注目を集める。


「えぇー今回のこの体育際ですが、実は活躍が目覚ましたかった青軍の男子生徒にはとある特典があります!」


 誠実の言葉に他の男子達はひそひそ話しを始める。


「なんだなんだ?」


「あれ、一年の馬鹿三人だろ?」


「入学してから有名だからな。また何かするつもりか?」


 そんな男子たちに誠実はメガホンを使用して大声で話す。


「俺には妹がいるぅぅぅぅ!!」


 誠実の大きな声に男子たちは再び誠実の方を見てヤジを飛ばす。


「そんなの知ってるわ馬鹿野郎!」


「俺に紹介しろこらぁ!」


「妹さんをください!!」


 誠実の妹である美奈穂は一度誠実の学校に来たことがあった、その時に美奈穂を見た男子たちの間で噂は広まり、今では誠実の妹はかなり可愛いと話題になっていた。

 そんなヤジを聞いた誠実は再び声を張り上げる。


「よし! 紹介してやるぅぅぅ!!」


「「「「「マジかっ!!!」」」」」


「ただし! 全員に紹介は出来ない! だから! 今日の体育祭で活躍した奴に紹介してやる!」


「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉお!!」」」」」


 誠実の作戦はこれだった。

 簡単に言ってしまうと美奈穂を餌にして男子のやる気を出させようと言う作戦だった。

 実際誠実は「まぁ電話番号を交換させるくらいなら大丈夫だろ」なんて軽く考えていた。

 しかし、この好機に男子たちは誠実の予想以上にやる気を出した。


「美奈穂ちゃんとお近づきに!!」


「お兄様が折角機会を下さったのだ! 絶対に活躍してやる!」


「お、俺はお兄さんとお近づきになりたいんだが……」


 誠実達は集まっていた男子達の元を離れ、三人で話していた。


「え? なんか予想以上にやる気出してんだけど? 美奈穂ってそんな可愛いか?」


「いや、そこらのアイドルより可愛いからな。お前は兄妹だからわからないだろうけど」


「というか、周りの反応でわからないのか?」


「俺からしたら生意気な妹だしな……まぁでも良かった。これならなんとかなりそうだな」


「でも、良かったのか?」


「何が?」


「美奈穂ちゃんだよ、もちろん許可なんて取ってないだろ?」


「あぁ、大丈夫だって、俺の知り合いって言って軽く美奈穂に紹介すれば解決だろ?」


「このことを美奈穂ちゃんが知ったら絶対に激怒するぞ?」


「大丈夫大丈夫、絶対バレないし、それにあいつ俺の体育祭なんて見に来ないし」


「なーんか嫌な予感がすんだよなぁ~」


 三人がそんな話しをしていると、団長である田岡が学ラン姿で現れた。


「お前ら、何やってるんだ!」


「あ、ゴリ…田岡先輩」


「ゴリ……団長オッス!」


「ゴリラ先輩オッス」


「お前ら、そろそろ俺怒っても良いよな? 絶対にお前らを一発ずつ殴っても良いよな?」


「まぁまぁ、何しに来たんすか? そろそろ始まりますよ」


「いや、お前らが男子を集めてると聞いてな、またろくでもないことを企んでるんじゃないかと思ってきたんだよ。そしたらなんださっきの演説は? お前らそんなに勝ちたかったのか?」

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