290話
「あ、あのさ……やっぱり迷惑かな?」
「え?」
「私に言寄られるの……振られたのに諦めないなんて言ったから、誠実君気を使ってるんじゃないかって…」
沙耶香は少し声のトーンを低くして誠実に尋ねた。
そんな沙耶香に誠実は笑顔で答えた。
「そんな事言ったら、俺なんて山瀬さんにめちゃくちゃ迷惑かけてたよ。それに同じような経験してる俺だからいうけど、沙耶香の気持ちはわかるから……」
寂しそうに話す誠実。
そんな誠実を見て、慌てたように話す。
「ご、ごめん! 私そんなつもり無くて……あの……」
「いや、俺こそごめん。全然吹っ切れなくて」
「誠実君が悪いんじゃないよ、私の事はゆっくり考えてくれて良いから」
「ごめん、でもちゃんと考えるから」
「……誠実君」
そう言って誠実は沙耶香の方に振り返る。
ひょんな事からモテだした誠実はずっと悩んでいた。
全員からの告白を断るべきか、それとも誰かと付き合うべきなのか……。
考えれば考えるほど答えは出ない。
沙耶香とは一緒に居て楽しいと思えるし、正直女子の中で一番気さくに話せる間柄だと思っている。
しかし、誠実の頭の中にはいまだに山瀬綺凛という存在が残っており、一歩踏み出すことが出来ずにいた。
「あ、あのさ……こんな話しの流れで変な事を聞いて申し訳ないんだけど……」
「ん? 何?」
「あの……誠実君って振られたからってど、同性愛に目覚めたりしてないよね?」
「……ん?」
カッコつけて決めたのに、その後に言われた言葉に疑問を浮かべる誠実。
一体どうしてそんな事を尋ねるんだと思い固まっていると、沙耶香が再び口を開いた。
「あ、あの……この前なんか服を脱げとか写真がどうとか屋上で言ってるの聞いちゃって……さ、三人仲良いからもしかしてと思って……」
誠実は沙耶香にそう言われた瞬間、あの屋上での会話を聞かれていたことに気が付き、慌てて沙耶香に説明を始めた。
「ち、違うんだ沙耶香! あれは体育祭の作戦で……」
「ま、前から怪しいって女子の間で噂だったし、それに女子になびかないのももしかしてって……」
「待って! 話しを聞いて! 俺は別にそんな癖はない!」
「い、良いの! 今の時代はそう言うのも認められつつあるし! で、でも……」
沙耶香は慌てて誠実にそう言い、少し位を顔をしながら続けた。
「男子に負けるのは……ちょっと私ショックかな?」
「だから違うって!」
「さっきもおっぱい揉まないって言ってたし……」
「こんな道の真ん中で揉めるわけないでしょ!?」
「男性の方が良いのかなって……」
「揉めるもんなら揉みたかったよ!」
「え?」
「あ……」
(傍から聞いたらこれただのセクハラ発言じゃん…)
沙耶香は頬を赤く染め、誠実の耳元までやってきて話した。
「あ、あの……付き合ってからなら揉めます……」
「……ワカリマシタ」
恥ずかしそうに胸を隠しながらそう言う沙耶香に、思わず誠実も顔を真っ赤にして答える。
(付き合ったら……あのおっぱい好きに出来るのか……はっ! いかんいかん! なんかゲス見たいな思考回路になってた…)
「そ、そう言う誘惑はズルいよ」
「えへへ、一回振られちゃってるからね、使える物は使わないと」
「くっ……俺も同じような事を経験して同じような考えに至ったからよくわかる!!」
沙耶香の誘惑内容に誠実は何も言えなかった。
その後、変な空気になってしまった二人はそのまま別れて自分の家に帰っていった。
ホモ疑惑については沙耶香に誤解と説明をしてが、一部女子生徒の間で誠実達三人がそう言った意味で見られており、カップリングで盛り上がっている話しはまた別の話しだった。
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