287話

「まぁ、この作戦なら男子は大丈夫だろう……問題は女子だ」


「あぁ、この作戦だと確実に男子と女子の間に軋轢が生まれる」


「だろ? だから女子の方も対策を打ちたいんだが……」


「難しい話しだな」


「だよなぁ~健、おまえが女子に何か言ってやればみんなやる気出すんじゃねぇか?」


「馬鹿を言うな、なんで俺があんな女共のために頑張んなくちゃいけないんだ?」


「いや、おまえ全然運動出来ねぇから、そっちで頑張ってもらおうと思ってたんだが」



 そう言うと健は頭をかき乱し、ため息を吐いて何かを考え始めた。


「自分で言うのもなんだが俺は顔が良い」


「そうだが、むかつくな」


「あぁ、世間が許すならぶん殴りたい」


 武司と誠実がそう言うと健はやれやれと言った感じでパックのコーヒー牛乳を飲みながら話し始める。


「その顔を生かして何か出来ることがあるなら協力してやろう」


「お、意外だなあっさり協力するなんて」


「おまえはこういうの絶対嫌がると思ってたのに」


「ま、運動できないのはマジだしな。出来る範囲ならする」


「そうか、ならやることは一つだな」


「あぁ、そうだな」


 そう言って誠実はおもむろにスマホ用の三脚を取り出し、武司は大きな布を用意し始めた。

「何やってんだ?」


「決まってるだろ? 撮影だよ」


「もし、体育祭で活躍したら女子にはおまえのセミヌード写真をプレゼント!」


「これで女子は食いつくぞ!」


 親指を立てて話す誠実と武司に健は不愉快そうな顔で二人に話す。


「出来る事っていったよな?」


「出来るだろ!」


「なんならヌードだって行ける!」


「おまえら……ちょっと前に俺らにホモ疑惑が出たの忘れたのかよ……」


 健は大きなため息を吐いて、そのまま屋上を後にした。

 誠実と武司は準備に夢中で気がつかない。


「あの馬鹿共目……」


 一人で教室に帰ろうとする健だったが、帰ろうとする道すがら女子数人に声を掛けられた。


「あ、あの古沢君!」


「ん? 何?」


「学校のSNSで今話題になってるんだけど!」


「え? 何が?」


「こ、これ!」


 健は女子にスマホの画面を見せられ、その画面を見た瞬間健は目を見開いた。


『な、なんだこれ!?」


『女子限定!! 体育祭で活躍した女子には古沢健のセクシー写真をプレゼント!! 体育祭で活躍して写真をゲットしよう!!』


 その画面を見た瞬間、健は屋上ではしゃいでいる二人を想像した。


「あ、あいつら……やりやがったな」


 健はわなわなと震えながら女子達を置いて屋上に戻る。


「あいつら絶対ぶっ殺す!」


 健が屋上に戻ると既に屋上は撮影現場になっていた。


「まったく急に居なくなるからびっくりしたぜ」


「さぁ、脱いで脱いで~大丈夫、ちゃんと股間は隠すからぁ~」


「おまえら……俺に話す前から既にこの作戦を立てていたな?」


「あ、もしかしてバレた?」


「さっき女子に聞いた」


「ほらぁ~だから俺は誠実に言ったんだ、SNSにはもう少し時間を空けて掲載するべきだって」


「でもよぉ~拡散されれば女子に伝わるの早いだろ?」


「………」


「あ、健ごめんなぁ~じゃぁこの昼休みで撮影するから50枚」


「それをランダムで配布するって形にする予定だからよ、スーパーレアは健のケツ丸出しの……」


「絶対に撮らねーからな!!」


 そう言って健は撮影機材をなぎ倒し始めた。


「あぁ! 写真部から借りてきたんだぞ!」


「諦めておまえも軍に貢献しろ!」


「これは貢献じゃねぇ! 生け贄って言うんだよ! 俺の学校での立場がなくなるわ!」


「馬鹿野郎! おまえだから許されるんだよ!」


「俺と誠実が同じことをしてみろ! 刑事事件になるわ!」


「とにかく俺はやらねぇからな!」


 結局、この作戦は健が頑なに脱ぐことを拒んだため中止となった。

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