285話

「呼びに行ったときに美沙さんと一緒に居たので、ついでに来てもらっただけです」


「あぁ、私は特に関係ないんですね……」


 だったらこんな気まずい集会に連れてこないでほしいなんて思う綺凜を余所に緊迫した空気が流れていた。

 

「しかし、この賞品で後押しされても大切なのは当人の気持ちですので、当然実らないケースもあります」


「そういえばほぼ100%言ってましたけど、過去にだめだったことあるんですか?」


「私も噂で聞いた程度ですけど、一度だけあったらしいです」


「へぇ~、でもほぼ100%ってだけですごくないですか? うちの生徒会権限強すぎません?」


「私も去年その券を使用した生徒さんのサポートをしましたが、出来る範囲でしかしてませんよ? 先生に圧を掛けてその二人を隣の席にさせたり、修学旅行の班を同じにしたり」


「あぁ、まぁその程度なら確かに出来そうですね」


「あとは……密室に二人を閉じ込めたり、二人に生徒会の仕事を押しつけたりですね」


「なんか後半二つは悪意を感じるんですけど!?」


 笑顔で話す栞に美沙と沙耶香は若干引いていた。


「え? ど、どういうことですか? それが付き合う事と何の関係が!?」


「密室に閉じ込められた男女は狭い空間に閉じ込められたという不安感から吊り橋効果を演出して、二人の距離を急接近させようという作戦で、生徒会の仕事を押しつけるのは困難に二人で立ち向かうことでお互いに信頼関係が気づけるという作戦でして……」


「いや、それにしても他に作戦ありますよね!?」


「その頃生徒会の仕事が多くて……」


「今本音が出ましたね」


「まぁ、お互いに頑張りましょう。私はこの後生徒会がありますのでお先に……」


 そう言って栞はお茶を置いて部屋のドアに手を掛ける。

 

「体育祭楽しみですわね、誠実君達の軍に勝ったら誠実君のメイド服が見れる事ですし」


「ははは……そうですね……」


「お疲れ様でした」


 そう言って栞は部屋を去って行った。

 残った三人はお茶を飲み、一息ついていたのだが…。


「「「ちょっと待って! その話詳しく!!」」」




「はぁぁぁぁ疲れたぁぁぁぁ」


 夕方、誠実は疲れ切って帰ってきた。


「ん、お帰り。なんか最近遅いわね」


「あぁ、体育祭が近いからな」


 帰ってきた誠実を迎えたのは美奈穂だった。

 アイスを食べながら出迎えた美奈穂にそう言って、すぐにシャワーを浴びに向かった。

 

「あぁ~さっぱりしたぁ~」


「誠実、ご飯そろそろだからね」


「わかった」


「あ、それと美奈穂の部屋のエアコン新しくしたから」


「マジ? よかったぁ~これで部屋に居座られなくて済む」


 そう言いながら誠実は荷物だけ部屋に置いてこようと二階の自分の部屋に向かう。

 しかし……。


「なんで居るんだよ!」


「え?」


 そこには誠実の部屋で悠々とくつろぐ美奈穂の姿があった。


「いや、おまえの部屋のエアコン新しくしたんだろ?」


「したわよ、かなり涼しいわ」


「じゃぁ自分の部屋でくつろげよ!」


「まだこの漫画全部読んでないのよ」


「貸してやるから出てけ! ここは俺の部屋だ!」


「うるさいわねぇ、熱いんだから静かにしてよね」


「なんで俺が悪いみたいになってんだよ!」


 誠実と美奈穂が言い争っているうちに晩飯の用意が出来たらしく、一階からは母親の二人を呼ぶ声が聞こえてくる。

 誠実と美奈穂は言い争いをやめて一階に降りていく。

 テーブルに付いて食事をする伊敷家、話の話題は誠実の体育祭になった。


「そういえばあんたのところの体育際楽しみね、なんでも出店なんかも出てお祭りみたいになってるって聞いたわよ?」


「あぁ、なんかそうみたいだな。文化際も人気らしいけど、体育祭がそれに次いで人気行事らしいし」


「流石、自由な校風が売りの高校ね」


「自由過ぎる気もするけどな」

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