282話

「どうでも良いけどさっさっと風呂入ろうぜぇ~汗でベトベトだっての」


「そうね、じゃぁ三人ともばいばーい」


 美沙と綺凜は女風呂の方に入っていき、誠実たちも男風呂に入っていった。


「え? あの団長って万年ベンチだったのか?」


「らしいぞ、体育館で応援練習してた奴らが話してた」


「まぁ、野球部はレギュラー競争激しいらしいしな、それにうちの野球部は人数も多いし、田岡先輩が万年ベンチでも不思議じゃない」


 服を脱ぎながら誠実は武司と健に先ほど聞いた話をしていた。


「だから急にマジでやろうって言い始めたのか?」


「まぁ、理由は他にもあるけどなぁ……それに頑張ってる先輩が笑われる必要はなくね?」


「同感ではあるが、俺たちだけが頑張っても勝てるもんじゃないぞ? それにうちのクラスの現状も最悪だ、男女共に体育祭のモチベーションがない」


「まぁだよなぁ…」


 体を洗いながら三人はそんな話をしていた。

 時間もまだ早いので誠実たち以外に風呂に入りに来ている人は少なく、誠実たち以外には数人しか人は居ない。


「あぁ~しみるぅ~」


「風呂は良いな」


「はぁ~最高・・・」


 三人は湯船に揃って浸かり、思わず口々にそんなことを言う。

 

「はぁ~まぁ体育祭なんて運動に興味がない奴らにとってはただの苦行だからな、賞品があるって言っても運動部と文化部の力の差は歴然だ」


「正直体育祭で盛り上がるのは運動部の奴らだけだろ?」


「まぁ、そうかもなぁ~でも先輩たちは結構盛り上がってるよな?」


「あ、そういえばそうだな」


「もしかして、体育祭に何かあるのか?」


「賞品がめっちゃ豪華とか?」


「運動苦手な生徒にはハンデがつくとかか?」


「うーん謎だ」


 誠実たちはサウナに移動に会話を続ける。

 サウナの中には誠実達以外の人はおらず、サウナの中には誠実達しかいない。


「まぁ、あれだ。先輩ももう卒業なわけだし、少し頑張ってやろうじゃないか」


「馬鹿にされるのは確かに違うと思うが…」


「俺はちょっと厳しいな」


「まぁ、確かに健は運動苦手だもんな」


「体力も無いしな」


「うるせぇ、今まで真面目に運動なんてしてこなかったんだよ」


「アイドルグッズ買いに行くときは何時間並んでも元気なんだけどな」


「はぁ…はぁ…もう限界だ! 俺は先に出るぞ!」


 先に限界が来たのは健だった。

 顔を真っ赤にして慌ててサウナを出るとそのまま水風呂に直行していった。


「はぁ…やっぱり最初は健か」


「やつは俺たち三人の中では一番体力が無いからな」


「5分も入ってられないなんて雑魚だぜ」


「そういう武司もそろそろきついんじゃないか?」


「はぁ?お、おまえの方がきつそうだぞ誠実」


「おまえこそすごい汗だぜ武司」


 誠実と武司はお互いにライバル意識を持ちながら、どちらが長くサウナに入ってられるかを競い始めた。

 しかし、長く入っていたからと言って特に意味は無い。

 だが、この二人はお互いに「こいつにだけは負けたくない」と心の中で思っていた。

 サウナの窓から見える外の景色にはサウナから上がった健が心地良さそうにベンチでくつろいでいた。


「はぁ…さっきの…話に戻るけどよぉ……体育祭にはまだまだ秘密がありそうだし…田岡先輩のためにも……ちょっとマジになってみるのは良いかもしんねーな」


「そ、そうか…ならおまえも……明日からの練習……真面目にしろよ」


「わ、わかってるっての……真面目にしないと……田岡先輩が……うるさそうだからな」


 二人がサウナに入って既に15分が経過しようとしていた。

 既に誠実と武司の視界はゆがみ初めており、顔は茹で蛸のようになっていた。

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