280話
*
「なぁ、誠実」
「どうした武司?」
「なんで急にそんなやる気出してんだよ?」
「あぁ、実はこの体育祭負けられなくなっちまったんだ」
放課後のグラウンド、誠実達は学校指定のジャージを着てストレッチをしていた。
「はぁ? 急にどうした? 99回山瀬綺凛に告白して、彼女の為にまじで色々なことをして、結局諦めることにしたのは良いけど未練たらたらで現在同じ学校やバイト先の女の子などからモテ始めて困っている誠実君」
「なんでそんな説明口調なんだよ…」
「いや、一年ぶりの更新だから」
「は? 更新?」
「まぁ、ともかくだ、俺たちの今の状況は体育祭の軍別の集会で健が余計なことを言って、俺たち二人も巻き込まれ、応援団に入っちまってかなり面倒な事になってる。こんな感じだよな?」
「だからなんでそんな説明口調なんだよ。そんなの言われなくても分かってるって」
準備運動をする誠実に対して武司はそう説明をし、つまらなそうに欠伸を吐いて再び誠実に向かって話し始める。
「てか、お前は良いよなぁ~前橋さんと二人三脚なんて」
「色々気を使って大変なんだぞ? 気を抜くと俺の息子が自己主張を始めてだな…」
「あんなの脂肪の固まりだろ、それより俺だか帰って良い?」
話をする武司と誠実の横には明らかにダルそうにしながらグランドに座る健がいた。
「なんだよ応援練習って……応援って練習するものじゃないだろ…」
「仕方ないだろう健、お前があんな余計なことをいうから……」
「そうだぞ、誠実のいう通りだ。お前は少し反省しろ」
そんな話をしていると三人以外にも人が集まり始めた。
青いハチマキをしており、誠実達と同じ青軍の応援団であることが分かる。
「はぁ、放課後の貴重な時間をこんな事に……」
「それはこっちのセリフだ! お前があのゴリラに生意気なことを言わなければ……」
「そうだぞ健。お前があの脳筋馬鹿に何もいわなければ……」
「仕方ないだろ、あの熱血野球野郎がなんか怒り始めたんだ。単細胞だから沸点が低いんだろ?」
「ほぉ……お前ら三人は一体誰の話をしているんだ?」
「「「え?」」」
振り返ると三人の後ろには3年生の青軍応援団長である、田岡が仁王立ちしこめかみに血管を浮かべて立っていた。
「あ、野球部のスーパースター田岡先輩じゃないですか!」
「青軍の切り札田岡先輩! 今日はよろしくお願いします!」
「あ、熱血野球野郎先輩。俺帰って良いですか?」
「露骨な手のひら返しもムカつくけど、悪口を継続するのもムカつくなぁ…」
その後三人は仲良く平等に田岡に殴られた。
「先輩、暴力ですよ」
「ゴリ……先輩、パワハラは今の時代やばいっす」
「今のでやる気無くなったんで、帰って良いですか?」
「お前ら少しは先輩を敬えよ。なんでそんな先輩に口答えして自分から沼にハマりに行くんだよ。てかお前ら、少しは真面目に参加しろ! お前らはもう応援団なんだ、これから放課後は軍の為に協力して貰うからな」
田岡は三人にそう言うとそのまま他の青軍応援団を集めて練習について説明を始めた。
「はぁ……正直こんなことしてる暇無いんだけどなぁ……」
「まぁ、お前は今大変だよな。栞先輩に前橋に…それに美沙。モテるねぇ…」
「もういっそ誰かと付き合ってしまえば良い」
誠実達は後ろの方で田岡の話を聞きながら話をしていた。
話題は誠実最近の恋愛事情についてだ。
「誠実、お前さぁもう誰かと付き合えよ。そうすれば山瀬さんのことも忘れられるかもしれねぇ」
「でも、俺はこんな気持ちで誰かとなんて……」
「所詮学生の恋愛はお遊びのようなものだ。大人になったらもっとドロドロする」
「え? そうなの? なんで健がそんなこと知ってんだよ」
「前にテレビでやってた」
「テレビかよ」
「いやぁでも最近のテレビは凄いぞ、深夜のアニメなんてやってる様子を匂わせるような描写ばかりだし、関係性もどろどろでかなりリアリティがある物が多いらしい」
「でも、アニメとリアルは違うだろ?」
「はぁ、帰って寝たい」
「そう言えば健はアイドルオタク卒業したんだったな、趣味が急に無くなるってどんな感じなんだ?」
「毎日暇過ぎる。だからお前ら、終わったらゲーセンに付き合え」
「てか、この練習何時まで?」
「知らん。早くあのゴリラの話しが終わらんかなぁ」
「誰がゴリラだって伊敷?」
「はぁ? 何言ってんですか、田岡先輩のことですよ」
「ほぉ……良い度胸だな」
「え?」
誠実は声のした方を振り向きそこにいた田岡先輩を見て一瞬フリーズした。
「お前、随分後ろでうるさくしてたなぁ……」
「い、いや違っ! うるさかったのは健や武司も一緒で……」
「大事な応援練習でふざけるわけないだろ誠実!」
「田岡先輩の話をしっかり聞かないからだぞ誠実」
「裏切りものぉぉぉぉぉぉお!!」
「伊敷ぃ…ちょぉ~っとこっちにこい……先輩の威厳を見せてやる」
田岡はそう言いながら誠実の体操着の襟を持ち、誠実を引きづって歩いて行く。
「せ、先輩まって! 謝りますから! 真面目にしますから! 離してぇぇぇぇ」
「問答無用! お前の根性叩きなおしてやる!!」
「ま、間に合ってます!」
「頑張れよぉ~誠実」
「ドンマイ」
「お前ら絶対いつか死なす!!」
そう言いながら誠実は田岡と共に体育館の裏に消えて行った。
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