体育祭と動き出す恋

277話


 なんやかんやでテストが終わった。


「はぁ~あ……」


「どうした誠実?」


「いや、点数下がったなぁって……」


「元々お前は頭悪いからな」


「山瀬さんの為に頑張ってただけだしな」


「はぁ……最近色々あったしなぁ……」


 誠実は夏休み明けから様々なトラブルに巻き込まれていた。

 写真部の廃部問題や生徒会での仕事の手伝い。

 そして、先日は会長と副会長の告白問題とあわただしい日々が続いていた。


「そう言えば会長と副会長は結局どうなったんだ?」


「あぁ、あの後結局会長は告白出来なくてさ」


「じゃぁまだ告白出来てないのか」


「さっさと告ってしまえば良いものを」


「そんな簡単な事じゃねぇんだよ、告白ってのは」


「簡単にしてた奴がなんか言ってる」


「まぁ、こいつ馬鹿だし」


「なんだとぉ!!」


 いつも通りの日常を過ごす誠実たち三人。

 しかし、この学校はイベントごとが多いことで有名であり、テストが終わってすぐに体育祭りがやってくる。

 そのため、テストの返却が終わった後は体育祭の話し合いや練習が始まるのだ。


「俺ったちのクラスは……青軍(せいぐん)か……」


「テストが終わったばかりだというのに……はぁ、面倒だなぁ」


 誠実たちはテスト返却があった日の午後、軍事に別れての集会に参加していた。

 クラスごとに軍は別れるので同じクラスの生徒は自然に同じ軍になる。


「そう言うなよ健。この学校の体育祭は種目ごとに景品が用意されていて、その商品がかなり豪華らしいぞ!」


「マジか!! そう言えば生徒会の予算でも体育祭にはかなりの金額が割り振られてたな」


「あぁ、しかも全校生徒が楽しめるようにって、運動が苦手な学生も楽しめるような競技がもりだくさんらしいぞ」


「へぇ~意外とそういうの考えてるのな」


「そこ! 静かにしろ!」


 誠実たちが話をしていると前で話をする三年生の先輩に注意された。


「あ、すんません」


「誰だあのザ・体育会系は?」


「えっと確か野球部の……田岡先輩じゃないか?」


「だからうるさいっての! 先輩の注意を無視か!」


「いや、別にそう言うわけじゃ……」


 集会で体育祭の説明をしている最中に自分の話も聞かずに友人と話をしている奴が居れば怒るのは当然だ。


「お前ら知ってるぞ! 一年の馬鹿三人組だな!」


「おい、言われてるぞ武司」


「お前のことだぞ健」


「呼ばれたぞ誠実」


「いや、お前ら全員だっつの……」


 田岡先輩の言葉で青軍の生徒は一斉に誠実たちの方に視線を向けてひそひそ話を始める。


「あれが一年の有名な三人か」


「始めてちゃんと見たな」


「たしか、ストーカーの伊敷、アイドルオタイケメンの古沢、情報屋の竹田だっけ?」


「あいつら色々やらかしてるんだろ? 確か全員ホモで三角関係だとか?」


「え? 俺は竹田が女子の全員のスリーサイズを知ってるってきいたぜ?」


「マジかよ! 今度聞きにいくか!」


 こそこそ話をされていたが、以外にもその声は大きく誠実達にも会話の内容は聞こえていた。


「ストーカーって……マジかよ」


「まぁ、当然だな」


「おい武司、女子のスリーサイズを把握するのは流石に……」


「んなこと俺だって無理だよ! てか俺達全員ホモだと思われてんだぞ!!」


「まさかここまで有名になってたとはな」


「ホモは健と武司だけなのにな」


「いつから俺がホモになったんだよ! 俺は可愛い女子にしか興味がない!」


「俺は女子に興味がない」


「あ、馬鹿!!」


 健がそう言った瞬間、一部の女子達が目を輝かせながら誠実達を見ていた。


「お前らも俺の青軍に入ったんだ、勝つために協力して貰うぞ!」


「わかりましたっす」


「お騒がせしました~」


「安心しろ、当日は仮病で休む」


「「おい! 馬鹿健!!」」


 誠実と武司は適当に謝ってこの場をやり過ごそうと思っていた。

 しかし、健は馬鹿正直に当日の自分の考えをいってしまった。

 こんな発言をされては田岡は舐められていると感じてもおかしくはない。


「お前ふざけてるのか?」


「いえ、全く。ただやる気が無いだけです」


「ほほぉ……良い度胸だな古沢」


「どうもっす」


「いや、褒めてない! 褒めてない!!」


「馬鹿! 取り合えず謝っておけ!!」


 健の所に鬼のような形相でやって来る田岡。

 そんな田岡に一切動じず健は涼し気な顔で話を聞いて居た。


「ならやる気が出るようにしてやろう、お前を応援団員に任命する」


「え? 嫌ですけど」


「上級生の命令だ!」


「先生、これってパワハラじゃないんですか? 今の時代問題ですよぉー」


「お前!! どこまで俺を馬鹿にする気だ!!」


「健! 頼むからもうお前は何も喋るな!」


「すいません田岡先輩! こいつ馬鹿なもんで!」


 慌てて間に入る誠実と武司。

 しかし、頭に血が上った田岡を止められるはずもなく。


「そんなに元気ならお前ら三人で応援団員になれ! これは軍団長の命令だ!」


「いや、だからパワハむぐ……」


「は、はい喜んで!」


「いやぁ~すいませんっしたっす」


 何かを言おうとした健の口を無理やり抑え、誠実と武司がそう言う。

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