274話
*
「なるほど、そんなことがあったのか」
「あぁ、それで会長の告白をいったんやめるように言ったんだが」
「だが?」
放課後、誠実は武司と健を家に呼び話しをしていた。
話の内容はもちろん生徒会のさいに栞から教えられた田宮先輩の告白の件だ。
「会長全然聞いてくれなくてさ」
「まぁ、だろうな」
「お前とあの会長は悪いところが似てるからな」
「それは俺も思ったよ、逆の立場だったら多分俺も聞かねーもん」
「ほっとけよ、別にお前がこれ以上何か会長にしてやる必要ないだろ?」
「そうだけど……でも相談された身としては出来れば二人には上手くいって欲しいからさ」
お菓子を食べながら三人はそんな話をしていた。
名目上はテスト勉強ということなので、誠実の母親がお菓子の差し入れをしてくれたのだ。
しかし、三人が囲むテーブルには真っ白なノートと蓋の開いていない筆箱がおかれているだけで、全く勉強などしていない。
「別に俺らがどうこうしても成功するとは限らないだろ? てかあの田宮って先輩Sだったのかよ」
「なんか踏んでみたいらしい」
「何をだよ」
「リアルな女子なんて薄気味悪いだけだ、やはり女子は画面越しに見るの限る」
「元アイドルオタクが何を言ってんだか」
「てか、お前もうアイドルオタクじゃねぇーからただのイケメンだな」
「それはそれでムカつく」
「うるさいぞお前ら、アイドルと言っても最近は二次元アイドルという存在が居てだな」
「あ、お前今度はアニオタになるの?」
「なんてこった、俺とキャラが被るじゃないか!」
「安心しろ武司、お前はイケメンじゃないから被らん」
「そう言うことだ」
「てめぇら今からコンクリ詰めにして山においてきてやろうか? あぁ?」
「出来ないことを言うな」
「だったら健、お前の顔面を不細工にしてやろうか!!」
「やめとけ武司、お前じゃ返り討ちにあって終わりだ」
この三人が揃って勉強など出来るはずもない。
するのは喧嘩と馬鹿なことだけ。
そしてこの三人が揃うと騒がしいのも事実であり、この家に住んでいるのは誠実だけではない。
「ちょっと、うるさいんだけど。受験ひかえた妹の部屋の隣で何バカ騒ぎしてるのよ!」
「あ、悪い美奈穂」
「お、久しぶり美奈穂ちゃん」
「大きくなったな、飴でも食べるか?」
「武田先輩も古沢先輩もそのおじさん見たいな反応止めてくれませんか? 私もう子供じゃないんですけど」
「いやぁ~俺達妹居ないからなんかな」
「昔は四人で良く遊んだのにな、美奈穂ちゃんももう受験か」
「干渉に浸らないでくださいよ。てか、さっきからうるさいんですけど、ただでさえ私の部屋は今エアコン壊れてるんですから、あんまり私をイライラさせないで下さい!」
そう言って美奈穂は誠実の部屋を後にした。
「怒られちまったな……でも相変らず可愛いな」
「あぁ、こいつの妹とはやはり思えん」
「実際血は繋がってねーからな。てかおまえら、まさかと思うが人の妹を性的な目で見てないだろうな?」
先ほどの美奈穂の恰好は正直男子高校生にはぐっとくるものがあった。
ノースリーブのシャツに太ももが大きく出ているショートパンツ。
まぁ、美奈穂もこの二人が居ることを知っていたのでそんなラフな恰好で来たのだろうが、一般的な男子生徒からしたらかなり興奮するシチュエーションだ。
「見る訳ねぇだろ」
「むしろそう言う目で見ている男の目を潰したくなるレベルだ」
「俺らも美奈穂ちゃんは妹みたいに思ってるからな」
「なら良いけどよ、最近あいつおかしいんだよ」
「おかしい?」
「あぁ、最近この部屋で美奈穂と一緒に寝てるんだが……」
「健、ロープあるか? あったら誠実を縛ってくれ」
「おう、任せろ」
「ちょっと待て馬鹿! なんで急に俺を抑え込んでんだよ!」
「うるせぇ! 何を血のつながらない妹とエロい展開を向かえてんだよ!」
「俺達言ったよな? 美奈穂ちゃんとをエロい目で見る男の目を潰すって……」
「兄貴はカウントしないでもらえません!? それに別にエロい目でなんて見て……」
そう言いながら誠実は最近の朝の出来ごとを考える。
薄着で眠る美奈穂、美奈穂の寝顔、美奈穂の吐息。
「…見てない……よ?」
「はい死刑!」
「血が飛び散っても良いようにビニールシートを敷かないとな」
「待って! 違うの! 誤解なの!!」
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