269話

 こうして誠実達は会長の告白を成功させるためには話し合いを始めた。

 しかし、誠実からしたら告白して成功するのは目に見えており、誠実だけはどう告白すれば怜子先輩が喜んでくれるかを考えていた。


「てか、会長ぐらいのスペックだったら告白失敗しないだろ?」


「いや、その田宮怜子って先輩も同学年男子からは結構人気だぞ? 踏まれたい、罵倒されたい、椅子になりたい等の評価だな」


「それは評価じゃなくて性癖の暴露だ」


 怜子の容姿は栞に負けず劣らずの美人だ。

 栞とは系統の違う美人であり、少し変わった男子から人気がある。


「怜子はいつも難しい顔で厳しいこと言ってるけど、本当は良い奴なんだよ」


「あ、会長がドMとかじゃないんですか?」


「僕はノーマルだよ」


「いや、分からんぞ。一緒に居るうちに目覚めたのかも」


「あり得るな、いつも生徒会室で殴られ蹴られだから」


「だから違うよ! 仮にも僕君たちの先輩なんだけど!?」


 しかし、毎日のように暴力を振るわれている会長を見ている誠実はもしかしたらと少し感じていた。


「まぁでも確かにあいつはモテるからなぁ……」


「でしょうね」


「だから早く告白しようって思ったんだよ! もう少し生徒会も終わるし、後は二人で同じ大学を目指すだけ! 一緒に放課後勉強したり、一緒にセンター試験受けに行きたいんだよ!」


「それは告白しなくても行ける気が……」


「アホらしい……そんなの普通の告白してダメならダメ、OKならOKで喜ぶだけでしょ? そんな深く考えずに告白すれば良いでしょ?」


「で、でもそれじゃぁ告白をOKして貰えるか……」


「会長さん、告白の時に何かしたからって成功率は上がらないんですよ。人の気持ちは一瞬では変わらない、それを照明してるのがこいつでしょ? 試行錯誤して99回も告白したのに全然だめ、最終的にストーカーですよ?」


「あれ? 健がめちゃくちゃまともな事を言ってるのに涙が出てきた、泣いていい?」


「良いぞ誠実、お前はあっちで泣いてろ」


 健の正論は誠実の心に深い爪痕を残した。


「言われて見ればそうだね……イケメンに言われると説得力があるな」


「まぁ顔だけは良いんで」


「おいそこ、どや顔すんな」


「そこで泣いている奴とは顔面とか色々違うんで」


「おいコラ健! 喧嘩売ってるのか? 買うぞ! 言い値で勝ってやるから来い! この消しゴムでお前を消してやる!!」


「あぁー誠実が壊れた。お前のせいだぞ健、どうにかしろ」


「面倒だな」


「君たちは毎回こんな感じなのか……」


 誠実達の様子を見ながら徹は若干引いていた。

 

「でも、確かに君の言う通りかもしれないよ……今更悪あがきなんてしても怜子の俺に対する気持ちは変わらないよね」


「そうですよ、会長はそこの馬鹿と違ってまだ全然望みがあるんですから」


「そ、そうだね! 僕は少し考えすぎていたのかもしれないよ、なんだミラーボールって? 馬鹿じゃないの!」


「そう言うことです。明日は普通に田宮先輩呼び出して頑張って下さい」


「あぁ、君たちありがとう! それと……さっきから伊敷君が凄い殺気を放ってるけど大丈夫なのかい?」


「あぁ、問題ありません、いつものことです」


「いつもの!?」




「あの、田宮先輩。急にどうしたんですか? 私に相談なんて珍しい……」


「蓬清さんごめんなさいね、放課後の貴重な時間を取らせてしまって……」


「いえいえ、私は後は帰宅するだけですので、それでどうしたんですか?」


 誠実達が会長の悩みを聞いている頃、栞は怜子に相談があると言われてファミレスに来ていた。

 いつもきりっとしている怜子がなんだか落ち着かない様子で後輩である栞に相談をしてくるのは始めてだった。

 お世話になっている先輩の力になりたいと思った栞は快く相談に乗ることにし、怜子の力になれればと考えていた。


「実は今日とある男子に告白されて……」


「え!? ほ、本当ですか! 相手は?」


 まさか会長?

 そう思った栞だったが今日の会長の様子を見るからにそれはありえない。

 じゃあ一体誰が?

 そう栞が考えていると怜子はゆっくり話始めた。


「同じクラスの男子なんだけど……今日付き合って欲しいって言われて」


「そ、そうなんですか。田宮先輩はどう思ってるんですか?」


「分からないわ……私、今まで勉強ばっかりで全然恋とかしてこなかったから……」


「あぁ、なるほど……」


(確かに田宮先輩はそう言うのは興味無い人ですもんね、途惑ってしまうのも問題ないと思います。でも会長のこともありますし、ここはやんわり断るように誘導した方が良いのかしら? でも一番大切なのは本人の気持ちだし……でも確か田宮先輩は会長が好きなはず……)


「あ、あの田宮先輩、一つ良いですか?」


「えぇ、何かしら?」


「あの、先輩は会長のことはどう思っているのですか?」


「え? 会長ですか? 馬鹿だと思ってます。あの人に学力で負けていることが最近苦痛に感じます」


「あぁ……あの好きとかそういう感情は?」


「私が会長を? そんなのある訳ありません。だって会長ですよ?」


(ん? んん? あれ? でもたまに怜子先輩って会長を見て赤くなったり、会長が他の子と仲良くしてるとイライラしてたりしたような? 一体どういうこと?)


「話を戻しますけど、私こんな気持ち始めてで……どうしたら良いか分からないんです」


(すみません先輩。私もわかりませんわ……)


「え、えっと……どういう気持ちなんですか?」


(もしかしたら告白されて田宮先輩が舞い上がってるだけかもしれません!)


「そうですね……彼が私に踏んでください女王様と言った時に……」


「すみません、私には対処できない案件かもしれません……」


(田宮先輩、一体何がありましたの?)







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