267話
*
放課後の生徒会での活動が増えた誠実は忙しい放課後を過ごしていた。
「誠実君、先生にこの書類を持って行ってくださいますか?」
「わかりました!」
「おい伊敷、サッカー部と野球がグランドで揉めてるらしい、一緒に来い」
「はい!」
「伊敷君、この書類ですがコピーをお願いします。全校生徒分プラス予備を20部程」
「了解です!」
「伊敷君、会長と今日生徒会をサボらないかい?」
「か、会長?」
「ダメにきまってるでしょ」
「あぎゃっ!!」
こんな感じで誠実は毎日忙しい放課後を過ごしていた。
しかし、誠実は以前から告白の為の自分磨きをしていたため、いろいろなことが出来たので生徒会ではかなり重宝された。
最初は一年生という新しい風を入れ、新しい生徒会作りの参考にしようと考えていた会長も気が付けば誠実を頼るようになっていた。
「ふぅー今日はこれで終わりですかね?」
「はい、そうです。ご苦労様です」
「うぅ~僕はまだ終わらないよぉ……」
「会長は口より手を動かして下さい」
いつもの生徒会。
会長の徹が会計の怜子に叱られ、それを他の生徒会メンバーである誠実と栞、そして侑大が眺めている。
「伊敷、お前このまま生徒会に入らねぇか? お前なら生徒会で十分やっていけるし、それに進学する時も有利だぞ?」
「いや、でも俺はそんなタイプじゃないですし……それに基本馬鹿なんで」
「それは知ってる」
「そこは知ってても言わないで下さいよ……」
ハッキリと侑大に馬鹿を認められ誠実はうなだれる。
生徒会のメンバーは基本的に全員成績優秀だ。
いつもスマホを弄っている侑大だが毎回テストでは学年順位十位以内に必ず入る。
怜子と栞は毎回三位以内をキープしており、会長に至ってはなんと毎回一位
「お前が馬鹿なのは書類見ればわかるよ、誤字がたまにあるし、それに学校で見かけると大抵馬鹿そうなことしてるからな」
「な、なんですかその言い方! 俺は別に馬鹿そうなことなんて……」
「じゃぁこの前なんでグランドの真ん中で拘束されて男子共に囲まれてたんだよ」
「あれは拷問されてたんですよ! 仕方ないでしょ!」
「仕方ない拷問ってなんだよ……」
生徒会の面々とも随分仲が良くなった誠実。
しかし、この生徒会での日々も明日で終わる。
もともと誠実は臨時で書記になった仮のメンバー。
体育祭と文化祭が終われば新しい生徒会を決める選挙も始まる。
「ぶっちゃけ会長はこのまま行けば多分蓬清だ。生徒会のメンバーは副会長以外は会長と副会長が指名できる。蓬清ならお前をそのまま書記に指名するだろうし、お前は意外と使えるからな」
「使えるって……悪いんですけど、俺は生徒会なんて興味ありませんよ、今は色々やりたいこともありますから」
「じゃぁ生徒会には入らねぇのか?」
「そのつもりです。それに俺より優秀な奴だってこの学校にはたくさん居ますよ」
「そうか、内申点も上がるから結構生徒会に入るのはオススメなんだがな、お茶にお茶菓子も食えるし」
「貴方は食べてばかりいないで仕事をなさい」
「はいっす」
怜子に少しきつく言われ侑大は仕事に戻る。
誠実はこの時生徒会のメンバーになりたいなんてことは微塵も思っては居なかった。
それを聞いた栞も侑大に向かっていう。
「私も生徒会は今期限りで辞める予定なのですが?」
「それは知ってるけどよぉ、どうするだよ新しい生徒会長は?」
「今川君がすれば良いのではないですか?」
「それこそ無理無理、俺は会長なんて柄じゃないし、今の会長に生徒会に入れって指名されるまで興味すら無かったんだ」
「なんだなんだ、侑大も栞ちゃんもどっちも生徒会長を引き継いでくれないのか……なんか会長ショック」
「気持ち悪いので乙女みたいなリアクションはやめて下さい会長」
「気持ち悪いってなんだよ! 結構可愛いだろ?」
(いや、男のぶりっこはきついって……)
なんてことを誠実は思っていたが口には出せなかった。
「キツイので止めて下さい。吐き気がします」
「そこまで!?」
会長と副会長の夫婦漫才のようなやり取りにも誠実は馴れて来ていた。
二人は両想いだけど、どちらもそれを知らず、自分が一方的に片思いをしていると思い込んでいるらしい。
誠実はそんな二人を見ながら、好きな人と両想いになれたらどれだけ幸せなのかを考えることが多くなっていた。
「誠実君?」
「え? あ、すいません。ぼーっとしてて」
「どうかしましたか?」
「いえ、二人仲良いなって……」
「まぁ、お二人は好き同士ですから」
「もうすぐこの生徒会も終わりですけど、どっちか告ったりしないんですかね?」
何度も告白をして玉砕をしてきた誠実にとって、断られない告白というものは凄く羨ましいものだった。
しかし、当人たちはそれを知らない。
他の生徒会のメンバーも当人同士のことだからと二人の気持ちについては何も言わない。
だが、誠実は違った。
好き同士なら是非一緒になってほしい。
そんな事を勝手に考えていた。
しかし、それは誠実が勝手に思い描いている理想であって、二人には二人のペースがあることを頭で理解しており、誠実も何も言わなかった。
なのだが、その日の放課後誠実は会長に残るように言われ会長に相談を持ちかけられた。
「あの、なんですか? 話って……」
「あぁ、いや相談なんだが……君は何度も同じ女子生徒に告白したと聞く」
「まぁ……全部玉砕でしたけど」
「そこで……あの……どうやって告白したら良いか……アドバイスを貰いたいのだが……」
「え?」
誠実は内心でついにかと思っていた。
ようやく会長の方から怜子に思いを伝える決心がついたのだと思うと誠実はなんだから嬉しくなった。
その理由はお互いが好き同士なのを知ってるからかもしれないが、誠実は新たなカップルの誕生を純粋に喜んでいた。
「じ、実は相手はその……れ、怜子なんだ……」
「あ、知ってます」
「そうだよな、驚くよな? でも実は中学からずっと……ってえ? 知ってたの?」
「まぁ、何となくですけど」
嘘である。
誠実も栞に聞くまでまったく知らなかったのである。
「告白のことなら俺に任せて下さいよ! 同じ女子に99回も告白した告白のプロフェッショナルっすよ!」
「全部断られてるけどね!」
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