260話

「し、失礼します……」


「「「「………え?」」」」


 入って来たのは誠実だったのだが、何故か既に瀕死だった。

 生徒会メンバーは誠実を見てなんと言って良いか話からず、全員黙ってしまった。

 

(瀕死だ)


(瀕死ですね)


(いや、なんで瀕死だんよ)


(あらあら)


 それぞれがそんな事を考えていると、生徒会長である徹が咳ばらいをし、話始めた。


「え、えっと君が伊敷君? か、歓迎するよ……」


「あぁ、えっと……生徒会長さんでしたっけ…ぶはっ!!」


「お、おい! 大丈夫か!! てか、何があった! なんで新しい戦力が来るはずなのに、何でその戦力が瀕死しなんだよ!」


「あらあら、誠実君また何かやったんですか?」


「ま、まぁ……色々ありまして……」


 誠実の元に栞が近づき、そっと手を差し伸べ、ソファーに誠実を座らせる。


「だ、大丈夫です、数分すれば体力も戻ります……」


「いや、それ本当!? なんか今すぐ保健室に行かないといけないレベルになってない? てか、さっき吐血しなかった!?」


「蓬清、大丈夫なのか? お前の連れてきた助っ人、すでに虫の息じゃねーか」


「はい、誠実君はいつもこんな感じです」


「どんな学園生活送ってんだよ……」


「まぁ、なんにせよ、来たからには働いてもらいます」


「れ、怜子ちゃんはいつも通りなのね……」


「はい、わかりました!」


「あれ? いつの間にか元気になってる!?」


「それで自分は何をすれば良いのですか?」


「さっきまで瀕死の重症みたいな感じだったのに……」


 ハキハキ話す誠実を見ながら徹は本当に大丈夫かと心配になった。

 それと同時に今年の一年生はどんな学園生活を送っているのかも心配になった。

 徹がそんな心配をしていると、怜子が誠実に何をするかを説明し始めた。


「まぁ、貴方は一年生ですし、言ってしまえば臨時の役員です。そこまで難しいことはお願いしないので、安心しなさい」


「はい、やっぱり雑用とかですかね?」


「まぁ、そうですね、言い方は悪いですが生徒に配布する書類の打ち込みか、それか私たち役員の補助についてもらおうと考えています」


「なるほど……」


「貴方、パソコンは出来る?」


「はい、大丈夫です!」


「そう、それじゃあ今日はとりあえず、この手書きで書いてる下書きをパソコンで作ってもらえる?」


「わかりました」


 誠実に怜子が資料を渡すと、徹が怜子に声を掛ける。


「ちょいちょい、怜子ちゃん」


「なんですか? 会長」


「まだ、俺らの自己紹介もしてないのに、いきなり仕事の話はダメだろ?」


「ん……それもそうですね、名前がわからないというのは不便でしょう」


「そう言う事ではないんだが……まぁ良いか。伊敷君、僕はこの学校の生徒会長の松山徹だ、気軽に松ちゃんって呼んでくれ」


「会長、そんな某筋トレマニアの大御所お笑い芸人みたいな呼び方で呼べるわけ無いでしょ……一年、俺は庶務の今川侑大、二年だ。呼び方は好きにしろ」


「はい、よろしくお願いします!」


 徹と侑大の自己紹介を聞き、誠実は頭を下げて挨拶をする。

 徹も侑大も優しそうで良かったと誠実は安心する。

 

「それで、この眼鏡でさっきから仕事の事しか口にしない子は宮田玲子ちゃん、気軽にめがねちゃんって呼んであげて」


「会長、殺しますよ?」


「ひぃっ!」


 徹の紹介に怜子は冷たい視線で徹を睨む。

 その瞬間、誠実はこの生徒会室の力関係を何となく察した。


「改めよろしくお願いします、会計の宮田怜子です」


「は、はい…よろしくお願いします」


「栞ちゃんの事は知ってるんだろ?」


「えぇまぁ……まさかこんな事になるなんて思ってなかったですけど……」


「あはは、そうかそうか。ところで栞ちゃんとはどんな関係なの? 栞ちゃんがまさか男子を連れてくるとは思わなくてさ~、少し気になってたんだよねぇ~」


「え、あ……そ、それは……」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る