259話

 そして、放課後……。

 誠実は生徒会室に向かっていた。


「はぁ……めんどくせぇなぁ……」


 今日から生徒会の手伝いをすることになっている誠実。

 まずは現生徒会の面々との顔合わせに向かっていた。

 生徒会役員とは一切交流のなかった誠実は、結構緊張していた。

 知っている人は栞しかおらず、他は全員初対面だ。

 生徒会室の扉の前に到着した誠実は深呼吸をしてドアに手を掛ける。

 しかし……。


「「「「誠実!!」」」」


「え?」


 突然大勢の生徒が誠実の前に現れた。

 誠実は驚き、ドアに背を向ける。


「な、なんだお前ら!」


「貴様ぁ……古沢と武田から聞いたぞ! 蓬清先輩から告白されたらしいな!!」


「前橋に続いてなんでお前ばっかり!!」


「ぶっころしてやるぅぅぅぅ!!!」


「あ、あいつらぁ……さらば!!」


「あ、逃げたぞ!!」


「追え! 逃がすな!!」


「モテない男の敵を血祭にあげるんじゃぁぁぁぁい!!」


「くそっ! 今日はなんでこんなにみんな殺気立ってんだよ!!」


 どうやら、誠実が栞に告白されたことが、誠実の教室で広まったらしい。

 その噂が広がり、二年生や三年生まで混ざって、誠実を血祭にしようと集まってきたのだ。

 

「お、お前ら落ち着け!!」


「落ち着いてられるかこの野郎!!」


「俺たちの副会長をよくもぉぉぉぉ!!」


「お嬢様にまとわりつく害虫めっ! ここで駆除してくれるわ!!」


「何しれっと混ざってんだよ! そこの執事!!」


「やかましい!! お嬢様を惑わす害虫が! 駆除してくれる!!」


 男子生徒の中に混ざって、栞の家の執事である義雄も誠実を血祭に上げようとしていた。

 誠実はそんな男子生徒と義雄から逃げ、生徒会室から離れて行った。


「俺、これから用事あるんだけどぉぉぉぉぉぉ!!」


「「「「「待てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」」


 誠実を追ってきた男子生徒達も誠実を追って、生徒会室を後にする。

 そんな騒ぎに気が付き、生徒会室に居た玲子はドアを開けて様子を見る。


「何かしら?」


「玲子ちゃん、どう? なんか急に静かになったけど……」


「さぁ、誰もいませんが」


「そっか、ならいっか! それにしても伊敷君だっけ? まだかな?」


 生徒会室では会長の徹を初めとした、生徒会役員が誠実が来るのを待っていた。

 

「全く、時間も守れない奴がいても邪魔なだけじゃないか?」


「侑大君も昔は良く遅刻をしていましたよね? その度、会長と一緒に私がお説教をしていたはずですが?」


「まぁ、何か用事があったんだろうな、仕方ない奴だぜ」


「手の平返しがすごいな……」


「一回転しそうな勢いですね」


「それにして、誠実君遅いですね……探してきた方がいいでしょうか?」


「いや、もう少しまってみよう、もしかしたら侑大の言う通り何か用事で遅れているのかもしれない」


「そうでしょうか?」


 栞は誠実の事を心配していた。

 誠実が約束を破るとは考えられない栞は、何かまたトラブルにでも巻き込まれているのではないかと、誠実を心配していた。

 

「まぁ、ここは年上の余裕を見せるために、落ち着いて待とう。これが生徒会なのだとわからせる必要もあるしな!」


「なるほど、確かに俺らがソワソワしてたらかっこ悪いっすもんね!」


「だろ? こう、なんていうの! 会長カッケー!! ……とか思われたいじゃん!」


「要するにカッコつけたいと?」


「いや、そ……そういわれると恥ずかしいけど………ま、まぁそんな感じだな!」


「じゃあ、俺も今日は真面目に仕事する先輩キャラでいこうかな」


「二人とも、そんな馬鹿なことを考えてないで仕事をしなさい」


「「はい……」」


 そんな話をする徹と侑大に玲子は冷静にそう言う。

 そんな様子を見て、栞はくすくすと笑っていた。

 すると、ついに生徒会室のドアが二回ノックされた。


「あ、来たみたいですよ」


 栞が他の生徒会役員にそう言うと、みんなが生徒会室のドアに注目する。

 そして、生徒会室のドアが開いた。

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